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ブログを引越します
「気象予報士の実技試験に役立つ情報」ブログを引っ越すことにしました。
今後の記事は新しいブログに掲載していきます。
これからも引き続き、よろしくお願いします。
https://kishounomoto.com
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等値線を読み取る [練習]
試験では、天気図から低気圧の中心気圧を読み取る問題が頻出されます。
通常、天気図には高気圧や低気圧の中心気圧が記載されていますが、試験ではそれをあえて隠して等圧線の本数から読み取らせることがあります。
等圧線には太実線、細実線、破線があります。今回は破線の等圧線をメインに学習します。
合わせて、「850hPaの気温・風と700hPaの鉛直p速度の高層天気図」の閉じた温度線を読み取る方法も確認します。
次の等値線が与えられたときに、(a)中心気圧、(b)6℃線と9℃線に挟まれた気温、はいくつと読み取るのが正しいのか?

【選択肢】
(a)①1020hPa、②1018hPa、③1016hPa、④1022hPa、⑤1024hPa
(b)①6℃、②9℃、③7.5℃、④読み取り不能
正解は「(a)②1018hPa、(b)④読み取り不能」です。自信を持って正解できた方は、以下は読まなくても大丈夫です!
気象庁が作成する地上天気図に、等圧線は4hPa単位で記入されています。必要があればその中間値(2hPa)を破線で表現します。
破線が用いられるのは次のケースです。
では、それぞれを見てみましょう。
高気圧・低気圧の中心気圧は2hPa単位で解析することが原則になっています。そのため、天気図では破線表示が必要になることがあります。
次の図を見てください。

いずれも「H」とあるので高気圧が書かれていて、高気圧中心の周りを1000hPa(太実線)が囲んでいます。高気圧中心は「×」で表現されています。
それぞれの中心気圧は次のようになります。
(a)高気圧中心の気圧は太実線と同じ1000hPaです。
(b)高気圧中心を細実線(4hPa)が囲んでいるので、1004hPa(=1000+4)です。
(c)高気圧中心を破線(2hPa)が囲んでいるので、1002hPa(=1000+2)です。
この3通りを確実に読み分けられるようにしてください。
次の天気図を見てください。

※気象庁天気図を修整
日本の南海上には等圧線(実線)がありません。気圧傾度が小さいので、等圧線はスカスカの状態です。このようなとき、補助線として2hPa単位の破線を表記します。
どれぐらいスカスカの時に破線を引くかというと、「緯度経度で約15°×15°以上の領域に実線の等圧線がない」場合です(上記の天気図では概ね黄色の領域が該当します)。
次の①〜⑦の高気圧、低気圧の中心気圧を読み取ってみましょう(元の天気図に記載されていた中心気圧は消してあります)。

※気象庁天気図を修整
まず分かりやすいように、すべての等圧線の気圧を読み取って記入します。低圧側は中心部ほど気圧が低いこと、逆に高圧側は中心部ほど気圧が高いことに留意しながら読み取ります。

※気象庁天気図を修整
注意したいのは、地上天気図に個々の等圧線の値は記入されていないことです(ASASは、太実線のみに「1000」「1020」と表記されています)。
等圧線に被って「1018」などと表記されているとあたかも等圧線の気圧かと勘違いしてしまいますが、表記されているのは高気圧・低気圧の中心気圧です。
(正解)
①1004、②1008、③1020、④1022、⑤1010、⑥1014、⑦1002

補助線が2本(①、②)引かれています。これは「緯度経度で約15°×15°以上の領域に実線の等圧線がない場合」に相当し、いずれも1014hPaです。
正しく読み取れない方は、「SPAS(速報天気図)では、等圧線に気圧の値は記入されない」ことに留意してください。
破線②の上に「1008」とあり、あたかも2つの低気圧を囲んでいる閉じた等圧線が1008hPaであるかのように見えます。しかし、これは30km/hで東進中の低気圧の気圧を表します。
20hPa ごとに引かれる太実線を基準にして、高気圧・低気圧に記入された気圧の値を参考にしながら読み取ってください。
続いて、「850hPaの気温・風と700hPaの鉛直p速度の高層天気図」(解析図)の閉じた温度線の読み取りを練習しましょう。
基本的に「850hPa天気図」(実況図)に書かれた温度分布と同じですが、解析図の方が温度線を見やすいこと、そしてより実況図よりも細かく分析されています。
一般的に高緯度(北側)から低緯度(南側)に南下するほど気温は高くなります。しかし気温は線形に上昇していくのではなく、小さな上下を含みながら推移していくことがあります。

したがって、等温線の間に現れた「小さな閉じた等温線」は、その下の気温より高いとか低いとかを一概に言うことはできません。その代わり、判断材料として、閉じた等温線には「W」もしくは「C」と書かれています。

12℃線と15℃線の間に閉じた等温線が2つあり、いずれも「C」と書かれています。

AXFE578 111200UTC MAY2019
12℃から15℃の間は、12℃、13℃、14℃、15℃と気温がリニアに上昇していくことが期待されます。
しかし、それよりも気温が「低い(C)」ということは、赤ループの中はそれを挟む2本の等温線の低い方である12℃を起点としてリニアに気温が下降していくことを意味しています。ここに小さな谷があるイメージです。
したがって、いずれの等温線も12℃になります。
閉じた等温線が5つあり、いずれも「W」と書かれています。

①②③④:18℃線と21℃線の間
⑤:15℃線と18℃線の間
③は①②④と比べると大きな領域ですが、よく観察すると環状に閉じていることが分かります。
18℃と21℃の間は、18℃、19℃、20℃、21℃と気温がリニアに上昇していくことが期待されます。
しかし、それよりも気温が「高い(W)」ということは、赤ループの中はそれを挟む2本の等温線の高い方である21℃を起点としてリニアに気温が上昇していくことを意味しています。ここに小さな山があるイメージです。
参考文献:「平成29年度予報技術研修テキスト」(気象庁予報部)

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通常、天気図には高気圧や低気圧の中心気圧が記載されていますが、試験ではそれをあえて隠して等圧線の本数から読み取らせることがあります。
等圧線には太実線、細実線、破線があります。今回は破線の等圧線をメインに学習します。
合わせて、「850hPaの気温・風と700hPaの鉛直p速度の高層天気図」の閉じた温度線を読み取る方法も確認します。
問題
次の等値線が与えられたときに、(a)中心気圧、(b)6℃線と9℃線に挟まれた気温、はいくつと読み取るのが正しいのか?

【選択肢】
(a)①1020hPa、②1018hPa、③1016hPa、④1022hPa、⑤1024hPa
(b)①6℃、②9℃、③7.5℃、④読み取り不能
正解は「(a)②1018hPa、(b)④読み取り不能」です。自信を持って正解できた方は、以下は読まなくても大丈夫です!
等圧線の読み取り
気象庁が作成する地上天気図に、等圧線は4hPa単位で記入されています。必要があればその中間値(2hPa)を破線で表現します。
破線が用いられるのは次のケースです。
①高気圧・低気圧の中心気圧を解析するとき
②一定以上の領域に実線の等圧線がない場合
②一定以上の領域に実線の等圧線がない場合
では、それぞれを見てみましょう。
①高気圧・低気圧の中心気圧
高気圧・低気圧の中心気圧は2hPa単位で解析することが原則になっています。そのため、天気図では破線表示が必要になることがあります。
次の図を見てください。

いずれも「H」とあるので高気圧が書かれていて、高気圧中心の周りを1000hPa(太実線)が囲んでいます。高気圧中心は「×」で表現されています。
それぞれの中心気圧は次のようになります。
(a)高気圧中心の気圧は太実線と同じ1000hPaです。
(b)高気圧中心を細実線(4hPa)が囲んでいるので、1004hPa(=1000+4)です。
(c)高気圧中心を破線(2hPa)が囲んでいるので、1002hPa(=1000+2)です。
この3通りを確実に読み分けられるようにしてください。
②一定以上の領域に等圧線がない場合
次の天気図を見てください。

※気象庁天気図を修整
日本の南海上には等圧線(実線)がありません。気圧傾度が小さいので、等圧線はスカスカの状態です。このようなとき、補助線として2hPa単位の破線を表記します。
どれぐらいスカスカの時に破線を引くかというと、「緯度経度で約15°×15°以上の領域に実線の等圧線がない」場合です(上記の天気図では概ね黄色の領域が該当します)。
実例を見てみよう
事例1:高気圧・低気圧の中心気圧
次の①〜⑦の高気圧、低気圧の中心気圧を読み取ってみましょう(元の天気図に記載されていた中心気圧は消してあります)。

※気象庁天気図を修整
まず分かりやすいように、すべての等圧線の気圧を読み取って記入します。低圧側は中心部ほど気圧が低いこと、逆に高圧側は中心部ほど気圧が高いことに留意しながら読み取ります。

※気象庁天気図を修整
注意したいのは、地上天気図に個々の等圧線の値は記入されていないことです(ASASは、太実線のみに「1000」「1020」と表記されています)。
等圧線に被って「1018」などと表記されているとあたかも等圧線の気圧かと勘違いしてしまいますが、表記されているのは高気圧・低気圧の中心気圧です。
(正解)
①1004、②1008、③1020、④1022、⑤1010、⑥1014、⑦1002
事例2:一定以上の領域に等圧線がないケース

補助線が2本(①、②)引かれています。これは「緯度経度で約15°×15°以上の領域に実線の等圧線がない場合」に相当し、いずれも1014hPaです。
正しく読み取れない方は、「SPAS(速報天気図)では、等圧線に気圧の値は記入されない」ことに留意してください。
破線②の上に「1008」とあり、あたかも2つの低気圧を囲んでいる閉じた等圧線が1008hPaであるかのように見えます。しかし、これは30km/hで東進中の低気圧の気圧を表します。
20hPa ごとに引かれる太実線を基準にして、高気圧・低気圧に記入された気圧の値を参考にしながら読み取ってください。
850hPaの等温線
続いて、「850hPaの気温・風と700hPaの鉛直p速度の高層天気図」(解析図)の閉じた温度線の読み取りを練習しましょう。
基本的に「850hPa天気図」(実況図)に書かれた温度分布と同じですが、解析図の方が温度線を見やすいこと、そしてより実況図よりも細かく分析されています。
一般的に高緯度(北側)から低緯度(南側)に南下するほど気温は高くなります。しかし気温は線形に上昇していくのではなく、小さな上下を含みながら推移していくことがあります。

したがって、等温線の間に現れた「小さな閉じた等温線」は、その下の気温より高いとか低いとかを一概に言うことはできません。その代わり、判断材料として、閉じた等温線には「W」もしくは「C」と書かれています。
C:周囲よりも低い(閉じた等温線を挟む2本の温度線のうち、気温の低い方と同じ気温)
W:周囲よりも気温が高い(閉じた等温線を挟む2本の温度線のうち、気温の高い方と同じ気温)
W:周囲よりも気温が高い(閉じた等温線を挟む2本の温度線のうち、気温の高い方と同じ気温)

実例を見てみよう
事例1:「C」のケース
12℃線と15℃線の間に閉じた等温線が2つあり、いずれも「C」と書かれています。

AXFE578 111200UTC MAY2019
12℃から15℃の間は、12℃、13℃、14℃、15℃と気温がリニアに上昇していくことが期待されます。
しかし、それよりも気温が「低い(C)」ということは、赤ループの中はそれを挟む2本の等温線の低い方である12℃を起点としてリニアに気温が下降していくことを意味しています。ここに小さな谷があるイメージです。
したがって、いずれの等温線も12℃になります。
事例2:「W」のケース
閉じた等温線が5つあり、いずれも「W」と書かれています。

①②③④:18℃線と21℃線の間
⑤:15℃線と18℃線の間
③は①②④と比べると大きな領域ですが、よく観察すると環状に閉じていることが分かります。
18℃と21℃の間は、18℃、19℃、20℃、21℃と気温がリニアに上昇していくことが期待されます。
しかし、それよりも気温が「高い(W)」ということは、赤ループの中はそれを挟む2本の等温線の高い方である21℃を起点としてリニアに気温が上昇していくことを意味しています。ここに小さな山があるイメージです。
参考文献:「平成29年度予報技術研修テキスト」(気象庁予報部)

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天気図の解析練習③(解析の実際) [練習]
はじめに
「天気図の解析」の第3回では、代表的な天気図や衛星画像を使って実際に実況解析をしてみます。
実況解析というのは、「今どうなっているのか」、「なぜそうなったのか」を分析することです。単純なようですが、予報作業の基礎となる作業です。
実況解析は、できるだけ毎日行うのが望ましいです。天気は連続して変化していくので、自分の解析がどこまで正しかったかが次の時点で明らかになります。これを繰り返していくことで経験値が高まり、豊富なシナリオを蓄積することができます。
解析作業で大切なのは、天気図を見れば一目瞭然のこと、例えば「どこどこに前線がある」という明快なことであっても、文字にして書くということです。
「分かりきったことだから、これは書かなくていいや」ではなくて、単純なことでも文字に書くという練習を繰り返すという小さな一歩を重ねていきましょう。
解析例
2019年4月5日の事例を取り上げます。
各天気図で気がついた点を2〜4項目ずつ、簡潔に書いていきます。
なお、他天気図との関連性を青字のコメント文で記載しています。
解説
1.地上天気図
日本の天気に影響する気圧系(低気圧、高気圧、前線)を中心に、大陸を含めた広い範囲で気圧系を見ます。気圧系は移動方向や、その速さにも注目します。
例えば、今回の事例では奄美大島の低気圧は20ktで東北東に進んでいますが、その後面にある高気圧は10ktで東に移動しています。仮に高気圧の移動速度の方が速ければ、気圧傾度は今後大きくなると推測できます。
日本海北部と沿海州にそれぞれ低気圧があり今後どちらが発達するか気になるところですが、「実況解析」は低気圧が2つあると認識しておしまいです(その先は「予想」の話になります)。
とは言っても気になるので、2つの低気圧を比較してみます。
沿海州の低気圧 | 日本海北部の低気圧 | |
---|---|---|
過去6時間の発達(hPa) | 996→996→994 | 998→996→992 |
低気圧性循環 | 850hPaで示している | 示していない |
等温線の特徴 | なし | 北に盛り上がっている |
相当温位の特徴 | なし | 北に盛り上がっている |
こうして比較して見ると、日本海北部の低気圧が発達しそうです。
2.300hPa天気図
下層と比べると変化は緩慢ですが、上層ほどあらゆる気象現象の「背景の場」であることを意識します。すなわち、メソスケールや局所的な気象現象もそれだけを見るのではなく、大きな場から徐々に絞り込んで観察するということです。
強風軸の解析を毎日続けていると、季節により風の吹く緯度が異なることに気がつきます。また、夏になるとチベット高気圧が発生し、チベットの高所を吹く風が変化することも分かります。
強風軸を見つけるには、300hPa天気図に破線で表示される最大の風速から2〜3段階(40〜60kt)ほど弱い風速の破線を塗りつぶし、その中心を貫くように描くと良いと思います。
今回の事例は4月上旬でジェットが強く、かつ日本付近を吹いています。最大風速は160ktなので3段階(60kt)弱い100ktを強風軸の基準にすることで引きやすくなりました。
ジェットは南から順に「亜熱帯ジェット(subtropical)」、「寒帯前線ジェット南系(polar south)」、「寒帯前線ジェット北系(polar north)」の3本があります。3本あるということを念頭に引きます。
ジェット軸・強風軸の解析は厳密ではなく、あまり神経質になる必要はありません。どの辺を吹いているかが分かれば大丈夫です。
3.500hPa天気図
500hPa等圧面ではトラフやリッジを見るほか、等高度線や等温線で寒気の強さや太平洋高気圧の強さなどを見ます。見どころが満載の天気図です。
トラフは風の向きが北よりから南よりに変化しているところを探すと見つけやすいでしょう。
今回の事例ではトラフが2つありましたが、「東シナ海の5700mのトラフ」は見つけにくいと思います。これは12時間前の500hPa天気図(下図)を見ると分かりやすいです。

