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相当温位鉛直断面図 [傾向と対策]

鉛直断面図

図の概要

相当温位鉛直断面図は相当温位の鉛直方向の分布を表したもので、相当温位の立体的な分布を把握することができます。

縦軸は気圧(hPa)で高さを表示し、横軸は北緯です。

断面図1.png


高層天気図の一種である850hPa面の相当温位と風の分布図(FXJP)はよくご存知でしょう。FXJPは等相当温位線の集中帯や暖湿気の流入を見るのに便利です。

このFXJPは850hPaという水平面で相当温位と風の分布を見たものですが、水平面と直交する鉛直方向の断面で相当温位の分布を見たものが相当温位鉛直断面図です。さらに、鉛直方向の風の分布を書き込んだものは「相当温位・風の鉛直線断面図」となります。

断面ということは地上(海面上)とどこかで交わるはずで、それが出題文では「直線(線分)X-Yに沿って鉛直に切った断面図」のように表現されます。

先の断面図は、長崎沖の線分X-Yに沿って鉛直方向に切っています。

断面図2.png



出題の傾向

過去10回の試験で、鉛直図は5問の出題がありました。

【相当温位・風の鉛直断面図】

第40回実技2
相当温位・風の鉛直断面図から、低気圧に伴う前線の構造と特徴を読み取る問題
・等相当温位線の分布から、前線の特徴を読み取る
・風の鉛直分布から温度移流を判断する
・4枚の断面図を時系列順に並べる

第41回実技1
相当温位・風の鉛直断面図から、前線(停滞前線)と大気の状態(風の変化、安定状態)を読み取る問題(平成24年台風第16号接近時)
・前線の名称
・風の変化、相当温位の状況を読み取る

第42回実技1
相当温位・風の鉛直断面図から、降水域の特徴を読み取る問題(平成24年九州北部豪雨発生時)
・降水の要因となる暖湿空気の流入状況を読み取る
・風速の鉛直分布の特徴を読み取る
・上空の温度移流を読み取る
・降水をもたらす雲が形成されている暖湿空気の特徴の読み取り

【相当温位南北鉛直断面図】

第47回実技1
上空方向の相当温位の分布の変化の特徴を読み取る問題

【気温・温位・風の鉛直断面図】

第47回実技2
前線を横切る温位の鉛直断面図から、温暖前線、寒冷前線の立体構造を読み取る問題

このように、相当温位の鉛直断面図の出題では前線がテーマとなることが圧倒的に多いことが分かります。


対策

相当温位断面図に関する出題は、断面図が何を表しどのような特徴が表現されているのかが理解できれば、出題文に誘導されて解答できる内容です。

とは言え、限られた試験時間内で手際よく解答するには、代表的な事例を頭に入れておいた方が効率が上がります。そこで前線と集中豪雨について見ておきましょう。


前線を読み取る

断面図で前線が読み取れるようにしておきましょう。

まず前線帯や転移層について理解しましょう。前線や前線面は実際は「線」や「面」ではなく、水平方向の幅や鉛直方向の厚さを持っています。幅を持った前線は「前線帯」、厚さを持った前線面は「転移層」と呼ばれます。

転移層を等圧面で切り取ったものが前線帯だと考えても良いでしょう。

さて、こちらは米国の教科書"Atmospheric Science"(1977年版)に掲載されている、ジェット気流の鉛直断面図です。縦軸は高度(km)及び気圧(mb)、横軸は北緯(左にいくほど高緯度)です。実線は等温位線、破線は等風速線です。

Wallace and Hobbs, 1977_2 2.png


この図から次のことが分かります。

・ジェット軸(Jで図示されている)の下方に前線がある
・転移層では等風速線が集中している

次の図は、同じくジェット気流の鉛直断面図に等温線(実線)と等風速線(破線)を表したものです。

等温線 3 2.png


前線帯では等温線が何本も横切っていることから、気温の水平傾度が大きいことが分かります。

なお、前線の部分では暖気が上へ、寒気が下へもぐりこむため、転移層の部分で前線性の逆転層(移流逆転層)ができることがあります。


集中豪雨を読み取る

集中豪雨をもたらす線状降水帯の多くは、風上で積乱雲が繰り返し発生することで形成されます。これは大気下層に水蒸気が大量に蓄積され、強い南よりの風で持続的に流入することで発生します。

線状降水帯の正体は組織化された積乱雲です。線状降水帯のできやすい領域は、積乱雲のできやすい領域でもあります。すなわち、下層の空気塊が持ち上げられて、自由対流高度に達しやすい場です。
具体的には、
・下層の相当温位が高いこと
・下層風収束場が存在すること
です。

梅雨前線の南側で発生する線状降水帯を、断面図で見てみます。

暖湿気の流入.png

前線付近南側の上空に湿潤域が見られます。集中豪雨は、高度1km以下の下層で南よりの湿った空気が流入し、湿潤域とぶつかるあたりで生じます。


その他

一般的に相当温位は低緯度ほど高くなります。

こちらは第47回実技1の出題で、領域X、Y、Zにおける相当温位の分布が上空に向かってどう変化するかを聞いています。

相当温位断面図.png


相当温位は330Kしか表示されていません。しかし、相当温位は低緯度ほど高くなることを押さえて一本ずつ丁寧に追っていけば解くことができます。

(解答) X:変化せず、Y:減少する、Z:増加する

また、断面図に風が書き込まれていれば、温度移流を読み取ることができます。上空に向かって時計回りであれば暖気移流、反時計回りであれば寒気移流です。これはエマグラムの場合と同様です。


【参考文献】
吉崎・加藤「豪雨・豪雪の気象学」(朝倉書店、2007)
気象庁「平成26年度予報技術研修テキスト」
徳島地方気象台「線状降水帯について」
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