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天気図の解析練習②(実況図の読み方) [知識]

高層天気図の読み方の基本をまとめます。分量が多いので、実況図(解析図を含む)と予想図に分け、今回は実況図についてです。

試験では高層天気図の実況図が出題されることは多くないので、過去問ばかりに取り組んでいるとあまり目にすることはないでしょう。

実況図を解析することは天気図解析の基本ですので、ぜひ毎日見るように心がけたいものです。

AUPQ35, 78

図の構成


AUPQ35

AUPQ_35_3.jpg


1枚が2等分され、上半分に300hPa天気図、下半分に500hPa天気図が掲載されています。

図の下に天気図の名称(AUPQ35)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。

UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST


AUPQ78

AUPQ78_3.jpg


1枚が2等分され、上半分に700hPa天気図、下半分に850hPa天気図が掲載されています。

図の下に天気図の名称(AUPQ78)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。

UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST


以下、個別の天気図について記します。

300hPa天気図


【主な用途】

300hPa強風軸を確認するのに用います。強風軸の位置が分かると、前線との対応関係を見たり、低気圧の閉塞時期を判断することができます(500hPaの実況図でも可能)。

強風軸解析はこちらをご覧ください。

【留意点】

試験での出題頻度は低いですが、気象解析では高層からスタートして徐々に下層まで見ていくのが定石です。日頃の練習では必ず300hPaからスタートしましょう。

強風軸の位置は季節によって異なります。真夏だと北海道よりも北に、真冬だと九州のあたりを吹いています。

【凡例】

300hPa天気図(解説入り).jpg


①等高度線 実線で120mごとに表示
②等風速線 破線で20ktごとに表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「300hPaの高度、温度、等風速」を記載


500hPa天気図


【主な用途と着目点】

①500hPa強風軸の解析
500hPa強風軸は、温帯低気圧の閉塞の具合(地上低気圧の中心が強風軸より北側にあれば閉塞)を見るのに使われます。

500hPa強風軸は300hPa強風軸の南側に位置するので、まず300hPa天気図で強風軸を見つけてから500hPa天気図を見るのが良いと思います。

それでも見つけにくい場合は、「500hPa高度・渦度解析図」(後述)や水蒸気画像も使うと見つけやすくなります。

②500hPaトラフ、リッジの解析
等高度線が等高度線の高い方に凸になっているところがトラフ、逆に等高度線の低い方に凸になっているところがリッジです。

トラフの探し方は私自身、まだ十分に習得できていませんが、天気図上で片っ端からトラフをマーキングしていくことも意味がないと思います。

実況解析の練習では、地上天気図で発達中の低気圧があれば、それに対応するトラフを500hPa天気図で探す(地上低気圧の西側にある)ことを繰り返していけば力がついてくると思います。

③寒気・暖気の流入
冬季であれば寒気がどこまで南下しているかを見ることで、大気の安定度などを判断できます。次の④とも重なりますが、冬季には5,400m線に注目します。これが南岸沿いまで南下していれば、強い寒気が入ることになります。

夏季であれば太平洋高気圧の目安となる5,880m線に注目し、太平洋高気圧の勢力を見ることができます。

④特定高度線の確認
500hPa面では特定高度線と呼ばれる3本の等高線を追跡することができます。これにより偏西風の蛇行の程度や、冬の寒気や夏の暖気の状況を推測することができます。

5400m線(−30℃の等温線におおむね対応する)
冬の寒気のしきい値
5700m線(偏西風帯の中心に対応する)
大気の流れが蛇行しているか東西流か
5880m線(亜熱帯高気圧の外周に相当する)
太平洋高気圧の勢力


【凡例】

500hPa天気図(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で3℃ごと(5〜10月)、もしくは6℃ごと(11〜4月)に表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「500hPaの高度、温度」を記載


700hPa天気図


【主な用途と着目点】

①湿り域の確認
中層の湿り域(T-Td<3)を確認します。この湿り域はドットで表示されています。

確認できたらレーダーエコーや衛星画像の雲域や、地上天気図の前線との対応を見ます。このように、ある現象を複数の気象要素や天気図で何重にも確認をとる作業が大切です。

【留意点】

試験での出題頻度は低いですが、日頃の練習では700hPa天気図も見る癖をつけましょう。

【凡例】

700hPa(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で6℃ごとに表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す(図には記載なし)
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「700hPaの高度、温度、湿り域」を記載


850hPa天気図


【主な用途と着目点】

①湿り域の確認
下層の湿り域(T-Td<3)を確認します。確認できたら700hPaの湿り域、レーダーエコーや衛星画像の雲域、地上天気図の前線との対応を見ます。

700hPaで湿り域がなければ、それより下層で雲が発生していると判断できます。

②等温線の確認
等温線の形状を確認します。北側に盛り上がっている、等温線が集中しているなどは、顕著現象につながる可能性があります。他の気象要素や天気図との関連性を見ながら、さらに分析します。

③温度場の確認
850hPaで−6℃以下だと雪の目安だと言われますが、−9℃であれば確実に雪になります。

【留意点】

等温線の確認は「850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図」(AXFE578)の方が使いやすいです。

等温線が実線ではっきり書かれていること、低気圧の解析に必要な温度移流や鉛直流が記入されていること、また等温線の間隔が通年で3℃単位で記入されているためです。

【凡例】

850hPa(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で3℃ごと(4〜11月)、もしくは6℃ごと(12〜3月)に表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す(図には記載なし)
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「850hPaの高度、温度、湿り域」を記載