低気圧や高気圧は、地上高気圧に移動方向と移動速度が表示されていますが、トラフの移動情報は記載されていません。12時間前の天気図と見比べて、トラフがどの方向に進んでいるのかを確認する習慣をつけましょう。
4.700hPa天気図
700hPaの湿り域をレーダーエコーや気象衛星画像と突合することで、雲域と降水域の対応を確認することができます。湿り域を見るときは、前線(がある場合には)や雲の形と関連づけます。また、850hPaの湿り域と見比べることも大事です。
今回の事例では、北の湿り域は日本海北部の前線の暖域に発生しているのに対して、南の湿り域は東シナ海の前線の暖域および温暖前線に対応しています。
また、850hPaの実況図と見比べると、850hPaでは北の湿り域がほとんど存在しません。これについては、後ほどの「8.850hPa相当温位・風解析図」で考えてみます。
※日々の解析練習では「なぜそうなっているのか?」をあまり突き止めずに、そうなっているという事実を認識するに留(とど)めた方が作業効率は上がります。
5.850hPa天気図
850hPaは接地境界層の影響を受けないギリギリの高度であり、下層における気圧分布や温度分布を見るのに適しています。
風向を見ると鹿児島では西南西の風ですが、奄美では南南西の風が吹いており、温暖前線に対応する風の水平シアーがあります。また、上海付近では北西の風ですが、台湾では西南西の風となっており、寒冷前線に対応する風のシアーが確認できます。
ちなみに3月までの天気図に見慣れていると等温線が密になったように感じますが、これは4月から等温線が3℃おきに表示されるためです(850hPa実況図のみ)。
【850hPa天気図の等温線表記】
4〜9月: 3℃間隔、 10〜3月: 6℃間隔
4〜9月: 3℃間隔、 10〜3月: 6℃間隔
6.500hPa高度・渦度解析図
渦度域の分布をざっくりと把握するのに用います。トラフがどのように移動して現在の正渦度域になっているのかを、過去の解析図から追跡します。
この解析図には渦度の極大値が記入されているのでトラフが見つけやすい、という人もいます。渦度は大気の流れの回転と風速の水平シアーの双方により算出されるので、極大値=トラフではありません。個人的には500hPa天気図の方がトラフを見つけやすいと思います。
渦度ゼロ線は強風軸に対応しているので、500hPa天気図を使うよりは見つけやすくなります。

渦度ゼロ線は滑らかでなく小さい凸凹があります。これは計算値をそのまま表現したためなので、強風軸を書くときは滑らかな曲線でつなぎます。500hPaの強風軸は、300hPaよりも南側に位置することが通常です。
7.850hPa風・気温、700hPa鉛直p速度解析図
低気圧の発達や前線の活動状況を見るのには欠かせない天気図です。
上昇流は負の鉛直p速度(hPa/H)を持ちます。上昇流域は縦線の領域で表され、さらにー20(hPa/H)ごとに点線で表記されます。
今回の事例では、石垣島付近で「ー110」の上昇流の極値が計算されています。

8.850hPa相当温位・風解析図
この図は予測図です。しかし、相当温位の実況図は存在しないため、「実況時刻の12時間前を初期時刻とする12時間後予想図」を実況に準じた「準実況図」として用います。

分かりにくい表現をしましたが、今回の事例では4月5日9時(00UTC)の実況を見ているので、それより12時間前の4日21時(12UTC)の「850hPa相当温位・風解析図」の12時間予想図を使って850hPaの相当温位と風を見ます。
さて、東シナ海の低気圧に大きな湿り域(レーダーエコー、雲域)が生じている理由について考えてみます。850hPa相当温位・風の解析図を再掲します。

黄色の点線で囲った領域では等相当温位線が密集し傾度が大きくなっている上に、盛り上がりも大きくなっています。また、石垣島ではθe=339K以上の下層暖湿気が流入しています。これが日本海北部の低気圧との違いだと思われます。
9.レーダーエコー
この事例では、先島諸島(宮古諸島と八重山諸島の総称)付近のエコーが黄色から赤色の暖色系となっており、寒冷前線の活動が活発なのが分かります。
先島諸島周辺を拡大したレーダーエコーがこちらです。

石垣島は赤色で表示される「非常に激しい雨」の北側に位置しています。石垣島の降水量はどうなっているでしょうか。

4月5日の降水量のグラフを見ると、8時の1時間降水量(※)が42mmとなっています。これは700hPa鉛直p速度が石垣島で極値となっていたこととも符号しています。
※「8時の1時間降水量」とは7時00分〜7時59分に降った雨量のことです。
最後に、石垣島の大気の安定度をSSI(ショワルター指数)で確認しておきます。ショワルター指数とは、850hPaの気塊を500hPaまで持ち上げたときの気温を算出し、500hPaの大気の気温から減じたものです。

出典:ワイオミング大学
石垣島のSSI(ショワルター指数)の値はマイナス0.59と負の値でした。これは850hPaから持ち上げた気塊が500hPaの大気よりも暖かく、さらに上昇していくことを意味します。
したがって、石垣島の大気の状態は不安定だったことがこれからも確認できます。
10.赤外画像
気象衛星画像を見るとき、雲は小さい単位ではなく、ひとまとまりの雲域として捉えます。
雲があるところばかりではなく、雲がない領域(黒く写っているところ)にも注目します。ここは晴れている領域なので、天気図と見比べると「こういうときは晴れるのか」ということが分かります。
衛星画像は連続写真で見ると、その雲がどこからやってきたのかや、渦を巻いている様子が分かりやすくなります。気象庁のホームページでは過去3時間や6時間の動画(10分ごとのコマ送り)を見ることができます。
衛星画像のページ(気象庁):
http://www.jma.go.jp/jp/gms/
11.可視画像
可視画像は早朝や夕方の時間帯は、日射の角度によって写りが良くありません。4月上旬になっても午前中の早い時刻では、画像がはっきりしません。そこで冬季は12時の可視画像で代用します。9時からの3時間では、雲画像に大きな変化は生じないと考えられます。
今回の事例では黄砂を確認することができました。黄砂は東アジアの砂漠域から舞い上がった黄砂粒子が上空の風により運ばれる現象です。3〜4月に最も頻繁に発生し、大気汚染や交通障害などをもたらします。
4月5日、「黄砂に関する全般気象情報」が発表されました。4日15時現在、中国東北区で黄砂が観測され、5日午後は北日本から東日本を中心に黄砂が予想されるという内容です。
11(2)の可視画像(カラー)には黄砂が日本に向けてまさに飛来中の形跡がはっきりと見てとれます。
黄砂の飛来状況は気象庁の「黄砂観測実況図」で確認することができます。

6日には西日本で黄砂が確認されているのが分かります。
最後に
今回取り上げた4月5日の事例は天気図的には賑やかな日で、解析の対象が豊富でした。
毎日のように作業を続けていると、このように特徴の多い日ばかりではありません。だからと言って「解析事項なし」とするのではなく、特徴がなければないなりに継続することが大切です(と教わりました)。
天気図(実況図)の解析は、慣れないと時間のかかる作業です。私も毎回、一時間以上かかっていました。試験勉強も続けながらだと、これだけの時間を確保できるのは週末ぐらいかもしれません。でも、続けていると自分なりに着眼点が分かってきて、時間は自然と短縮されていきます。
試験に合格することも大事だけど、そもそも天気図を読めるようになることが大前提です。頑張って続けていれば天気の直感力が磨かれて、そのおまけとして「試験合格」がついてくるはずです。

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トラフの疑問を解消します。 [知識]
トラフについて知りたいことはいろいろとあるのに、参考書にもネットにも説明がありません。
そこで現在の自分が有する全ての能力で、トラフについての疑問を自問自答してみます。
最初にトラフの定義を確認しておきましょう。
【トラフ】
数値や数式で決まるものではなく、等高度線の形状を指しているというのが大事なところです。
では疑問に行ってみます。
渦度が生じるのは、①流れに曲率があるとき、②速度の水平シアーがあるとき、の2通りが考えられます(図1)。
トラフは低気圧性循環による曲率が大きいところですから、①のパターンです。
しかし、正渦度域で計算されている極大値は、①と②の両要素による渦度の合計値です。したがって、②の風の水平シアーによる渦度が大きい場合は、曲率が最大のところには極大値が算出されません。
事例で見てみましょう。
事例1:トラフと極大値の位置が一致するケース
(2019.1.27 12UTC)
谷底に極大値「+182」(オレンジ色破線)があります。低気圧性循環による曲率が大きく、かつ風の水平シアーがないケースです。
このような事例なら、自信を持ってトラフを引くことができます。
事例2:トラフからずれて極大値が存在するケース
(2019.1.24 00UTC )
正渦度の極大値「+172」(オレンジ色破線)の位置はトラフから南東にずれています。これは風の水平シアーも大きいので、トラフの位置からずれたところに極大値が算出されたものです。
「トラフは極大値(+172)に重ねて書くべきか?」と悩むところですが、ここは堂々と等高度線が凸状に張り出したところに引きましょう。
事例3: トラフがないのに極大値が存在するケース
(2019.2.13 00UTC)
5,760mの正渦度域が帯状になっているところに、極大値「+100」(オレンジ色破線)があります。等高度線は直線状で、近傍にトラフは見当たりません。これは低気圧性の循環がなく、風の水平シアーが大きいケースです。
「気圧の谷」も「トラフ」も同じ概念です。気象庁の定義は次の通りです。
出典:気象庁「気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi1.html
「気圧の谷」は主に地上天気図で使われることが多い用語ですが、高層天気図で用いられることもあります。
それに対して、「トラフ」は高層天気図のみで用いられ、地上天気図で使われることはありません。したがって「気圧の谷」はトラフを含む、より汎用性の高い言葉と考えられます。
気象庁が使う用語には時々不可思議なものがあります。例えば、低気圧は「進む」で高気圧は「移動する」というように、主語によって述語を使い分けることがあります。
ところでトラフ解析は500hPa面で行うことが多いですよね。これは500hPa面は対流圏の中間にあたり収束・発散が小さく、渦度が保存されるとみなせるため追跡がしやすいからです。
しかしトラフ自体は500hPa面以外でも、300hPa、700hPa、850hPaの各面でも観察することができます。したがって、どの等圧面でトラフを解析するのかを言及するのが好ましいのです。
第51回の実技試験でも「500hPa面のトラフ」という表現が用いられています。解答でも500hPa面であることが自明の場合を除いては、(字数の余裕がある場合は)「500hPa面のトラフ」と書きましょう。
かなり直球の質問です。端的に答えると、トラフはこれから天候が悪化する前兆になるからです。トラフの移動を追いかけると、どこの天気が崩れるかを予想することができます。
温帯低気圧がどのように発達するかを考えてみましょう。下層と上層の条件がうまく一致すると、低気圧は発達します。下層の条件としては暖かくて湿った大気(暖湿気)が流入していること、温度移流があることが挙げられます。また、上層の条件としては発散場があることです。発散場は空気の存在が疎になるので、そこを埋め合わせるように下層から空気が上昇します(図5)。
発散場はトラフ(低気圧性循環)とリッジ(高気圧性循環)の間にできるので、トラフが接近してくるとその前面が発散場となります。
下層で低気圧が発達する条件が揃っても、上層に発散場が存在しないと不明瞭なままに終わってしまいます。逆に上層にトラフがあっても、下層に低気圧の卵がなければトラフはそのまま通過してしまいます。したがって、500hPaの解析図を見て片っ端からトラフに印をつけていくという作業は無駄です(そのような人を見たことがあります)。
さらにトラフを追いかけることで気温の変化の予想をすることもできます。
上層を吹く偏西風は緯度に平行ではなく南北に蛇行しています。南に蛇行した部分(形状)をトラフと称しているので、基本的にトラフは北側の寒気を伴っています(図6)。
これも事例を見てみましょう。
(2019.1.15 12UTC)
トラフ後面では等温線を横切るように北よりの風が吹いています。これが寒気移流です(図7青色線)。また、トラフ前面では南よりの風が等温線を横切る風(暖気移流)が吹いています(図7橙色線)。
このように、トラフを見つけたら温度移流があるかを確認してみましょう。例えば、冬季の気温を予想するには500hPaの温度場で寒気がどこまで南下するかを見ることが大事です。しかしトラフが通過して寒気移流がなくなれば、寒気のピークは底を打ったと判断することができます。降っていた雪も終息に向かいます。
気象庁は季節予報を発表していますが、1ヶ月予報では偏西風の蛇行の予測を利用しています。例えば、偏西風が南へ蛇行すると予想される場合は、気圧の谷が通過する(=高度が下がる)ので低温と予測します。

