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レーダー・エコーの見方 [試験対策]

レーダーエコーは降水強度分布の観測値を画像化したものです。

日常生活では「西の方に強いエコーがあるから、あとしばらくしたらうちのエリアでも雨が降りそうだな」というレベルでも役に立ちますが、気象解析をする上では不十分です。

レーダーエコーを単体で見るのではなく、ほかの天気図と突き合わせて総合的に解釈することで、気象解析の実力を向上させることができます。

今回のポイント

レーダーエコーの読み方のポイントは次の通りです。

①エコーの全体像を把握する
②降水強度の強い場所を確認する
③エコーの形状を確認する
④エコーの時間変化を確認する
⑤衛星画像と見比べる
⑥エコー発生の原因を推測する


事前準備

レーダーエコーと合わせて、その他にも必要となる実況資料を用意します。

・アジア太平洋地上天気図(ASAS)
・衛星画像(IR, VIS) ※IR(InfraRed:赤外)、VIS(Visible:可視)
・極東500hPa・700hPa天気図(AXFE578)
・850hPa相当温位図(FXJP854)

これらを突合して、総合的に降水の原因を総合的に推測します。

①レーダーエコーの見方

エコーの全体像を把握する


いきなり気になる場所から見るのではなく、最初にエコーの全体を見ることから始めます(日常生活の使い方とはスタートから異なりますね!)。

広い範囲から始めて徐々に絞り込んでいくという手順は、天気図を見るときだけでなく、レーダーエコーでも同様です。

エコーがベッタリと広い範囲に出ているのか、狭い範囲で出ているのか、これだけでもエコーの発生原因を推測する重要なヒントになります。

また、全体に一様な層状性(青色の)エコーなのか、強弱(青、黄、赤が入り混ざった)エコーなのかも確認します。

合わせて、エコーと気圧系(低気圧、前線など)との相対的な位置関係も考えます。

「相対的な位置関係」とは、「低気圧の中心の北側」とか「停滞前線の北側」のようなことです。このためには地上天気図が必要となります。

②降水強度の強い場所を確認する


次に降水強度の強い部分に着目します。

レーダーエコーには降水強度に応じて寒色系(青っぽい色)から暖色系(赤っぽい色)まで色付けされています。降水強度が強いのは暖色系の部分です。

エコーがかかっている部分に、降水強度を強める地形性の特徴がないかに注目します。

山岳地帯では大気が強制上昇することで降水が強化されます。典型例として九州山地の東側、四国山地の南側、紀伊半島の南東側があります。

参考に日本の主な山地を図に示しておきます。

mountains.png

③エコーの形状を確認する


エコーの形状(線状、コンマ状、団塊状など)と走向を確認します。

エコーの形状は、降水の発生原因に結びつく重要な手がかりです。

例えば、線状であれば積乱雲が次々に発生していることを示唆します。コンマ状であれば、その中心に低気圧の中心が存在する可能性があります。

特徴的なものは、後で衛星画像で確認をします。

④エコーの時間変化を確認する


レーダーエコーの動画を使って、エコーが動かずに停滞しているのか、あるいは動いている場合はどの方向に動いているのか。形状や範囲の変化はあるのかを確認します。

気象庁ホームページでは、3時間前から5分おきの画像をコマ送りで見ることができます。

⑤衛星画像と見比べる


降水がある場所の上空には必ず雲があります。エコーを雲画像と対照させることで、雲の種別を確認することができます。

⑥エコー発生の原因を推測する


レーダーエコー単独で原因を判断せずに、高層天気図で鉛直流、渦度、風の場、気温の場との関係から、エコーが発生した原因を推測します。

例えば、地上低気圧の中心の北側と温暖前線の北側にベッタリとエコーが出ている場合、700hPaで上昇流があり、500hPaで渦度が確認でき、暖気移流・寒気移流があれば、これは間違いなく温帯低気圧に伴う降雨だと判断できます。

【事例】下層の暖湿気によるエコー

2018年6月29日、九州、四国地方で非常に激しい雨が降りました。

11時のレーダーエコーがこちらです。

全国エコー1100.png

これより2時間前、9時の速報天気図はこちらです。

スクリーンショット 2018-06-29 13.59.29.png

梅雨前線が北日本から日本海を通り、華中にのびています。

太平洋高気圧が西へ勢力を強め、前線との間で気圧傾度力が強まっています。

沖縄の南には台風が発生し西へ進んでいます。

この日、関東甲信地方では梅雨明けが発表されました。

①全体の分布状況は?


エコーは沖縄地方および西日本から日本海中部に広がっています。また北海道の太平洋側東部と日本海側にもエコーが見られます。

地上天気図と見比べると、エコーは北海道を除いてはおおむね梅雨前線の南側に見られます。

②降水強度の強い場所


その中でも暖色系で示された降水強度が強いのは、福岡、四国および中国地方です。

九州地方北部:
九州北部地方エコー.png

四国地方:
四国地方エコー.png

高知県の降水強度の強いエコーは、四国山地で強化されていると考えられます。

一方で、北海道では降水強度の弱いエコーが見られます。

③エコーの形状


福岡、四国および中国地方の降水強度の強い部分を見ると、4〜5本の並行な線状エコーを確認することができます。

その走向は南南西から北北東に向かっています。

④エコーの時間変化


3時間にわたる推移を見ると、エコーは全体としては北東に進んでいるものの、四国では非常に激しい雨が降り続いています。

12時:
全国エコー1200.png

13時:
全国エコー1300.png

14時:
全国エコー1400.png

⑤衛星画像


10時50分の衛星画像です。

赤外画像(IR)。

赤外.png

東シナ海から西日本にかけて、とても白い雲が出ているので、雲頂高度が高いことが分かります。

可視画像(VIS)。

可視画像.png

南西諸島から日本海にかけて、対流雲の筋が何本も見えます。
強いエコーはこの対流性の雲による降水と考えられます。

⑥エコーの発生原因


850hPa相当温位図を見てみます。

相当温位.png

342Kの相当温位線(緑色)に着目すると、西日本のほぼ全域をカバーしています。西日本は非常に相当温位の高い暖湿気が40ktの南南西〜南西の風で流入しています。これは線状降水帯の形状とも一致します。

850hPa気温・風と700hPa鉛直流の天気図(ここでは省略)には、九州南部および四国で鉛直流の極値(ー38)があります。

これが非常に激しい雨の直接の原因と思われます。

梅雨前線による雨では400〜500km程度の幅を持った一様な降水帯となります。
北海道の降水は梅雨前線によるものと思われます。

一方で、西日本の強い降雨は北に張り出している太平洋高気圧の縁辺流と、台風がもたらした暖湿気が停滞前線に流入したものです。

梅雨期には前線の北側に降水帯が広がりますが、梅雨末期には南側で今回のような激しい雨となることがあります。

さいごに

気象予報士試験では、冒頭に紹介した6つの解析ステップの一部を問われることがあります。

レーダーエコーは気象庁のホームページで「レーダー・ナウキャスト」として見ることができますが、3時間経過すると削除されてしまいます。特異な気象現象が発生したら、普段から学習素材を集めておくことをお勧めします。

低気圧や台風などが現れたときには、その時のレーダーエコーと衛星画像(IR, VIS)を保存しておくと、後の学習に役立ちます。

画像取得時にはできるだけ時刻を朝9時、あるいは夜9時に行うと、高層天気図とも合わせやすくなります。

【リンク】
レーダー・ナウキャスト http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/
気象衛星画像 http://www.jma.go.jp/jp/gms/
高層天気図 http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html


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