850hPa天気図の等温線は暖候期(4〜11月)は3℃単位、寒候期(12〜3月)は6℃単位で記入されます。間違えやすいので、等温線が何℃おきに引かれているのか、併記された温度表示で確認する習慣をつけると良いです。

AUPQ利用上の留意点


AUPQの実況図を見るときの共通の留意点について記しておきます。

1500m超、3000m超の領域表示

高標高地域.png


AUPQでは標高が1,500m以上のところを縦線(図では緑色)、3,000m以上のところを格子(図では茶色)で表示されています。

これが問題になるのはチベット高原です。チベット高原は平均高度が4千メートルを超します。当然、850hPaや700hPaの天気図では風は観測されません(地中になってしまう?)。

上図は700hPa天気図ですが、 3,000m超の領域(茶色)では風が観測値が記入されていないのが確認できます。

500hPa天気図では、この網かけ領域から出てきた風については、利用上の大きな問題はないそうです。

チベット付近の地形がどうなっているのか、Google Earthで一回確認しておくと関心が湧きます。Google Earthだと実際の標高がメートル表示されるので、Googleマップより良いと思います。


AXFE578

観測データをもとに渦度、鉛直p速度(上昇流・下降流)などを数値解析した天気図です。

学科の専門知識で数値予報の流れを学ばれたと思います。AXFE578は、

「観測データ収集 → 客観解析 → 初期値化 → 予想値」

という一連の流れの中で、「初期値化」により作成された天気図です。言い換えると、数値予報の計算をするために、観測データに基づいて作成された初期値であり、今の状態を表しています。

初期値なので「T=00」と記載されています。

図の構成


AXFE578

AXFE578_3.jpg


AXFE578は1枚が2等分され、上半分に500hPa高度・渦度解析図、下半分に850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図が掲載されています。

500hPa高度・渦度解析図


【主な用途と着目点】

①トラフの解析
トラフの前面は発散場になっているため、上昇流による雲が発生することがあります。これから日本に接近してくるトラフ、中でも今後深まりそうなトラフを監視します。

トラフを見つけるには正渦度極大値が目安になりますが、曲率の大きいところからは外れていることも多いです。また風速により正渦度が発生することもあるので、あくまでも目安です。

②正渦度域の確認
正渦度域の形状やどこに広がっているかに注目します。例えば梅雨の時期には、前線に沿って帯状の正渦度域がのびることがあります。

これがいつも役に立つわけではありませんが、このような目線で天気図を見ることが大切です(と教わりました)。

③渦度ゼロ線の確認
正渦度域と負渦度域の境界は「渦度ゼロ線」と言い、強風軸になっているものがあります。

渦度ゼロ線はたくさん解析されますが、数値解析による結果なので細かいものにはこだわらず、大きな目線で組織的である程度の規模があるものを見ます。

ジェット気流(偏西風)による強風軸は地衡風なので、概ね等高度線に沿ったものになります。


【凡例】

500hPa高度・渦度(解説入り).jpg



①等高度線 実線で60mごとに表示
太実線で5100m、5400m、 5700mを表示
②正渦度極大値 正渦度の極大値
③正渦度域 縦縞で表示
④Hマーク 高気圧の中心
⑤Lマーク 低気圧の中心
⑥渦度ゼロ線 正渦度域と負渦度域の境界を実線で表示
⑦等渦度線 破線で40X10^-6(1/s)ごとに表示


850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図


【図の概要】

850hPaの気温(等温線)と風(風向、風速)と、700hPaの鉛直流(上昇流、下降流)が1枚の図に重ねて書かれています。

この図は低気圧の発達を見るのに最も重要な図です。

【主な用途と着目点】

①等温線の形状の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で等温線が集中し、低気圧の前面で北に盛り上がっていることは低気圧が発達する条件のひとつです。この形状は温度移流によりもたらされている可能性があるので、次のステップ②に進みます。

なお、温度線が1本だけ北に盛り上がっていることもあります。すべてのケースでその原因を特定することは困難ですが、なぜそうなっているのか色々と推測してみることは良い練習になります。

②温度移流の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で低気圧の前面に暖気移流、後面に寒気移流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。

強い風が集中している等温線と鋭い角度(90度近く)で交わっていれば、「強い暖気(寒気)移流がある」ことになります。

③鉛直流(上昇流)の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面でその前面で上昇流があり後面で下降流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。湿った空気が上昇を続ければ対流性雲を発生し、天気は崩れます。


【凡例】

850hPa気温と風・700hPa園直流(解説入り).jpg



①等温線 実線で3℃ごとに表示
②風向・風速 風速の単位は(m/s)
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤上昇流域 上昇流域を縦線で表示
⑥鉛直p速度 鉛直p速度を数値表示
プラスは上昇流、マイナスは下降流


FXJP854

FXJP854は「850hPa風・相当温位の予想図」です。予想図なので、本来実況図の分類には入りません。

しかし、天気の悪化要因である暖湿気の流入を見るのに850hPa風・相当温位の天気図は欠かせません。そこで12時間前の「850hPa風・相当温位の12時間予想図(T=12)」を実況図に準じて取り扱います。

FXJP854準_3.jpg


【主な用途と着目点】

①相当温位線の集中帯
西日本の梅雨は、相当温位線の集中帯の南端に前線が表現されます。

②暖湿気の流入
高い相当温位線を横切って風が吹くと、暖湿気が流入します。暖湿気が何Kなのかは季節により変化します。夏季には345K、秋季は336Kが目安だと思います。

③低気圧性循環・高気圧性循環の確認
地上低気圧の上空で低気圧性循環(左回りの風)や高気圧の上空で高気圧性循環(右回りの風)があれば、それだけしっかりとした低気圧、高気圧であると言えます。


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