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そこで現在の自分が有する全ての能力で、トラフについての疑問を自問自答してみます。
最初にトラフの定義を確認しておきましょう。
【トラフ】
等高度線が高度の低い方から高い方に向かって凸状に出っ張ったところ
数値や数式で決まるものではなく、等高度線の形状を指しているというのが大事なところです。
では疑問に行ってみます。
(疑問)トラフと渦度極大値の位置
500hPaの解析図で等高度線の谷が一番深いところを見つけました。等高度線の形状から判断するとトラフのようなのですが、正渦度の極大値が谷底に表記されていません。
なぜトラフと渦度極大値の位置は一致しないのでしょうか。また、トラフはどちらをもとに引けば良いのでしょうか。
500hPaの解析図で等高度線の谷が一番深いところを見つけました。等高度線の形状から判断するとトラフのようなのですが、正渦度の極大値が谷底に表記されていません。
なぜトラフと渦度極大値の位置は一致しないのでしょうか。また、トラフはどちらをもとに引けば良いのでしょうか。
渦度が生じるのは、①流れに曲率があるとき、②速度の水平シアーがあるとき、の2通りが考えられます(図1)。
図1 渦度が生じる要因
トラフは低気圧性循環による曲率が大きいところですから、①のパターンです。
しかし、正渦度域で計算されている極大値は、①と②の両要素による渦度の合計値です。したがって、②の風の水平シアーによる渦度が大きい場合は、曲率が最大のところには極大値が算出されません。
事例で見てみましょう。
事例1:トラフと極大値の位置が一致するケース
(2019.1.27 12UTC)
図2 トラフと渦度極大値の位置が一致するケース
谷底に極大値「+182」(オレンジ色破線)があります。低気圧性循環による曲率が大きく、かつ風の水平シアーがないケースです。
このような事例なら、自信を持ってトラフを引くことができます。
事例2:トラフからずれて極大値が存在するケース
(2019.1.24 00UTC )
図3 トラフと渦度極大値の位置がずれているケース
正渦度の極大値「+172」(オレンジ色破線)の位置はトラフから南東にずれています。これは風の水平シアーも大きいので、トラフの位置からずれたところに極大値が算出されたものです。
「トラフは極大値(+172)に重ねて書くべきか?」と悩むところですが、ここは堂々と等高度線が凸状に張り出したところに引きましょう。
事例3: トラフがないのに極大値が存在するケース
(2019.2.13 00UTC)
図4 トラフがないのに渦度極大値が存在するケース
5,760mの正渦度域が帯状になっているところに、極大値「+100」(オレンジ色破線)があります。等高度線は直線状で、近傍にトラフは見当たりません。これは低気圧性の循環がなく、風の水平シアーが大きいケースです。
(疑問)トラフと気圧の谷
「トラフ」とは別に「気圧の谷」という言葉もあります。これらは同じものを指しますか?何か用語の使い分けがあるのでしょうか。
「トラフ」とは別に「気圧の谷」という言葉もあります。これらは同じものを指しますか?何か用語の使い分けがあるのでしょうか。
「気圧の谷」も「トラフ」も同じ概念です。気象庁の定義は次の通りです。
気圧の谷: 高圧部と高圧部の間の気圧の低いところ。
トラフ: 気圧の谷。主に高層天気図において用いる。
トラフ: 気圧の谷。主に高層天気図において用いる。
出典:気象庁「気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi1.html
「気圧の谷」は主に地上天気図で使われることが多い用語ですが、高層天気図で用いられることもあります。
それに対して、「トラフ」は高層天気図のみで用いられ、地上天気図で使われることはありません。したがって「気圧の谷」はトラフを含む、より汎用性の高い言葉と考えられます。
気象庁が使う用語には時々不可思議なものがあります。例えば、低気圧は「進む」で高気圧は「移動する」というように、主語によって述語を使い分けることがあります。
ところでトラフ解析は500hPa面で行うことが多いですよね。これは500hPa面は対流圏の中間にあたり収束・発散が小さく、渦度が保存されるとみなせるため追跡がしやすいからです。
しかしトラフ自体は500hPa面以外でも、300hPa、700hPa、850hPaの各面でも観察することができます。したがって、どの等圧面でトラフを解析するのかを言及するのが好ましいのです。
第51回の実技試験でも「500hPa面のトラフ」という表現が用いられています。解答でも500hPa面であることが自明の場合を除いては、(字数の余裕がある場合は)「500hPa面のトラフ」と書きましょう。
(疑問)なぜトラフ解析をするの?
トラフって分からないことだらけです。参考書を見ても、納得のいくようなトラフの見つけ方って説明されていません。
そもそもなんのためにトラフを解析するのですか?
トラフって分からないことだらけです。参考書を見ても、納得のいくようなトラフの見つけ方って説明されていません。
そもそもなんのためにトラフを解析するのですか?
かなり直球の質問です。端的に答えると、トラフはこれから天候が悪化する前兆になるからです。トラフの移動を追いかけると、どこの天気が崩れるかを予想することができます。
トラフの前面は発散場
温帯低気圧がどのように発達するかを考えてみましょう。下層と上層の条件がうまく一致すると、低気圧は発達します。下層の条件としては暖かくて湿った大気(暖湿気)が流入していること、温度移流があることが挙げられます。また、上層の条件としては発散場があることです。発散場は空気の存在が疎になるので、そこを埋め合わせるように下層から空気が上昇します(図5)。
図5 温帯低気圧の発達
発散場はトラフ(低気圧性循環)とリッジ(高気圧性循環)の間にできるので、トラフが接近してくるとその前面が発散場となります。
下層で低気圧が発達する条件が揃っても、上層に発散場が存在しないと不明瞭なままに終わってしまいます。逆に上層にトラフがあっても、下層に低気圧の卵がなければトラフはそのまま通過してしまいます。したがって、500hPaの解析図を見て片っ端からトラフに印をつけていくという作業は無駄です(そのような人を見たことがあります)。
さらにトラフを追いかけることで気温の変化の予想をすることもできます。
トラフは寒気をともなう
上層を吹く偏西風は緯度に平行ではなく南北に蛇行しています。南に蛇行した部分(形状)をトラフと称しているので、基本的にトラフは北側の寒気を伴っています(図6)。
図6 偏西風の波動(イメージ)
これも事例を見てみましょう。
(2019.1.15 12UTC)
図7 温度移流をともなうトラフ
トラフ後面では等温線を横切るように北よりの風が吹いています。これが寒気移流です(図7青色線)。また、トラフ前面では南よりの風が等温線を横切る風(暖気移流)が吹いています(図7橙色線)。
このように、トラフを見つけたら温度移流があるかを確認してみましょう。例えば、冬季の気温を予想するには500hPaの温度場で寒気がどこまで南下するかを見ることが大事です。しかしトラフが通過して寒気移流がなくなれば、寒気のピークは底を打ったと判断することができます。降っていた雪も終息に向かいます。
気象庁は季節予報を発表していますが、1ヶ月予報では偏西風の蛇行の予測を利用しています。例えば、偏西風が南へ蛇行すると予想される場合は、気圧の谷が通過する(=高度が下がる)ので低温と予測します。

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オリジナル教材 作成のススメ [試験対策]
自分の間違えやすい癖や苦手な分野は、自分が一番分かっています。したがって、それを押さえた教材があれば、学習効率は良くなりますよね。
そんな自分だけの参考書を作ってみましょう。私の学習でも、自分用に作った4種類のオリジナル教材がいちばん役に立ちました。
オリジナル教材とは?
既製の教材を繰り返し使っていると、どうしてもまどろっこしさを感じてきます。
自分がアンダーラインを引いたところとか書き込みをしたところが参考書のあちこちに散らばっているので、自分にとっての重要ポイントをまとめて見ることができません。
そこで復習の効率を上げる過程で、次の4通りの教材を自作しました。いずれも百均で購入したファイルに収納しました。
①サブノート
自分の理解が不足しているキーワードとその解説を分野別にまとめたもの。
②暗記物ファイル
定義や規則など、覚えなくてはならないものをまとめたもの。
③添削答案集
過去問題で間違ったところを答案用紙に赤ペンで修正したり、正しい考え方を青ペンで書き込んだもの。
④自分だけ問題集
等値線解析、トラフ解析、前線解析をまとめて練習できるように、解答用紙と正解をセットにしたもの。
私は全教科(一般・専門・実技)を一発受験したので、4つを同時並行で作成。①と②は主に一般と専門で活躍。実技では③と④が役に立ちました。
①サブノートを作る
過去問題を解いていると、自分の理解が足りていないテーマが分かってきます。
そのようなとき、解説書などを読んで分かった気にせず、その都度、自分だけの解説書を作っていきましす。これを繰り返していくと、溜め込んだ解説がいつの間にかサブノートになります。
私がサブノート作りで心がけたポイントは3つあります。
・その場で作る
・穴埋めにする
・手間をかけない
その場で作る
分からないことはその場で調べたほうが気持ちが良いですよね。調べた余勢をかって、サブノート作りまで一気にやってしまいましょう。
これは精神衛生上も良いです。参考書で調べて分かった気になっても、「本当にわかったんだろうか?」という疑念が残ります。サブノートに残しておけば、自分の弱点がそこにまとまっているわけなので、あとはそれを徹底的に見直せば弱点は潰していけるわけです。
「後でまとめて作ろう」と思ったら、そのチャンスは永遠にやってきません。面倒がらずに、その都度作っていきましょう。
ただし、学習当初からこれをやってしまうと、作成量が膨大になってしまいます。過去問を1〜2回程度こなして実技試験のおおよその全体像が頭に入り、自分の理解が偏っているのが見えてきた段階でやるのが効率的だと思います。
穴埋めにする
私はサブノートに書き込んだ解説文は、重要なキーワードを穴埋め形式にして、正解は欄外にまとめて書き込みました。
例えばこんな具合です。
寒冷低気圧
対流圏中上層の(①)が大きくなり、(②)の部分が(③)から切り離されて形成される。
対流圏の上層や中層では気圧が(④)くなっているが、地上では低気圧として明瞭には(⑤)ことが多い。
【正解】①:蛇行、②:気圧の谷、③:偏西風帯、④:低、⑤:認められない
対流圏中上層の(①)が大きくなり、(②)の部分が(③)から切り離されて形成される。
対流圏の上層や中層では気圧が(④)くなっているが、地上では低気圧として明瞭には(⑤)ことが多い。
【正解】①:蛇行、②:気圧の谷、③:偏西風帯、④:低、⑤:認められない
平文の解説だと流し読みをしてしまい、内容が頭に残りません。
穴埋め問題形式にすると「これはなんだったっけ?」と頭が回転して、内容が頭に定着します。
手間をかけない
サブノートを作るプロセスは、
用語や概念を選定する → 調べる → ノートを作成する
となります。
「用語や概念を選定する」のは、問題演習をしていたり参考書を読んでいたりしてつまずいた時です。その都度、参考書やネットなどで調べて、自分の納得できるレベルまでブレークダウンします。
それをまとめて解説文にしてノートに落とし込むのですが、「手間をかけない」というのはこの部分です。
ノートやルーズリーフに手書きして、図解を入れて色をつけて・・・、ということをやっている時間は勿体無いと思います。私はパソコンのワープロソフトで(無機質ですが)ひたすら打ち込みました。
綺麗なノートを作るのが目的ではないので、頭に定着すれば十分です。説明図が必要であれば、スキャナーで読み込ませます。
②暗記物ファイルを作る
一般・専門の学科では、それなりの暗記物があります。参考書を読んで一通り理解したつもりでも、細かい定義の類は頻繁に見返餌ないと忘却曲線に乗ってしまいます。
そこで試験の3週間ほど前に最終的に行き着いたのは、自分が毎日チェックしたい項目を抜き出して、1冊のファイルに収納することでした。これもできるだけ手間をかけないように、いろんな書物からコピーしてまとめました。
全てをクリアファイルに収納したら、最初のページに目次を作って入れておきます。この目次の順番で、毎朝記憶の確認を行います。
日々の確認事項(目次)
1. 警報の確認(7個)
大雨、洪水、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮
2. 特別警報の種類(6個)
大雨、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮
3. 注意報の確認(16個)
大雨、洪水、大雪、強風、風雪、波浪、高潮、濃霧、雷、乾燥、雪崩、融雪、着氷、着雪、低温、霜
4. 気象現象の確認(18個)
おたぼきと:大雨、短時間強雨、暴風、強風、突風
かおゆなち:雷、大雪、融雪、雪崩、着雪
ちたたてか:着氷、高波、高潮、低温、乾燥
きしひ:霧、霜、雹
5. 法規の罰則確認
懲役3年・罰金100万円:屋外設置気象観測機器破壊、警報標識のいたずら
罰金50万円 :かき、よき、もは、きぎ、ぎて、けせ、むし
罰金30万円 :とた、ぎか、けき
罰金20万円 :きと
6. 現在天気記号
7. 過去天気記号
8. 天気の種類(15個)
快晴、晴、薄曇、曇、煙霧、砂塵あらし、地ふぶき、霧、霧雨、雨、みぞれ、雪、あられ、ひょう、雷
9.大気擾乱の分類
10.地上プロット形式
11.雲の記号
12.雨の強さ
13.風の強さ
14.海上警報
15.台風の強さ
16.台風の大きさ
17.台風の中心位置の角度
18.予報精度の評価
19.覚えておきたい数値
20.各種公式
21.エマグラム
1. 警報の確認(7個)
大雨、洪水、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮
2. 特別警報の種類(6個)
大雨、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮
3. 注意報の確認(16個)
大雨、洪水、大雪、強風、風雪、波浪、高潮、濃霧、雷、乾燥、雪崩、融雪、着氷、着雪、低温、霜
4. 気象現象の確認(18個)
おたぼきと:大雨、短時間強雨、暴風、強風、突風
かおゆなち:雷、大雪、融雪、雪崩、着雪
ちたたてか:着氷、高波、高潮、低温、乾燥
きしひ:霧、霜、雹
5. 法規の罰則確認
懲役3年・罰金100万円:屋外設置気象観測機器破壊、警報標識のいたずら
罰金50万円 :かき、よき、もは、きぎ、ぎて、けせ、むし
罰金30万円 :とた、ぎか、けき
罰金20万円 :きと
6. 現在天気記号
7. 過去天気記号
8. 天気の種類(15個)
快晴、晴、薄曇、曇、煙霧、砂塵あらし、地ふぶき、霧、霧雨、雨、みぞれ、雪、あられ、ひょう、雷
9.大気擾乱の分類
10.地上プロット形式
11.雲の記号
12.雨の強さ
13.風の強さ
14.海上警報
15.台風の強さ
16.台風の大きさ
17.台風の中心位置の角度
18.予報精度の評価
19.覚えておきたい数値
20.各種公式
21.エマグラム
ファイルには目次に続き、各項の要点を参考書からコピーしたり手書きで作ったメモを挟みました。
③添削答案集を作る
同じ過去問を何度やっても、同じところで間違えてしまうという経験はありませんか?
過去5回分の過去問を繰り返すとすると、1回あたり2問ありますから、10問を解くことになります。それだけの問題量をこなしてきて、2巡目に入って再度同じような間違えをすると情けなくなるし、間違えをなくすまでにあと何回練習しなければいけないの?と不安になります。
この収束時間を短縮できるのが「添削答案集」です(冒頭の写真)。
過去問題を解くときは、必ず所定の答案用紙に書き込みます。通常の問題集やサイトには白紙の答案用紙が用意されています。
答え合わせをする際には、自分が通信添削の指導員になったつもりで、赤ペンを入れていきます。私は正解の他にも、自分が間違えるクセ(例えば風向を読み間違えやすいなど)や簡単な解説を書き込みました。
これをファイリングしていくと、自分の弱点集が出来上がります。過去問を繰り返す時間がなくても、この答案集を見直すことで、問題演習と類似の効果が期待できます。何よりも自分が苦手な部分がまとまっているので、これさえ頭に入れれば良いというのは安心材料です。
④自分だけの問題集を作る
前線解析、等値線(等温線や等圧線など)解析、トラフ解析は考え込むと時間がどんどん経ってしまいます。本番では試験時間があっという間に足りなくなってしまいます。
そこで解析問題についてはある程度条件反射的に、瞬間的に対応できる慣れを養っておくことが必要です。
良い材料になりそうなネタを見つけたら、それを何枚もコピーしてファイリングしておきましょう。私は試験直前の数週間は毎日、この練習をしていました。
オリジナル教材の副次効果
過去問を解いていると自分の課題が見えてくるので、おそらく試験日の直前までオリジナル教材を作り続けることになると思います。
大事なことは毎日、自分の作ったこのファイルに触れることです。ファイルを開いて頭を活性化させることをルーティンにできれば、このファイルに触ることが精神安定剤になってくれます。
試験前日に何をしたら良いのか?
いつも通りにオリジナル教材をこなせば良いのです。
試験日には何を持っていけば良いのか?
自分で作った薄っぺらい4冊のファイルを持ち込みましょう。
分厚い参考書を持ち込む必要はありません。オリジナル教材の中身は毎日見て確認してきたものですから、試験会場であえて開く必要もありません。すでに自分の身体の一部になっているのですから。大げさに言えば自分のあせと努力の結晶です。
「自分はこれだけやってきたのだから大丈夫!」と自信を持って試験に臨むことができます。
教材作成を今日から始めてみませんか?

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天気図の解析練習②(実況図の読み方) [知識]
高層天気図の読み方の基本をまとめます。分量が多いので、実況図(解析図を含む)と予想図に分け、今回は実況図についてです。
試験では高層天気図の実況図が出題されることは多くないので、過去問ばかりに取り組んでいるとあまり目にすることはないでしょう。
実況図を解析することは天気図解析の基本ですので、ぜひ毎日見るように心がけたいものです。
AUPQ35
1枚が2等分され、上半分に300hPa天気図、下半分に500hPa天気図が掲載されています。
図の下に天気図の名称(AUPQ35)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。
UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST
AUPQ78
1枚が2等分され、上半分に700hPa天気図、下半分に850hPa天気図が掲載されています。
図の下に天気図の名称(AUPQ78)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。
UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST
以下、個別の天気図について記します。
【主な用途】
300hPa強風軸を確認するのに用います。強風軸の位置が分かると、前線との対応関係を見たり、低気圧の閉塞時期を判断することができます(500hPaの実況図でも可能)。
強風軸解析はこちらをご覧ください。
【留意点】
試験での出題頻度は低いですが、気象解析では高層からスタートして徐々に下層まで見ていくのが定石です。日頃の練習では必ず300hPaからスタートしましょう。
強風軸の位置は季節によって異なります。真夏だと北海道よりも北に、真冬だと九州のあたりを吹いています。
【凡例】
【主な用途と着目点】
①500hPa強風軸の解析
500hPa強風軸は、温帯低気圧の閉塞の具合(地上低気圧の中心が強風軸より北側にあれば閉塞)を見るのに使われます。
500hPa強風軸は300hPa強風軸の南側に位置するので、まず300hPa天気図で強風軸を見つけてから500hPa天気図を見るのが良いと思います。
それでも見つけにくい場合は、「500hPa高度・渦度解析図」(後述)や水蒸気画像も使うと見つけやすくなります。
②500hPaトラフ、リッジの解析
等高度線が等高度線の高い方に凸になっているところがトラフ、逆に等高度線の低い方に凸になっているところがリッジです。
トラフの探し方は私自身、まだ十分に習得できていませんが、天気図上で片っ端からトラフをマーキングしていくことも意味がないと思います。
実況解析の練習では、地上天気図で発達中の低気圧があれば、それに対応するトラフを500hPa天気図で探す(地上低気圧の西側にある)ことを繰り返していけば力がついてくると思います。
③寒気・暖気の流入
冬季であれば寒気がどこまで南下しているかを見ることで、大気の安定度などを判断できます。次の④とも重なりますが、冬季には5,400m線に注目します。これが南岸沿いまで南下していれば、強い寒気が入ることになります。
夏季であれば太平洋高気圧の目安となる5,880m線に注目し、太平洋高気圧の勢力を見ることができます。
④特定高度線の確認
500hPa面では特定高度線と呼ばれる3本の等高線を追跡することができます。これにより偏西風の蛇行の程度や、冬の寒気や夏の暖気の状況を推測することができます。
【凡例】
【主な用途と着目点】
①湿り域の確認
中層の湿り域(T-Td<3)を確認します。この湿り域はドットで表示されています。
確認できたらレーダーエコーや衛星画像の雲域や、地上天気図の前線との対応を見ます。このように、ある現象を複数の気象要素や天気図で何重にも確認をとる作業が大切です。
【留意点】
試験での出題頻度は低いですが、日頃の練習では700hPa天気図も見る癖をつけましょう。
【凡例】
【主な用途と着目点】
①湿り域の確認
下層の湿り域(T-Td<3)を確認します。確認できたら700hPaの湿り域、レーダーエコーや衛星画像の雲域、地上天気図の前線との対応を見ます。
700hPaで湿り域がなければ、それより下層で雲が発生していると判断できます。
②等温線の確認
等温線の形状を確認します。北側に盛り上がっている、等温線が集中しているなどは、顕著現象につながる可能性があります。他の気象要素や天気図との関連性を見ながら、さらに分析します。
③温度場の確認
850hPaで−6℃以下だと雪の目安だと言われますが、−9℃であれば確実に雪になります。
【留意点】
等温線の確認は「850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図」(AXFE578)の方が使いやすいです。
等温線が実線ではっきり書かれていること、低気圧の解析に必要な温度移流や鉛直流が記入されていること、また等温線の間隔が通年で3℃単位で記入されているためです。
【凡例】
850hPa天気図の等温線は暖候期(4〜11月)は3℃単位、寒候期(12〜3月)は6℃単位で記入されます。間違えやすいので、等温線が何℃おきに引かれているのか、併記された温度表示で確認する習慣をつけると良いです。
AUPQの実況図を見るときの共通の留意点について記しておきます。
1500m超、3000m超の領域表示
AUPQでは標高が1,500m以上のところを縦線(図では緑色)、3,000m以上のところを格子(図では茶色)で表示されています。
これが問題になるのはチベット高原です。チベット高原は平均高度が4千メートルを超します。当然、850hPaや700hPaの天気図では風は観測されません(地中になってしまう?)。
上図は700hPa天気図ですが、 3,000m超の領域(茶色)では風が観測値が記入されていないのが確認できます。
500hPa天気図では、この網かけ領域から出てきた風については、利用上の大きな問題はないそうです。
チベット付近の地形がどうなっているのか、Google Earthで一回確認しておくと関心が湧きます。Google Earthだと実際の標高がメートル表示されるので、Googleマップより良いと思います。
観測データをもとに渦度、鉛直p速度(上昇流・下降流)などを数値解析した天気図です。
学科の専門知識で数値予報の流れを学ばれたと思います。AXFE578は、
「観測データ収集 → 客観解析 → 初期値化 → 予想値」
という一連の流れの中で、「初期値化」により作成された天気図です。言い換えると、数値予報の計算をするために、観測データに基づいて作成された初期値であり、今の状態を表しています。
初期値なので「T=00」と記載されています。
AXFE578
AXFE578は1枚が2等分され、上半分に500hPa高度・渦度解析図、下半分に850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図が掲載されています。
【主な用途と着目点】
①トラフの解析
トラフの前面は発散場になっているため、上昇流による雲が発生することがあります。これから日本に接近してくるトラフ、中でも今後深まりそうなトラフを監視します。
トラフを見つけるには正渦度極大値が目安になりますが、曲率の大きいところからは外れていることも多いです。また風速により正渦度が発生することもあるので、あくまでも目安です。
②正渦度域の確認
正渦度域の形状やどこに広がっているかに注目します。例えば梅雨の時期には、前線に沿って帯状の正渦度域がのびることがあります。
これがいつも役に立つわけではありませんが、このような目線で天気図を見ることが大切です(と教わりました)。
③渦度ゼロ線の確認
正渦度域と負渦度域の境界は「渦度ゼロ線」と言い、強風軸になっているものがあります。
渦度ゼロ線はたくさん解析されますが、数値解析による結果なので細かいものにはこだわらず、大きな目線で組織的である程度の規模があるものを見ます。
ジェット気流(偏西風)による強風軸は地衡風なので、概ね等高度線に沿ったものになります。
【凡例】
【図の概要】
850hPaの気温(等温線)と風(風向、風速)と、700hPaの鉛直流(上昇流、下降流)が1枚の図に重ねて書かれています。
この図は低気圧の発達を見るのに最も重要な図です。
【主な用途と着目点】
①等温線の形状の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で等温線が集中し、低気圧の前面で北に盛り上がっていることは低気圧が発達する条件のひとつです。この形状は温度移流によりもたらされている可能性があるので、次のステップ②に進みます。
なお、温度線が1本だけ北に盛り上がっていることもあります。すべてのケースでその原因を特定することは困難ですが、なぜそうなっているのか色々と推測してみることは良い練習になります。
②温度移流の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で低気圧の前面に暖気移流、後面に寒気移流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。
強い風が集中している等温線と鋭い角度(90度近く)で交わっていれば、「強い暖気(寒気)移流がある」ことになります。
③鉛直流(上昇流)の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面でその前面で上昇流があり後面で下降流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。湿った空気が上昇を続ければ対流性雲を発生し、天気は崩れます。
【凡例】
FXJP854は「850hPa風・相当温位の予想図」です。予想図なので、本来実況図の分類には入りません。
しかし、天気の悪化要因である暖湿気の流入を見るのに850hPa風・相当温位の天気図は欠かせません。そこで12時間前の「850hPa風・相当温位の12時間予想図(T=12)」を実況図に準じて取り扱います。
【主な用途と着目点】
①相当温位線の集中帯
西日本の梅雨は、相当温位線の集中帯の南端に前線が表現されます。
②暖湿気の流入
高い相当温位線を横切って風が吹くと、暖湿気が流入します。暖湿気が何Kなのかは季節により変化します。夏季には345K、秋季は336Kが目安だと思います。
③低気圧性循環・高気圧性循環の確認
地上低気圧の上空で低気圧性循環(左回りの風)や高気圧の上空で高気圧性循環(右回りの風)があれば、それだけしっかりとした低気圧、高気圧であると言えます。

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試験では高層天気図の実況図が出題されることは多くないので、過去問ばかりに取り組んでいるとあまり目にすることはないでしょう。
実況図を解析することは天気図解析の基本ですので、ぜひ毎日見るように心がけたいものです。
AUPQ35, 78
図の構成
AUPQ35
1枚が2等分され、上半分に300hPa天気図、下半分に500hPa天気図が掲載されています。
図の下に天気図の名称(AUPQ35)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。
UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST
AUPQ78
1枚が2等分され、上半分に700hPa天気図、下半分に850hPa天気図が掲載されています。
図の下に天気図の名称(AUPQ78)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。
UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST
以下、個別の天気図について記します。
300hPa天気図
【主な用途】
300hPa強風軸を確認するのに用います。強風軸の位置が分かると、前線との対応関係を見たり、低気圧の閉塞時期を判断することができます(500hPaの実況図でも可能)。
強風軸解析はこちらをご覧ください。
【留意点】
試験での出題頻度は低いですが、気象解析では高層からスタートして徐々に下層まで見ていくのが定石です。日頃の練習では必ず300hPaからスタートしましょう。
強風軸の位置は季節によって異なります。真夏だと北海道よりも北に、真冬だと九州のあたりを吹いています。
【凡例】
①等高度線 | 実線で120mごとに表示 |
---|---|
②等風速線 | 破線で20ktごとに表示 |
③Cマーク | 寒気の中心を示す |
④Wマーク | 暖気の中心を示す |
⑤Lマーク | 低気圧の中心を示す |
⑥Hマーク | 高気圧の中心を示す |
⑦記載の気象要素 | 「300hPaの高度、温度、等風速」を記載 |
500hPa天気図
【主な用途と着目点】
①500hPa強風軸の解析
500hPa強風軸は、温帯低気圧の閉塞の具合(地上低気圧の中心が強風軸より北側にあれば閉塞)を見るのに使われます。
500hPa強風軸は300hPa強風軸の南側に位置するので、まず300hPa天気図で強風軸を見つけてから500hPa天気図を見るのが良いと思います。
それでも見つけにくい場合は、「500hPa高度・渦度解析図」(後述)や水蒸気画像も使うと見つけやすくなります。
②500hPaトラフ、リッジの解析
等高度線が等高度線の高い方に凸になっているところがトラフ、逆に等高度線の低い方に凸になっているところがリッジです。
トラフの探し方は私自身、まだ十分に習得できていませんが、天気図上で片っ端からトラフをマーキングしていくことも意味がないと思います。
実況解析の練習では、地上天気図で発達中の低気圧があれば、それに対応するトラフを500hPa天気図で探す(地上低気圧の西側にある)ことを繰り返していけば力がついてくると思います。
③寒気・暖気の流入
冬季であれば寒気がどこまで南下しているかを見ることで、大気の安定度などを判断できます。次の④とも重なりますが、冬季には5,400m線に注目します。これが南岸沿いまで南下していれば、強い寒気が入ることになります。
夏季であれば太平洋高気圧の目安となる5,880m線に注目し、太平洋高気圧の勢力を見ることができます。
④特定高度線の確認
500hPa面では特定高度線と呼ばれる3本の等高線を追跡することができます。これにより偏西風の蛇行の程度や、冬の寒気や夏の暖気の状況を推測することができます。
5400m線(−30℃の等温線におおむね対応する)
冬の寒気のしきい値
5700m線(偏西風帯の中心に対応する)
大気の流れが蛇行しているか東西流か
5880m線(亜熱帯高気圧の外周に相当する)
太平洋高気圧の勢力
冬の寒気のしきい値
5700m線(偏西風帯の中心に対応する)
大気の流れが蛇行しているか東西流か
5880m線(亜熱帯高気圧の外周に相当する)
太平洋高気圧の勢力
【凡例】
①等高度線 | 実線で60mごとに表示 |
---|---|
②等温線 | 破線で3℃ごと(5〜10月)、もしくは6℃ごと(11〜4月)に表示 |
③Cマーク | 寒気の中心を示す |
④Wマーク | 暖気の中心を示す |
⑤Lマーク | 低気圧の中心を示す |
⑥Hマーク | 高気圧の中心を示す |
⑦記載の気象要素 | 「500hPaの高度、温度」を記載 |
700hPa天気図
【主な用途と着目点】
①湿り域の確認
中層の湿り域(T-Td<3)を確認します。この湿り域はドットで表示されています。
確認できたらレーダーエコーや衛星画像の雲域や、地上天気図の前線との対応を見ます。このように、ある現象を複数の気象要素や天気図で何重にも確認をとる作業が大切です。
【留意点】
試験での出題頻度は低いですが、日頃の練習では700hPa天気図も見る癖をつけましょう。
【凡例】
①等高度線 | 実線で60mごとに表示 |
---|---|
②等温線 | 破線で6℃ごとに表示 |
③Cマーク | 寒気の中心を示す |
④Wマーク | 暖気の中心を示す |
⑤Lマーク | 低気圧の中心を示す(図には記載なし) |
⑥Hマーク | 高気圧の中心を示す |
⑦記載の気象要素 | 「700hPaの高度、温度、湿り域」を記載 |
850hPa天気図
【主な用途と着目点】
①湿り域の確認
下層の湿り域(T-Td<3)を確認します。確認できたら700hPaの湿り域、レーダーエコーや衛星画像の雲域、地上天気図の前線との対応を見ます。
700hPaで湿り域がなければ、それより下層で雲が発生していると判断できます。
②等温線の確認
等温線の形状を確認します。北側に盛り上がっている、等温線が集中しているなどは、顕著現象につながる可能性があります。他の気象要素や天気図との関連性を見ながら、さらに分析します。
③温度場の確認
850hPaで−6℃以下だと雪の目安だと言われますが、−9℃であれば確実に雪になります。
【留意点】
等温線の確認は「850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図」(AXFE578)の方が使いやすいです。
等温線が実線ではっきり書かれていること、低気圧の解析に必要な温度移流や鉛直流が記入されていること、また等温線の間隔が通年で3℃単位で記入されているためです。
【凡例】
①等高度線 | 実線で60mごとに表示 |
---|---|
②等温線 | 破線で3℃ごと(4〜11月)、もしくは6℃ごと(12〜3月)に表示 |
③Cマーク | 寒気の中心を示す |
④Wマーク | 暖気の中心を示す(図には記載なし) |
⑤Lマーク | 低気圧の中心を示す |
⑥Hマーク | 高気圧の中心を示す |
⑦記載の気象要素 | 「850hPaの高度、温度、湿り域」を記載 |
850hPa天気図の等温線は暖候期(4〜11月)は3℃単位、寒候期(12〜3月)は6℃単位で記入されます。間違えやすいので、等温線が何℃おきに引かれているのか、併記された温度表示で確認する習慣をつけると良いです。
AUPQ利用上の留意点
AUPQの実況図を見るときの共通の留意点について記しておきます。
1500m超、3000m超の領域表示
AUPQでは標高が1,500m以上のところを縦線(図では緑色)、3,000m以上のところを格子(図では茶色)で表示されています。
これが問題になるのはチベット高原です。チベット高原は平均高度が4千メートルを超します。当然、850hPaや700hPaの天気図では風は観測されません(地中になってしまう?)。
上図は700hPa天気図ですが、 3,000m超の領域(茶色)では風が観測値が記入されていないのが確認できます。
500hPa天気図では、この網かけ領域から出てきた風については、利用上の大きな問題はないそうです。
チベット付近の地形がどうなっているのか、Google Earthで一回確認しておくと関心が湧きます。Google Earthだと実際の標高がメートル表示されるので、Googleマップより良いと思います。
AXFE578
観測データをもとに渦度、鉛直p速度(上昇流・下降流)などを数値解析した天気図です。
学科の専門知識で数値予報の流れを学ばれたと思います。AXFE578は、
「観測データ収集 → 客観解析 → 初期値化 → 予想値」
という一連の流れの中で、「初期値化」により作成された天気図です。言い換えると、数値予報の計算をするために、観測データに基づいて作成された初期値であり、今の状態を表しています。
初期値なので「T=00」と記載されています。
図の構成
AXFE578
AXFE578は1枚が2等分され、上半分に500hPa高度・渦度解析図、下半分に850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図が掲載されています。
500hPa高度・渦度解析図
【主な用途と着目点】
①トラフの解析
トラフの前面は発散場になっているため、上昇流による雲が発生することがあります。これから日本に接近してくるトラフ、中でも今後深まりそうなトラフを監視します。
トラフを見つけるには正渦度極大値が目安になりますが、曲率の大きいところからは外れていることも多いです。また風速により正渦度が発生することもあるので、あくまでも目安です。
②正渦度域の確認
正渦度域の形状やどこに広がっているかに注目します。例えば梅雨の時期には、前線に沿って帯状の正渦度域がのびることがあります。
これがいつも役に立つわけではありませんが、このような目線で天気図を見ることが大切です(と教わりました)。
③渦度ゼロ線の確認
正渦度域と負渦度域の境界は「渦度ゼロ線」と言い、強風軸になっているものがあります。
渦度ゼロ線はたくさん解析されますが、数値解析による結果なので細かいものにはこだわらず、大きな目線で組織的である程度の規模があるものを見ます。
ジェット気流(偏西風)による強風軸は地衡風なので、概ね等高度線に沿ったものになります。
【凡例】
①等高度線 |
実線で60mごとに表示 太実線で5100m、5400m、 5700mを表示 |
---|---|
②正渦度極大値 | 正渦度の極大値 |
③正渦度域 | 縦縞で表示 |
④Hマーク | 高気圧の中心 |
⑤Lマーク | 低気圧の中心 |
⑥渦度ゼロ線 | 正渦度域と負渦度域の境界を実線で表示 |
⑦等渦度線 | 破線で40X10^-6(1/s)ごとに表示 |
850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図
【図の概要】
850hPaの気温(等温線)と風(風向、風速)と、700hPaの鉛直流(上昇流、下降流)が1枚の図に重ねて書かれています。
この図は低気圧の発達を見るのに最も重要な図です。
【主な用途と着目点】
①等温線の形状の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で等温線が集中し、低気圧の前面で北に盛り上がっていることは低気圧が発達する条件のひとつです。この形状は温度移流によりもたらされている可能性があるので、次のステップ②に進みます。
なお、温度線が1本だけ北に盛り上がっていることもあります。すべてのケースでその原因を特定することは困難ですが、なぜそうなっているのか色々と推測してみることは良い練習になります。
②温度移流の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で低気圧の前面に暖気移流、後面に寒気移流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。
強い風が集中している等温線と鋭い角度(90度近く)で交わっていれば、「強い暖気(寒気)移流がある」ことになります。
③鉛直流(上昇流)の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面でその前面で上昇流があり後面で下降流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。湿った空気が上昇を続ければ対流性雲を発生し、天気は崩れます。
【凡例】
①等温線 | 実線で3℃ごとに表示 |
---|---|
②風向・風速 | 風速の単位は(m/s) |
③Cマーク | 寒気の中心を示す |
④Wマーク | 暖気の中心を示す |
⑤上昇流域 | 上昇流域を縦線で表示 |
⑥鉛直p速度 | 鉛直p速度を数値表示 |
プラスは上昇流、マイナスは下降流 |
FXJP854
FXJP854は「850hPa風・相当温位の予想図」です。予想図なので、本来実況図の分類には入りません。
しかし、天気の悪化要因である暖湿気の流入を見るのに850hPa風・相当温位の天気図は欠かせません。そこで12時間前の「850hPa風・相当温位の12時間予想図(T=12)」を実況図に準じて取り扱います。
【主な用途と着目点】
①相当温位線の集中帯
西日本の梅雨は、相当温位線の集中帯の南端に前線が表現されます。
②暖湿気の流入
高い相当温位線を横切って風が吹くと、暖湿気が流入します。暖湿気が何Kなのかは季節により変化します。夏季には345K、秋季は336Kが目安だと思います。
③低気圧性循環・高気圧性循環の確認
地上低気圧の上空で低気圧性循環(左回りの風)や高気圧の上空で高気圧性循環(右回りの風)があれば、それだけしっかりとした低気圧、高気圧であると言えます。

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天気図の解析練習①(準備編) [知識]
3回に分けて天気図の見方をまとめてみたいと思います。
1回目は天気図を解析する準備として、天気図の種類や入手法などについてです。
私は山登りをするので、私が天気図を解析する理由は、これからの天気・天候の変化を見るためです。
山に行く直前だけ天気図を見るのではなく、解析を普段から継続することで作業に慣れるだけでなく様々な勘が養われます。
気象は連続して変化していくので、この先の予測資料だけを見るのではなく数日前からの変化を追跡することも大切だと思います。
例えば、一昨日はバイカル湖の南にあったトラフが沿海州に南東進するというプロセスを追跡することで、トラフの盛衰を見ることができます。これでトラフが深まるということが分かれば、低気圧の発達を判断する材料の一つになります。これは日々の天気図の変化を追うことで可能になります。
また、天気を予測することが最終目標だとしても、基本は実況解析(現在の天気を理解すること)です。
実況の解析には基本的な作業が含まれるし、そもそも実況は資料は種類も多いからです。
レーダーエコーや気象衛星画像を見ると、「天気はどうなる?」という問いに対する「答え」が分かります。実況解析で、なぜこの答えになったのかを考えることが、明日以降の予測をする実力を養ってくれます。
掲載範囲や予測時間に応じて凡そ90種類の天気図があります。
天気図は大きく実況図(解析図を含む)と予測図に分類できます。850hPaより上空の天気図を高層天気図と呼ぶこともあります。
気象予報士の実技試験でよく出題される天気図は次の通りです。
ASAS(アジア太平洋域実況天気図)
実況の地上天気図です。テレビや新聞でおなじみのSPAS(速報天気図)は日本付近中心の天気図で、試験では出題されません。
AUPQ35(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図)
・1枚に300hPa面と500hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AUPQ78(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図)
・1枚に700hPa面と850hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AXFE578(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図)
・1枚に500hPaの高度・渦度と、850hPaの温度・風と700hPaの上昇流が掲載されている解析図です。
FSAS24/48(アジア太平洋域予想天気図)
・地上天気図の予想図です。
・24時間先(FSAS24)と48時間先(FSAS48)があります。
FXFE502/504/507
・1枚に500hPa高度・渦度の予想図と、地上気圧・降水量・風の予想図が掲載されています。
・502には12時間と24時間の予想図、504には36時間と48時間の予想図、507には72時間予想が掲載されています。
FXFE5782/5784/577
・500hPa気温、700hPa湿数の予想図と、850hPa気温・風、700hPa鉛直流の予想図が掲載されています。
・5782には12時間と24時間の予想図、5784には36時間と48時間の予想図、577には72時間予想が掲載されています。
FXJP854
・850hPaの相当温位・風の予想図が掲載されています。
・1枚に12時間、24時間、36時間、48時間の予想図が掲載されています。
以上の天気図の名称を覚える必要はまったくありません。
どの気象要素を表現した天気図があるのかを頭に入れておくことが大切です。これは暗記するのではなく、日々の解析を繰り返すことで自然と身についていきます。
天気図は決まった時刻(観測時刻)のものが発表されますが、気象庁での解析時間を要するために実際に配信されるのはこれよりも数時間後になります。
ASAS
・観測時刻は3、9、15、21時の4回
・発表時刻は、観測時刻の約2時間半後
高層天気図
・観測時刻は9、21時の2回
・発表時刻は、観測時刻の約3時間半後
高層天気図は世界で同一時刻に観測されています。そのため、通常はUTCという協定世界時で表記され、00UTC(通称マルマルUTC)と12UTC(通称イチニーUTC)に観測することになっています。
UTCの時刻に+9すると日本の時刻になります。
例)UTC 1月9日00UTC →日本 1月9日9時
天気資料をダウンロードして入手するには、無料サイトと有料サイトがあります。
前項であげた天気図であれば、無料サイトから入手可能です。過去の天気図や、より専門的な予測資料の入手には有料サイトが便利です。
私が日常的に使っているサイトをあげておきます。
【北海道放送(HBC)】
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html
最新の天気資料が掲載されているので、日々の解析に利用しています。
過去資料も2週間分保存されています。普段の解析練習をするには、本サイトだけで十分です。
【Sunny Spot】
https://www.sunny-spot.net/chart/chart_archive.html?area=0
過去2年分の天気資料が掲載されているので、少し前の天気図を見たいときに利用しています。
【日本気象】
https://n-kishou.com/ee/exp/exp.html
気象予報士になってからは、解説資料(短期予報解説資料、週間予報解説資料)や週間天気図を見るのに利用しています。
【気象庁】
レーダーエコーと衛星画像をダウンロードするのに使っています。
いずれも直近の5日分が保存されています。5日を経過すると削除されてしまうので、高層天気図の発表時刻に合わせた9時、もしくは21時の画像を保存しています。
レーダーエコー
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/imgs/radar/000/ファイル名
赤外画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/ファイル名
可視画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/visible/1/ファイル名
水蒸気画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/ファイル名
ファイル名は
「西暦」+「月」+「日」+「時刻(24時間)」+「-00.png」です。
例えば2019年1月9日9時ならば「201901090900-00.png」となります。
【ウェザーニュース Labs Channel】
http://labs.weathernews.jp/data.html
有料サイト(月額324円)です。2000年以降のあらゆる天気資料に加え、GSM、MSMのGPVも入手可能です。
天気図を見るたびに印刷していると、紙とトナーをどんどん消費していきます。エコの観点からも、印刷は必要最小限に抑制すべきです。
「必要最小限な天気図」とは、紙に出力しないと利用しづらいものです。私はAUPQ35(強風軸を色ぬりするため)ぐらいで良いと思いますが、AXFE578(500hPaトラフを記入)やFXJP(風の循環や暖湿気の流入を記入)があっても良いでしょう。
印刷しない天気図はモニターで閲覧します。印刷では読み取りにくい細かい表示も、拡大して見ることもすぐにできます。
スマホで学習されている方は、21.5インチ程度のモニターの購入をお勧めします。
天気図の解析を始める前に知っておくべきことをまとめました。
2回目は「天気図の読み方」、3回目は「天気図解析の実際」をまとめる予定です。
私自身まだ修行を始めて間もないので、誤りなどに気付かれた方はご指摘いただけると幸いです。

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1回目は天気図を解析する準備として、天気図の種類や入手法などについてです。
私は山登りをするので、私が天気図を解析する理由は、これからの天気・天候の変化を見るためです。
山に行く直前だけ天気図を見るのではなく、解析を普段から継続することで作業に慣れるだけでなく様々な勘が養われます。
気象は連続して変化していくので、この先の予測資料だけを見るのではなく数日前からの変化を追跡することも大切だと思います。
例えば、一昨日はバイカル湖の南にあったトラフが沿海州に南東進するというプロセスを追跡することで、トラフの盛衰を見ることができます。これでトラフが深まるということが分かれば、低気圧の発達を判断する材料の一つになります。これは日々の天気図の変化を追うことで可能になります。
また、天気を予測することが最終目標だとしても、基本は実況解析(現在の天気を理解すること)です。
実況の解析には基本的な作業が含まれるし、そもそも実況は資料は種類も多いからです。
レーダーエコーや気象衛星画像を見ると、「天気はどうなる?」という問いに対する「答え」が分かります。実況解析で、なぜこの答えになったのかを考えることが、明日以降の予測をする実力を養ってくれます。
天気図の種類
掲載範囲や予測時間に応じて凡そ90種類の天気図があります。
天気図は大きく実況図(解析図を含む)と予測図に分類できます。850hPaより上空の天気図を高層天気図と呼ぶこともあります。
気象予報士の実技試験でよく出題される天気図は次の通りです。
実況図
ASAS(アジア太平洋域実況天気図)
実況の地上天気図です。テレビや新聞でおなじみのSPAS(速報天気図)は日本付近中心の天気図で、試験では出題されません。
AUPQ35(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図)
・1枚に300hPa面と500hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AUPQ78(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図)
・1枚に700hPa面と850hPa面の天気図が掲載されている実況図です。
AXFE578(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図)
・1枚に500hPaの高度・渦度と、850hPaの温度・風と700hPaの上昇流が掲載されている解析図です。
予測図
FSAS24/48(アジア太平洋域予想天気図)
・地上天気図の予想図です。
・24時間先(FSAS24)と48時間先(FSAS48)があります。
FXFE502/504/507
・1枚に500hPa高度・渦度の予想図と、地上気圧・降水量・風の予想図が掲載されています。
・502には12時間と24時間の予想図、504には36時間と48時間の予想図、507には72時間予想が掲載されています。
FXFE5782/5784/577
・500hPa気温、700hPa湿数の予想図と、850hPa気温・風、700hPa鉛直流の予想図が掲載されています。
・5782には12時間と24時間の予想図、5784には36時間と48時間の予想図、577には72時間予想が掲載されています。
FXJP854
・850hPaの相当温位・風の予想図が掲載されています。
・1枚に12時間、24時間、36時間、48時間の予想図が掲載されています。
以上の天気図の名称を覚える必要はまったくありません。
どの気象要素を表現した天気図があるのかを頭に入れておくことが大切です。これは暗記するのではなく、日々の解析を繰り返すことで自然と身についていきます。
天気図の発表時刻
天気図は決まった時刻(観測時刻)のものが発表されますが、気象庁での解析時間を要するために実際に配信されるのはこれよりも数時間後になります。
ASAS
・観測時刻は3、9、15、21時の4回
・発表時刻は、観測時刻の約2時間半後
高層天気図
・観測時刻は9、21時の2回
・発表時刻は、観測時刻の約3時間半後
高層天気図は世界で同一時刻に観測されています。そのため、通常はUTCという協定世界時で表記され、00UTC(通称マルマルUTC)と12UTC(通称イチニーUTC)に観測することになっています。
UTCの時刻に+9すると日本の時刻になります。
例)UTC 1月9日00UTC →日本 1月9日9時
天気資料の入手方法
天気資料をダウンロードして入手するには、無料サイトと有料サイトがあります。
前項であげた天気図であれば、無料サイトから入手可能です。過去の天気図や、より専門的な予測資料の入手には有料サイトが便利です。
私が日常的に使っているサイトをあげておきます。
【北海道放送(HBC)】
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html
最新の天気資料が掲載されているので、日々の解析に利用しています。
過去資料も2週間分保存されています。普段の解析練習をするには、本サイトだけで十分です。
【Sunny Spot】
https://www.sunny-spot.net/chart/chart_archive.html?area=0
過去2年分の天気資料が掲載されているので、少し前の天気図を見たいときに利用しています。
【日本気象】
https://n-kishou.com/ee/exp/exp.html
気象予報士になってからは、解説資料(短期予報解説資料、週間予報解説資料)や週間天気図を見るのに利用しています。
【気象庁】
レーダーエコーと衛星画像をダウンロードするのに使っています。
いずれも直近の5日分が保存されています。5日を経過すると削除されてしまうので、高層天気図の発表時刻に合わせた9時、もしくは21時の画像を保存しています。
レーダーエコー
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/imgs/radar/000/ファイル名
赤外画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/ファイル名
可視画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/visible/1/ファイル名
水蒸気画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/ファイル名
ファイル名は
「西暦」+「月」+「日」+「時刻(24時間)」+「-00.png」です。
例えば2019年1月9日9時ならば「201901090900-00.png」となります。
【ウェザーニュース Labs Channel】
http://labs.weathernews.jp/data.html
有料サイト(月額324円)です。2000年以降のあらゆる天気資料に加え、GSM、MSMのGPVも入手可能です。
天気図は印刷するべきか?
天気図を見るたびに印刷していると、紙とトナーをどんどん消費していきます。エコの観点からも、印刷は必要最小限に抑制すべきです。
「必要最小限な天気図」とは、紙に出力しないと利用しづらいものです。私はAUPQ35(強風軸を色ぬりするため)ぐらいで良いと思いますが、AXFE578(500hPaトラフを記入)やFXJP(風の循環や暖湿気の流入を記入)があっても良いでしょう。
印刷しない天気図はモニターで閲覧します。印刷では読み取りにくい細かい表示も、拡大して見ることもすぐにできます。
スマホで学習されている方は、21.5インチ程度のモニターの購入をお勧めします。
最後に
天気図の解析を始める前に知っておくべきことをまとめました。
2回目は「天気図の読み方」、3回目は「天気図解析の実際」をまとめる予定です。
私自身まだ修行を始めて間もないので、誤りなどに気付かれた方はご指摘いただけると幸いです。

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天気記号と天気 [傾向と対策]
本稿は気象予報士試験第40回(平成25年第1回)から50回(平成30年第1回)までの出題内容を分析した結果に基づきます。本文中の「これまで」と「過去」はこの期間を指します。
アジア太平洋地上天気図(ASAS)の観測実況値から現在天気、気圧の変化、雲の状態(十種雲形)のいずれかを読み取らせる問題は毎回出題されています。
その中でも、天気記号から現在天気を読み取らせる問題は、高い頻度で出題されています。
天気記号の読み取りで出題されるのはASASで用いられる国際式ですが、読み取った現在天気を国内式に読み替えさせる問題も出されたことがあります。
天気記号の問題は解けて当たり前で、ここで点数を取れないと他の受験生と差がついてしまいます。学習時間の余裕があるうちに整理して、確実に覚えましょう。
国内で用いられている天気記号には国際式、国内式、日本式の3種類があります(図1)。
図1 天気の種類

このうち、試験に出題されるのは国際式と国内式ですが、3つをそれぞれ簡単に整理しておきます。
アジア地上天気図(ASAS)で用いられる天気記号はWMO(世界気象機関)が定めたもので、「国際式天気記号」あるいは単に「天気記号」と呼ばれています。
国際式では、天気記号は観測実況値(図2)の青枠で囲った位置に表示されます。
図2 観測実況値の記入形式

出典:気象庁
国際式では、天気を現在天気と過去天気の2種類に分けています。
現在天気と過去天気の表記場所を確実に覚えてください。
現在天気(WW、WaWa)
現在天気は「観測時」あるいは「観測時または観測時前1時間内」の天気です。
観測を有人観測所で行ったか、自動観測所で行ったかにより、2種類の記号があります。
1)有人観測所の現在天気(WW)
有人観測所は気象台、地方気象台、測候所のことで、常駐職員が観測を行っています。
観測項目は視程、現在天気、大気現象、雲量・雲形・雲の向きです。
図3 天気記号(有人観測所の現在天気、WW)

参考書に掲載されているのは有人観測所の天気記号(図3)(以下、「有人式」と表記)が多く、気の利いた書籍では「WW」という記号が掲載されています。
2)自動観測所の現在天気(WaWa)
自動観測所は正式には「特別地域気象観測所」(94ヶ所)と呼ばれ、計測器による自動観測を行なっています。
無人の観測所なので、雲量・雲形・雲の向きは観測していません。したがって、自動観測所の天気記号では、雲に関する表記はされません(図2の「自動観測による場合」を参照)。
図4 天気記号(自動観測所の現在天気、WaWa)

自動式の天気記号(図4)(以下、「自動式」と表記)は「WaWa」と表されます。こちらは参考書にあまり掲載されていません。
WWとWaWaを見比べると、微妙に異なることが分かると思います。
次の「出題の傾向」でも述べますが、自動式(WaWa)の出題回数は低いので、覚える必要性はないでしょう。
過去天気(W1)
過去天気は「観測時6時間以内の天気」のことです。この定義は出題されるので覚えておきましょう。
過去天気にも有人式と自動式がありますが、有人式(図5)を覚えておけば十分でしょう。
図5 天気記号(有人観測所の過去天気、W1)

予報士試験では「国内式天気種別」もしくは「国内式」の名称で出題されていますが、正式名称を「気象庁天気種類表」と言います。
図6 天気(国内式)

気象庁の気象データはこの15種類の天気で記録されています(気象業務法施行規則第1条の3)。
気象予報士試験ではたまに出題されるので、学習が必要です。
【注意】
気象予報士試験で「天気」とあったら、それは国内式の天気のことを指します。
国際式は必ず、「現在天気」もしくは「過去天気」と4文字で表記されます。
ラジオの気象通報や新聞の天気図などで用いられます。中学校の理科で習う天気記号がこれです。
日本式天気記号は、独自の天気記号と風力階級により表示されます。
図7 日本式の天気記号

日本式の天気には、「にわか雨」「にわか雪」「雷つよし」など、国際式や国内式にはない天気があります。
図8 天気(日本式)

気象予報士試験では出題されたことがないので、試験対策上は学習は不要です。
過去11回の試験で、天気記号は毎回出題されています。実技1、実技2の両問で出題されている試験も2回ありました(第50回、第47回)。
天気記号から現在天気を読み取らせる問題が圧倒的に多くなっています。
ほとんどの出題は次のように、( )内を穴埋めで答えさせる問題です。
過去に1回だけ、観測実況値から現在天気の天気記号を転記させる問題が出題されています。観測実況値の記入形式を理解していれば容易に解ける問題でした(第42回実技1)。
有人式、自動式
有人式と自動式の別では、有人式の出題が圧倒的に多くなっています。
自動式は1回出題されているが(第47回実技1)、有人式の天気記号を覚えていれば解答できる問題でした。
なお、第42回実技1でも自動式の読み取りが出題されましたが、問題内容に不備があったとして、全員が正解扱いされています。
過去の事例を見ると、自動式の出題は、有人式の天気記号を覚えていれば解答できる配慮がされているようです。
現在天気、過去天気
これについては、問われるのは現在天気が圧倒的に多くなっています。
過去天気は「過去6時間以内の雷電」(WI=9)が1回出題されたのみです(第48回実技1)。
図9に、これまでに出題された天気記号(WW番号別)とその出題回数を示します。
図9 現在天気(有人式)の出題傾向

ww=10番台、20番台、40番台、60番台、70番台、80番台から出題されていますが、その中でもww=25、61、80が多くなっています。
国際式の天気記号を国内式天気で答えさせる問題が、過去に2回、出されています(第42回実技1、第41回実技1)。
出題の大半は「有人観測所」の「国際式」「現在天気」であることから、まずはこれをしっかりと覚えることです。
現在式天気の対策
まともに暗記すると数が多いので、過去の出題傾向を踏まえた上で覚える対象を絞り込みます。
気象庁HPや参考書に掲載されている天気は長ったらしので、試験で問われる簡素化された形式で覚えます。
例えば、ww=61は気象庁HPでは
「雨,観測時前1時間内に止み間がなかった。観測時に弱。」
とありますが、試験では
「弱い雨、観測時前1時間内に止み間なし」
の形式なので、これで覚えましょう。
過去に出題されたものとその関連を抽出しました。最低限、これだけは覚えましょう。
「前1時間内」が問われることもあるので、確実に覚えましょう。
自動式は覚えなくて良い
自動観測所の天気記号は、有人式と同じものもあれば異なるものもあります。記号は同じでも天気は異なるものもあります。
傾向編でも述べましたが、過去の数少ない出題例では有人式と自動式で天気記号と天気が一致するもののみが問われています(第47回実技1)。
これまでの出題傾向を踏まえると、自動式の天気記号と天気を覚える必要はありません。
過去天気の対策
有人式の過去天気はW1=3から9までの7種類のみなので、全て覚えます。
注意点が2つあります。W1=7の天気記号は「雪又はみぞれがあった」ですが、現在天気では「弱い雪で、前1時間内に止み間あり」です。記号は同じですが、現在天気と過去天気では異なります。
また、W1=8(しゅう雨性降水)の記号は現在天気にはありません。
過去天気の自動式は出題事例がないので覚えなくて良いでしょう。
出題頻度が低い割には国際式と国内式の対応関係が複雑です。これを覚えるかどうかは各自で判断してください。
簡略のために、2つに分けて説明します。下記で説明しないものは出題の可能性は極めて低いと思われます。
1)全雲量で天気(国内式)を決めるパターン
WW=00〜29は、天気記号の種別に関係なく、全雲量から天気(国内式)にします(図10)。
ただし、図で青色で塗っていないところは対象外です。WW=04〜06は国内式では「煙霧」です。
又、WW=17は「雷」です。
又、WW=13については、後述する「雷光」と「雷電」の違いが出題されたことがあります。WW=17と紛らわしいので、注意してください。
図10 現在天気と国内天気の対応(1)
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全雲量(8分量)に対応する天気(国内式)は必ず覚えてください。
ここで、先の問題を再度考えてみます。
現在天気は「電光は見えるが,雷鳴は聞こえない」( WW=13)なので、天気は全雲量で判断します。
全雲量は8分量で「2」なので、正解は「晴れ」になります。
2)天気(日本式)に集約するパターン
天気には霧雨、雨、雪の「強」「並」「弱」の区別がありません。霧についても国際式のような細かい区別がありません。
したがって、霧系は「霧」に、雨系(しゅう雨を含む)は「雨」に、雪系(しゅう雪を含む)は「雪」に集約します。
図10 現在天気と国内天気の対応(2)
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天気記号と天気について、私自身が勉強していたときに分かりにくかったところをまとめました。みなさまの学習の効率化にお役に立てれば幸いです。

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出題の概要
アジア太平洋地上天気図(ASAS)の観測実況値から現在天気、気圧の変化、雲の状態(十種雲形)のいずれかを読み取らせる問題は毎回出題されています。
その中でも、天気記号から現在天気を読み取らせる問題は、高い頻度で出題されています。
天気記号の読み取りで出題されるのはASASで用いられる国際式ですが、読み取った現在天気を国内式に読み替えさせる問題も出されたことがあります。
天気記号の問題は解けて当たり前で、ここで点数を取れないと他の受験生と差がついてしまいます。学習時間の余裕があるうちに整理して、確実に覚えましょう。
天気記号と天気の種類
国内で用いられている天気記号には国際式、国内式、日本式の3種類があります(図1)。
図1 天気の種類

このうち、試験に出題されるのは国際式と国内式ですが、3つをそれぞれ簡単に整理しておきます。
国際式
アジア地上天気図(ASAS)で用いられる天気記号はWMO(世界気象機関)が定めたもので、「国際式天気記号」あるいは単に「天気記号」と呼ばれています。
国際式では、天気記号は観測実況値(図2)の青枠で囲った位置に表示されます。
図2 観測実況値の記入形式

出典:気象庁
国際式では、天気を現在天気と過去天気の2種類に分けています。
現在天気と過去天気の表記場所を確実に覚えてください。
現在天気(WW、WaWa)
現在天気は「観測時」あるいは「観測時または観測時前1時間内」の天気です。
観測を有人観測所で行ったか、自動観測所で行ったかにより、2種類の記号があります。
1)有人観測所の現在天気(WW)
有人観測所は気象台、地方気象台、測候所のことで、常駐職員が観測を行っています。
観測項目は視程、現在天気、大気現象、雲量・雲形・雲の向きです。
図3 天気記号(有人観測所の現在天気、WW)

参考書に掲載されているのは有人観測所の天気記号(図3)(以下、「有人式」と表記)が多く、気の利いた書籍では「WW」という記号が掲載されています。
2)自動観測所の現在天気(WaWa)
自動観測所は正式には「特別地域気象観測所」(94ヶ所)と呼ばれ、計測器による自動観測を行なっています。
無人の観測所なので、雲量・雲形・雲の向きは観測していません。したがって、自動観測所の天気記号では、雲に関する表記はされません(図2の「自動観測による場合」を参照)。
図4 天気記号(自動観測所の現在天気、WaWa)

自動式の天気記号(図4)(以下、「自動式」と表記)は「WaWa」と表されます。こちらは参考書にあまり掲載されていません。
WWとWaWaを見比べると、微妙に異なることが分かると思います。
次の「出題の傾向」でも述べますが、自動式(WaWa)の出題回数は低いので、覚える必要性はないでしょう。
過去天気(W1)
過去天気は「観測時6時間以内の天気」のことです。この定義は出題されるので覚えておきましょう。
過去天気にも有人式と自動式がありますが、有人式(図5)を覚えておけば十分でしょう。
図5 天気記号(有人観測所の過去天気、W1)

国内式
予報士試験では「国内式天気種別」もしくは「国内式」の名称で出題されていますが、正式名称を「気象庁天気種類表」と言います。
図6 天気(国内式)

気象庁の気象データはこの15種類の天気で記録されています(気象業務法施行規則第1条の3)。
気象予報士試験ではたまに出題されるので、学習が必要です。
【注意】
気象予報士試験で「天気」とあったら、それは国内式の天気のことを指します。
国際式は必ず、「現在天気」もしくは「過去天気」と4文字で表記されます。
日本式
ラジオの気象通報や新聞の天気図などで用いられます。中学校の理科で習う天気記号がこれです。
日本式天気記号は、独自の天気記号と風力階級により表示されます。
図7 日本式の天気記号

日本式の天気には、「にわか雨」「にわか雪」「雷つよし」など、国際式や国内式にはない天気があります。
図8 天気(日本式)

気象予報士試験では出題されたことがないので、試験対策上は学習は不要です。
出題の傾向
過去11回の試験で、天気記号は毎回出題されています。実技1、実技2の両問で出題されている試験も2回ありました(第50回、第47回)。
出題形式
天気記号から現在天気を読み取らせる問題が圧倒的に多くなっています。
ほとんどの出題は次のように、( )内を穴埋めで答えさせる問題です。
過去に1回だけ、観測実況値から現在天気の天気記号を転記させる問題が出題されています。観測実況値の記入形式を理解していれば容易に解ける問題でした(第42回実技1)。
国際式
有人式、自動式
有人式と自動式の別では、有人式の出題が圧倒的に多くなっています。
自動式は1回出題されているが(第47回実技1)、有人式の天気記号を覚えていれば解答できる問題でした。
なお、第42回実技1でも自動式の読み取りが出題されましたが、問題内容に不備があったとして、全員が正解扱いされています。
過去の事例を見ると、自動式の出題は、有人式の天気記号を覚えていれば解答できる配慮がされているようです。
現在天気、過去天気
これについては、問われるのは現在天気が圧倒的に多くなっています。
過去天気は「過去6時間以内の雷電」(WI=9)が1回出題されたのみです(第48回実技1)。
図9に、これまでに出題された天気記号(WW番号別)とその出題回数を示します。
図9 現在天気(有人式)の出題傾向

ww=10番台、20番台、40番台、60番台、70番台、80番台から出題されていますが、その中でもww=25、61、80が多くなっています。
WW | 現在天気 |
---|---|
25 | 観測時前1時間内にしゅう雨があった |
61 | 弱い雨、前1時間内に止み間なし |
80 | 弱いしゅう雨 |
国内式
国際式の天気記号を国内式天気で答えさせる問題が、過去に2回、出されています(第42回実技1、第41回実技1)。
【出題例】(第42回実技1)

「父島の天気を以下の国内式天気種別から選んで答えよ。」
(選択肢)
快晴,晴れ,薄曇り,曇り,煙霧,砂じん嵐,地ふぶき,霧,霧雨,雨,みぞれ,雪,あられ,ひょう,雷
正解: 晴れ (「晴れ」となる理由は「国内式の対策」で後述)

「父島の天気を以下の国内式天気種別から選んで答えよ。」
(選択肢)
快晴,晴れ,薄曇り,曇り,煙霧,砂じん嵐,地ふぶき,霧,霧雨,雨,みぞれ,雪,あられ,ひょう,雷
正解: 晴れ (「晴れ」となる理由は「国内式の対策」で後述)
対策
出題の大半は「有人観測所」の「国際式」「現在天気」であることから、まずはこれをしっかりと覚えることです。
国際式の対策
現在式天気の対策
まともに暗記すると数が多いので、過去の出題傾向を踏まえた上で覚える対象を絞り込みます。
気象庁HPや参考書に掲載されている天気は長ったらしので、試験で問われる簡素化された形式で覚えます。
例えば、ww=61は気象庁HPでは
「雨,観測時前1時間内に止み間がなかった。観測時に弱。」
とありますが、試験では
「弱い雨、観測時前1時間内に止み間なし」
の形式なので、これで覚えましょう。
過去に出題されたものとその関連を抽出しました。最低限、これだけは覚えましょう。
【霧】
ww=45 霧又は氷霧,空を透視できない。観測時前1時間内変化なかった
ww=45 霧又は氷霧,空を透視できない。観測時前1時間内変化なかった
【雨】
ww=60 弱い雨、前1時間内に止み間あり
ww=61 弱い雨、前1時間内に止み間なし
ww=62 並の雨、前1時間内に止み間あり
ww=63 並の雨、前1時間内に止み間なし
ww=60 弱い雨、前1時間内に止み間あり
ww=61 弱い雨、前1時間内に止み間なし
ww=62 並の雨、前1時間内に止み間あり
ww=63 並の雨、前1時間内に止み間なし
【雪】
ww=73 並の雪、前1時間内に止み間なし
ww=73 並の雪、前1時間内に止み間なし
【しゅう雨】(対流性の雲から降る雨)
ww=25 観測時前1時間内にしゅう雨があった
ww=80 弱いしゅう雨
ww=81 並又は強いしゅう雨
ww=82 激しいしゅう雨
ww=25 観測時前1時間内にしゅう雨があった
ww=80 弱いしゅう雨
ww=81 並又は強いしゅう雨
ww=82 激しいしゅう雨
【しゅう雪】(対流性の雲から降る雪)
ww=85 弱いしゅう雪
ww=86 並又は強いしゅう雪
ww=85 弱いしゅう雪
ww=86 並又は強いしゅう雪
「前1時間内」が問われることもあるので、確実に覚えましょう。
自動式は覚えなくて良い
自動観測所の天気記号は、有人式と同じものもあれば異なるものもあります。記号は同じでも天気は異なるものもあります。
傾向編でも述べましたが、過去の数少ない出題例では有人式と自動式で天気記号と天気が一致するもののみが問われています(第47回実技1)。
これまでの出題傾向を踏まえると、自動式の天気記号と天気を覚える必要はありません。
過去天気の対策
有人式の過去天気はW1=3から9までの7種類のみなので、全て覚えます。
注意点が2つあります。W1=7の天気記号は「雪又はみぞれがあった」ですが、現在天気では「弱い雪で、前1時間内に止み間あり」です。記号は同じですが、現在天気と過去天気では異なります。
また、W1=8(しゅう雨性降水)の記号は現在天気にはありません。
過去天気の自動式は出題事例がないので覚えなくて良いでしょう。
国内式の対策
出題頻度が低い割には国際式と国内式の対応関係が複雑です。これを覚えるかどうかは各自で判断してください。
簡略のために、2つに分けて説明します。下記で説明しないものは出題の可能性は極めて低いと思われます。
1)全雲量で天気(国内式)を決めるパターン
WW=00〜29は、天気記号の種別に関係なく、全雲量から天気(国内式)にします(図10)。
ただし、図で青色で塗っていないところは対象外です。WW=04〜06は国内式では「煙霧」です。
又、WW=17は「雷」です。
又、WW=13については、後述する「雷光」と「雷電」の違いが出題されたことがあります。WW=17と紛らわしいので、注意してください。
図10 現在天気と国内天気の対応(1)
.png)
全雲量(8分量)に対応する天気(国内式)は必ず覚えてください。
全雲量 | 天気(国内式) |
---|---|
0、1 | 快晴 |
2〜6 | 晴 |
7〜8 | 曇 |
ここで、先の問題を再度考えてみます。
現在天気は「電光は見えるが,雷鳴は聞こえない」( WW=13)なので、天気は全雲量で判断します。
全雲量は8分量で「2」なので、正解は「晴れ」になります。
注意:
WW=13(電光)は雷鳴がないため、「雷電(雷鳴および電光)または雷鳴があった状態」とする国内式の「雷」には該当しません。(気象庁「天気予報等で用いる用語」)
WW=13(電光)は雷鳴がないため、「雷電(雷鳴および電光)または雷鳴があった状態」とする国内式の「雷」には該当しません。(気象庁「天気予報等で用いる用語」)
2)天気(日本式)に集約するパターン
天気には霧雨、雨、雪の「強」「並」「弱」の区別がありません。霧についても国際式のような細かい区別がありません。
したがって、霧系は「霧」に、雨系(しゅう雨を含む)は「雨」に、雪系(しゅう雪を含む)は「雪」に集約します。
図10 現在天気と国内天気の対応(2)
E8AAACE6988EE585A5E3828A.png)
現在天気(WW) | 天気(国内式) | 摘要 | |
---|---|---|---|
① | 42〜49 | 霧 | |
② | 50〜57 | 霧雨 | 強さに関わらず「霧雨」 |
③ | 58〜67、80〜82 | 雨 | 強さに関わらず「雨」 |
④ | 70〜75、77、78 | 雪 | 強さに関わらず「雪」 |
最後に
天気記号と天気について、私自身が勉強していたときに分かりにくかったところをまとめました。みなさまの学習の効率化にお役に立てれば幸いです。

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低気圧の気象衛星画像を見る [練習]
予報士の勉強をしていると、雲の学習は雲の種別(積乱雲、層雲など)を見分けるぐらいでとどまってしまいます。
これはもちろん大事な技術ですが、気象衛星画像で雲を見るときは、まず総観規模で雲域を見ることが大切だと言われます。
ざっくり言えば、経度線・緯度線のひとマス程度以上にわたる単位で雲を見るということです。今回はそんな目線で雲を追いかけてみます。
後ほどの衛星画像の説明で出てくる雲パターンを簡単にまとめておきます。
トラフ前面では暖気移流があるため、雲が寒気側に高気圧性の曲率を持って膨らんだ形状をバルジと言います。バルジ(bulge)とは英語で「膨らみ」を意味します。
ローマ字で使うコンマの形をした雲をコンマ状の雲と言います。
狭義には、低気圧の後面に発生する寒気場内低気圧(ポーラーロウ)が作る雲形を「コンマ状」と言いますが、後ほどの画像で見るように大きなスケールでもコンマ状は発生します。
雲がフックの形状(アルファベットのJの文字の形)をしたものをフックパターンと呼びます。
実際には曲率の変曲点(低気圧性循環から高気圧性循環に変わる点)があり、ここを「フック」と呼びます。
画像の左肩に日時に続いて「可視」とあるのは可視画像、「水蒸気」は水蒸気画像、特に記載がないものは赤外画像です。
【11月7日9時】

黄河上流の北(北緯40度、105度付近)に高気圧性循環の盛り上がりが見えています。バルジっぽいです。
【11月7日21時】

盛り上がりが明瞭になってきました。
谷になっているところ(画像からは切れています)は、トラフに対応しています。
参考書などには「バルジの曲率の変曲点(フック)周辺に低気圧が存在する」と書かれています。
しかし今回のケースでは、トラフ前面の長江付近に低気圧(黄色い星印)ができていますが、この時点ではバルジとのつながりはありません。
水蒸気画像でも見ておきます。

東経110度よりも西側で明域と暗域がはっきりしたバウンダリーがあり、トラフの軸がありそうです。
500hPaの実況図でも確認しておきます。

やはりトラフが確認できます。
同じ気象要素でも、いろんな天気図を用いて複合的に確認することが大切です。
【11月8日9時】

雲域がまとまり始めています。
【11月8日21時】

この時刻から、天気図上では閉塞前線になりました。画像では暗域が増えてきたので、後面から乾燥した寒気が入り込み始めたことが分かります。
地上天気図で閉塞前線を見ておきましょう。

次に、700hPaの乾燥状況を確認しておきます(8日9時イニシャルのFT=12)。

T-Td<3の湿潤域が雲域とほぼ一致し、その後面に乾気が入っています。
【11月9日9時】

雲域はコンマ状の形状を示しています。コンマ先端部の巻き込んでいる部分はフックになっていて、ここに地上低気圧の中心が位置します。このとき、地上低気圧の中心は996hPaで、もっとも発達しています。
この雲の色は画像状の他の雲域と比べて非常に白いので、上層の雲だと分かります。
こちらは可視画像です。

11月の朝9時だとまだ太陽の高度が低くて写りが暗めになっていますが、コンマの内側部分に凹凸が見られます。
さらに、この時の雨の状況を示すレーダーエコーです。

レーダーが設置されていない海上のエコーは見えませんが、エコーの形状は概ね雲の形状と一致してそうです。
寒冷前線が通過している関西、四国地方では、対流性のエコーも見られます。
こちらも700hPaの乾燥状況を確認しておきます(8日21時イニシャルのFT=12)。

こちらは同時刻の地上天気図です。

沿海州付近に低気圧があり、寒冷前線が日本海中部から四国を経て沖縄までのびています。
【11月9日21時】

雲域が崩れ始めました。地上低気圧の中心気圧は1002hPaです。
【11月10日9時】

地上低気圧の中心気圧は1010hPaです。
【11月10日21時】

ここまで追っかけてきた雲は完全に形が崩れ、中層の雲が主体になってきました。
華北には次のトラフが進んできて、これによる雲域が発生しています。
地上天気図を見てみます。

地上低気圧の中心気圧は1012hPaです。地上天気図に前線が描かれなくなりました。
学生時代に数学の問題を解くとき、問題集の後ろにある解答をまず見てから「でもどうやって解いたら良いか、分かんないなー」ということをやっていました。これでは成績が上がるはずもありません(恥)。
気象衛星画像は、気象現象がそこに現れているという意味では「解答」です。学習の初期段階では、この正解からスタートするというのはアリだと思います。
特徴のある雲域は天気図を解析するときの着目点を示してくれているので、効率良く天気図を見ることができます。
それに慣れてきたら答えを予測する、すなわち天気図からこの先の天気を予測する練習をしていけば良いのです。
雲は大気の状態を教えてくれる貴重なシグナルです。毎日天気図と雲画像を見比べて、雲域を見るだけでその成因を予測できるようになることを目指しましょう!

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これはもちろん大事な技術ですが、気象衛星画像で雲を見るときは、まず総観規模で雲域を見ることが大切だと言われます。
ざっくり言えば、経度線・緯度線のひとマス程度以上にわたる単位で雲を見るということです。今回はそんな目線で雲を追いかけてみます。
低気圧に関する雲域
後ほどの衛星画像の説明で出てくる雲パターンを簡単にまとめておきます。
バルジ
トラフ前面では暖気移流があるため、雲が寒気側に高気圧性の曲率を持って膨らんだ形状をバルジと言います。バルジ(bulge)とは英語で「膨らみ」を意味します。
コンマ状
ローマ字で使うコンマの形をした雲をコンマ状の雲と言います。
狭義には、低気圧の後面に発生する寒気場内低気圧(ポーラーロウ)が作る雲形を「コンマ状」と言いますが、後ほどの画像で見るように大きなスケールでもコンマ状は発生します。
フック
雲がフックの形状(アルファベットのJの文字の形)をしたものをフックパターンと呼びます。
実際には曲率の変曲点(低気圧性循環から高気圧性循環に変わる点)があり、ここを「フック」と呼びます。
2018年11月の事例
画像の左肩に日時に続いて「可視」とあるのは可視画像、「水蒸気」は水蒸気画像、特に記載がないものは赤外画像です。
【11月7日9時】

黄河上流の北(北緯40度、105度付近)に高気圧性循環の盛り上がりが見えています。バルジっぽいです。
【11月7日21時】

盛り上がりが明瞭になってきました。
谷になっているところ(画像からは切れています)は、トラフに対応しています。
参考書などには「バルジの曲率の変曲点(フック)周辺に低気圧が存在する」と書かれています。
しかし今回のケースでは、トラフ前面の長江付近に低気圧(黄色い星印)ができていますが、この時点ではバルジとのつながりはありません。
水蒸気画像でも見ておきます。

東経110度よりも西側で明域と暗域がはっきりしたバウンダリーがあり、トラフの軸がありそうです。
500hPaの実況図でも確認しておきます。

やはりトラフが確認できます。
同じ気象要素でも、いろんな天気図を用いて複合的に確認することが大切です。
【11月8日9時】

雲域がまとまり始めています。
【11月8日21時】

この時刻から、天気図上では閉塞前線になりました。画像では暗域が増えてきたので、後面から乾燥した寒気が入り込み始めたことが分かります。
地上天気図で閉塞前線を見ておきましょう。

次に、700hPaの乾燥状況を確認しておきます(8日9時イニシャルのFT=12)。

T-Td<3の湿潤域が雲域とほぼ一致し、その後面に乾気が入っています。
【11月9日9時】

雲域はコンマ状の形状を示しています。コンマ先端部の巻き込んでいる部分はフックになっていて、ここに地上低気圧の中心が位置します。このとき、地上低気圧の中心は996hPaで、もっとも発達しています。
この雲の色は画像状の他の雲域と比べて非常に白いので、上層の雲だと分かります。
こちらは可視画像です。

11月の朝9時だとまだ太陽の高度が低くて写りが暗めになっていますが、コンマの内側部分に凹凸が見られます。
さらに、この時の雨の状況を示すレーダーエコーです。

レーダーが設置されていない海上のエコーは見えませんが、エコーの形状は概ね雲の形状と一致してそうです。
寒冷前線が通過している関西、四国地方では、対流性のエコーも見られます。
こちらも700hPaの乾燥状況を確認しておきます(8日21時イニシャルのFT=12)。

こちらは同時刻の地上天気図です。

沿海州付近に低気圧があり、寒冷前線が日本海中部から四国を経て沖縄までのびています。
【11月9日21時】

雲域が崩れ始めました。地上低気圧の中心気圧は1002hPaです。
【11月10日9時】

地上低気圧の中心気圧は1010hPaです。
【11月10日21時】

ここまで追っかけてきた雲は完全に形が崩れ、中層の雲が主体になってきました。
華北には次のトラフが進んできて、これによる雲域が発生しています。
地上天気図を見てみます。

地上低気圧の中心気圧は1012hPaです。地上天気図に前線が描かれなくなりました。
最後に
学生時代に数学の問題を解くとき、問題集の後ろにある解答をまず見てから「でもどうやって解いたら良いか、分かんないなー」ということをやっていました。これでは成績が上がるはずもありません(恥)。
気象衛星画像は、気象現象がそこに現れているという意味では「解答」です。学習の初期段階では、この正解からスタートするというのはアリだと思います。
特徴のある雲域は天気図を解析するときの着目点を示してくれているので、効率良く天気図を見ることができます。
それに慣れてきたら答えを予測する、すなわち天気図からこの先の天気を予測する練習をしていけば良いのです。
雲は大気の状態を教えてくれる貴重なシグナルです。毎日天気図と雲画像を見比べて、雲域を見るだけでその成因を予測できるようになることを目指しましょう!

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合格できなかったら・・・ [試験対策]

試験に合格できなかったのには、何らかの理由があります。次回に向けて効率的な学習ができるよう、しっかりと要因分析をして対策を講じましょう。
現実に向き合うのは辛く面倒な作業ですが、記憶が新しいうちにやってしまうのが効果的です。
原因を分析する
まずは試験を振り返る
不合格だった試験を見返し、なぜ合格点が取れなかったのか、その原因を分析します。次の3つぐらいに分類できるでしょう。
①問題に歯が立たなかった
②時間が足りなかった
③勘違いをした
これらは表面的な原因です。過去問題をこなしてきた方であれば、基本的な知識は蓄積されているはずです。それがなぜ、試験場で要領よく引き出すことができなかったのか、その裏に潜んでいる真の原因に迫りましょう。
では、順に見ていきましょう。
①問題に歯が立たなかった
これまでの学習で学習漏れがあったり、苦手なテーマを放置していた可能性があります。
私の体験では、得意なものばかり繰り返して、苦手なものは取り組むのが面倒で後回しにするということがありました。
例えば、台風のもたらす被害について整理しないまま今日まで来てしまった。あるいは、教材が不足しているという理由で、エマグラムの解析練習をあまりやってこなかったというように、不得意な分野が残っていれば、それを全て列挙します。
項目をいくつか挙げておきます。
□気象現象別の特徴
・低気圧(南岸、日本海、寒冷)
・ポーラーロウ
・台風
・前線(梅雨、秋雨、沿岸)
・大雪(日本海側、太平洋側)
□図の読解(エマグラム、鉛直断面図、レーダーエコーなど)
□図の解析(前線、等値線、トラフ、強風軸など)
□衛星画像
□計算問題(じょう乱の移動速度など)
□警報・気象情報
□用語、地名など
・低気圧(南岸、日本海、寒冷)
・ポーラーロウ
・台風
・前線(梅雨、秋雨、沿岸)
・大雪(日本海側、太平洋側)
□図の読解(エマグラム、鉛直断面図、レーダーエコーなど)
□図の解析(前線、等値線、トラフ、強風軸など)
□衛星画像
□計算問題(じょう乱の移動速度など)
□警報・気象情報
□用語、地名など
②時間が足りなかった
問題を解くプロセスを単純化すると、次の3ステップになります。
「問題文(図)を読む」→「考察する」→「解答文を作成する」
そして、解答文の作成に至るまでに、次の処理を行います。
【問題文(図)を読む】
・問題の意図を読み取る
・天気図など、与えられた資料を読む
【考察する】
・現象を理解する
・該当する気象ロジックを導く
・解答の文型を考える
【解答分を作成する】
・解答する(作図する)
・問題の意図を読み取る
・天気図など、与えられた資料を読む
【考察する】
・現象を理解する
・該当する気象ロジックを導く
・解答の文型を考える
【解答分を作成する】
・解答する(作図する)
時間が足りなかったということは、このいずれかの処理能力が劣っていたことを意味します。その原因として「習熟の不足」「知識の体系化不足」が考えられます。
③勘違いをした
勘違いが多い方は、勘違いを起こす傾向があるはずです。
私の場合、家で過去問を解いていて単純な間違いを多発していることに気がつきました。例えば、風向きの読み違えが多く、「西風」と答えるところを「東風」とやっていました。
焦っていると漢字の書き違いもして、「対流雲」を「帯流雲」と書いたこともあります。また、問題文に「小数点ひと桁で答えよ」とあるのに、2桁目まで出したこともあります。
前項「②時間が足りなかった」のどの処理段階で発生するのか、分析してみましょう。
対策を講じる
原因分析を通して自分の弱点が特定できたら、次はそれをつぶす対策を考えます。
教材を決める
これまで使ってきた教材では物足りなければ、自分の弱点を埋めてくれる教材を探して、早い段階で学習計画に取り込みます。試験が近づくほど時間の余裕はなくなるので、弱点対策は早期に行います。
参考書を探している時間も勿体無いので、いくつか挙げておきます(※)。
※気象予報士関連の書籍は10年以上前に出版されたものに良書が多く、現在では書店で入手できないものが多くなっています。入手できない場合は、地元の図書館で探してみてください。
【気象現象をサラッと学びたい】
「図解気象・天気のしくみがわかる事典 きれいな衛星写真)+イラストでわかりやすく解説」(青木孝・監修、成美堂出版)
【気象現象別に事例を見たい】
「気象予報士試験標準テキスト」(新田尚・監修、オーム社)P.141〜185
【衛星画像を見たい】
「日本の天気と気象図鑑」(村田健史ほか、誠文堂新光社、2017年)
「図解気象・天気のしくみがわかる事典 きれいな衛星写真)+イラストでわかりやすく解説」(青木孝・監修、成美堂出版)
【気象現象別に事例を見たい】
「気象予報士試験標準テキスト」(新田尚・監修、オーム社)P.141〜185
【衛星画像を見たい】
「日本の天気と気象図鑑」(村田健史ほか、誠文堂新光社、2017年)
本を読むと分かった気になりますが、これだけでは頭の中に定着しません。自分でサブノートを作り、自分で理解したことを書き出してみます。これを毎日のように見返すことで、徐々に知識が自分のものになっていきます。
キーワードを隠して穴埋め形式にしておくと、復習時の効果が上がります。
ただし、サブノートを作ることが目的ではありません。自分が分かれば良いので、綺麗に作る必要はなく、ノート作成に手間をかけないようにしましょう(私はパソコンで作成していました)。
作図や読図は、自分だけの教材を作る
実技試験では図を書いたり、図を読みとる問題が出題されます。しかし、前線や等値線の解析は教材が乏しいこともあり、苦手とする方も多いと思います。
このような解析問題は自分でオリジナル教材を作成し、それを繰り返すことで手順を身体に覚え込ませます。
教材のネタは次のように準備します。
①過去問題から抽出する
これが一番てっとり早い方法です。
②参考書から抽出する
参考書には練習に使えそうな事例が載っていることがあります。
(例.「らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト 実技編」P.426〜435)
エマグラムは下記サイトから入手できます。SSIを計算してみたり、天候に応じた湿り具合や逆転層の状況を、日頃から見ておきます。
https://www.sunny-spot.net/emagram/
③スクールの資料を利用する
受験講座などで配布される資料を利用します。私はハレックスの実技講座(3日間講習)でもらった前線と等値線の問題(といっても、たかだか1〜2問ですが)を繰り返していました。
④気象庁資料から作成する
気象庁のホームページから、前線解析だったら「日々の天気」、風のシアーの解析だったら「ウィンドプロファイラ」の中から適切なものを選んできます。しかしこれは作成に時間がかかるので、あまりオススメはできません。
教材のネタをが入手できたら、問題と解答用紙をコピーして、自分だけの問題集としてまとめます(クリアフォルダーに入れるだけで十分)。
これにより苦手な分析問題を顕在化させることができます。製本された問題集の中に教材が埋れていては意味がありません。苦手なものだけをまとめておくというのが大事な点です。
自作の教材で定期的に練習し、試験日が近づいてきたらほぼ毎日実践すると効果的です。
間違いの記録をつける
過去問題を解いて間違いがあったときには、その答えだけでなく、なぜその答えが導き出されるのか、なぜ自分は間違えたのかを余白に書き込みます。
ここに自分の弱点が詰まった、「自分だけの傾向と対策」書になります。これが最も価値のある参考書になります。
自分の分身みたいなものなので、試験直前にもこれを読み返すことで落ち着くことができます。私は試験当日もこれを持ち込むことで精神安定剤になりました。
気象のロジックを整理する
気象現象には基本的なロジックがあります(「気象ロジック」は私の造語です)。
ある気象現象が発生するには、必ずその前提条件があります。その因果関係を頭の中で整理しておくことが大事です。
例えば次のようなものです。
【トラフと高度場の関係】
トラフが接近する→高度場が下がる
【温帯低気圧が発達する条件】
トラフ前面、正渦度の下方で上昇流が発生する
【上昇流が発生する条件】
上層に正渦度移流がある
下層で暖気移流&寒気移流がある
下層に暖湿気が流入する
トラフが接近する→高度場が下がる
【温帯低気圧が発達する条件】
トラフ前面、正渦度の下方で上昇流が発生する
【上昇流が発生する条件】
上層に正渦度移流がある
下層で暖気移流&寒気移流がある
下層に暖湿気が流入する
このようなロジックは意識的に整理しないと、ただ問題演習をやっているだけでは身についていきません。
参考書にはこのような気象ロジックを整理したものがないので、少しずつ自分で作っていきます。
防災事項についてもある程度パターン化してまとめておきます。ただ覚えるのではなく、例えば「なぜ大雪が交通障害に結びつくのか」を考えながら覚えることが大切です。
【大雨】
低地の浸水、河川の増水や氾濫、洪水、がけ崩れ、土石流
【暴風】
木造家屋の倒壊、樹木の倒木、送電線の断線、交通障害
【大雪】
交通障害、着雪、雪崩、落雪
低地の浸水、河川の増水や氾濫、洪水、がけ崩れ、土石流
【暴風】
木造家屋の倒壊、樹木の倒木、送電線の断線、交通障害
【大雪】
交通障害、着雪、雪崩、落雪
気象ロジックが頭の中で整理されていないと、試験合格後も天気図解析で苦労することになります。
実況で習熟する
予報士を目指すのであれば、毎日、天気図を見て実況をつける作業を行いましょう。
気象庁の職員でも、予報官として一人前の仕事ができるようになるには20年を要すると言います。
実況をつける作業自体は、予報士試験の対策にすぐに結びつくものではありません。だからどうしても後回しになってしまいます。慣れないうちは30分~〜1時間ぐらいかかるかもしれません。
しかし、実況解析を繰り返すことにより天気図を見るスピードが速くなることはもちろんのこと、年間を通した気象要素の変化を理解することができるようになります。
【実況をつける作業】
「実況をつける」というのは天気図(ASAS, AUPQ35, AUPQ78, AXFE578, FXJP854など)と画像(レーダーエコー、衛星画像(IR, VIS、水蒸気))を見て、気が付いたことを書き留めていくことです。
それぞれの天気図を見ていったら、次に天気図相互の関連を見ることが大事です。
例えばAXFE578で500hPaの渦度を見つけたら、850hPaの温度場、700hPaの鉛直流、850hPaで暖湿気の流入はあるのか、衛星画像で雲があるのか、エコーはどうかというように、鉛直方向の関係を見ます。
湿りを見るのであれば地上天気図で露点温度を見たり、850hPaや700hPaの実況図でT-Td<3の領域を見たり、850hPaの相当温位・風を見たり、場合によってはエマグラムを見たりと、複数の図で確認することができます。
また、最初に300hPaのジェット気流を見ておけば、今後の気圧系の動きをある程度予測することができます。
実行する
対策が出来上がったらあとはそれをこなしていくだけですが、スケジュールを立てると実行管理がしやすくなります。
試験までの時間を3つの期間に分けてみます。
Ⅰ期 弱点補強期間
Ⅱ期 科目別演習期間
Ⅲ期 全科目演習期間
Ⅱ期 科目別演習期間
Ⅲ期 全科目演習期間
Ⅰ期
不合格の原因分析で浮かび上がった弱点は、Ⅰ期でやっつけておきましょう。
弱点が多い場合はじっくりと時間をかけたいところですが、この手のものはやり出すとキリがありません。全体期間の3分の1を超えない程度にしましょう。
Ⅱ期
Ⅱ期からは問題演習です。2科目以上を受験する場合でも、実技、一般、専門と各科目別に演習をした方が、早く全体を舐めることができます。これにより前項の「自分だけの傾向と対策」が出来上がれば、2回目以降の効率が上がります。
ただし、試験日まで間がなければこの段階を飛ばします。
Ⅲ期
Ⅲ期は試験日を意識した時期です。各科目の内容を忘れないように全科目を満遍なく、毎日演習しましょう。
私はダレやすい性格をしているので、「今日は◯◯ページまでやる」というように、スケジュールを日単位まで落とし込んでいました。これには、達成度がひと目で分かるという効果もありました。
最後にアドバイス。合格発表から次の試験までは3ヶ月あまりです。徹底的な対策を講じるのに時間が十分かどうか考えましょう。時間が不足ならば、試験を1回パスして9ヶ月先の試験に照準を合わせるという案もあります。
最後に
学習途上では成果が上がっているのかが分からず、迷いが生じることもあります。他の参考書に手を広げてみたり、投げ出したくなることもあります。そんな時でも基本に忠実に従うことが王道です。
2018年の大相撲秋場所で、横綱・白鵬は41度目の優勝とあわせて、幕内1千勝を達成しました。
白鵬は15歳で日本にやってきた当時は細身で、どこの部屋からも声をかけてもらえず、モンゴルに帰国する寸前までいきました。
しかし力士になりたいという夢を聞き入れてくれる人が現れ、その後はご存知の通りの活躍を果たしています。その秘訣に特別なものはなく、ただ基本を繰り返すことだそうです。
白鵬を知る人は、「彼は当たり前のことをやっているだけ。ただ、基本が一番きつい。それを続ける意思の強さがある」と語っています(朝日新聞、2018.9.23)。
地道な努力こそが成果につながります。自分を信じて。
次回試験の合格をお祈りしています。

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