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トラフの疑問を解消します。 [知識]

トラフについて知りたいことはいろいろとあるのに、参考書にもネットにも説明がありません。
そこで現在の自分が有する全ての能力で、トラフについての疑問を自問自答してみます。

最初にトラフの定義を確認しておきましょう。

【トラフ】

等高度線が高度の低い方から高い方に向かって凸状に出っ張ったところ

数値や数式で決まるものではなく、等高度線の形状を指しているというのが大事なところです。

では疑問に行ってみます。

(疑問)トラフと渦度極大値の位置

500hPaの解析図で等高度線の谷が一番深いところを見つけました。等高度線の形状から判断するとトラフのようなのですが、正渦度の極大値が谷底に表記されていません。

なぜトラフと渦度極大値の位置は一致しないのでしょうか。また、トラフはどちらをもとに引けば良いのでしょうか。

渦度が生じるのは、①流れに曲率があるとき、②速度の水平シアーがあるとき、の2通りが考えられます(図1)。

渦度.jpg

図1 渦度が生じる要因


トラフは低気圧性循環による曲率が大きいところですから、①のパターンです。

しかし、正渦度域で計算されている極大値は、①と②の両要素による渦度の合計値です。したがって、②の風の水平シアーによる渦度が大きい場合は、曲率が最大のところには極大値が算出されません。

事例で見てみましょう。

事例1:トラフと極大値の位置が一致するケース

path4224_1.png

(2019.1.27 12UTC)
図2 トラフと渦度極大値の位置が一致するケース


谷底に極大値「+182」(オレンジ色破線)があります。低気圧性循環による曲率が大きく、かつ風の水平シアーがないケースです。

このような事例なら、自信を持ってトラフを引くことができます。

事例2:トラフからずれて極大値が存在するケース

path4831.png

(2019.1.24 00UTC )
図3 トラフと渦度極大値の位置がずれているケース


正渦度の極大値「+172」(オレンジ色破線)の位置はトラフから南東にずれています。これは風の水平シアーも大きいので、トラフの位置からずれたところに極大値が算出されたものです。

「トラフは極大値(+172)に重ねて書くべきか?」と悩むところですが、ここは堂々と等高度線が凸状に張り出したところに引きましょう。

事例3: トラフがないのに極大値が存在するケース

path4203.png

(2019.2.13 00UTC)
図4 トラフがないのに渦度極大値が存在するケース


5,760mの正渦度域が帯状になっているところに、極大値「+100」(オレンジ色破線)があります。等高度線は直線状で、近傍にトラフは見当たりません。これは低気圧性の循環がなく、風の水平シアーが大きいケースです。


(疑問)トラフと気圧の谷

「トラフ」とは別に「気圧の谷」という言葉もあります。これらは同じものを指しますか?何か用語の使い分けがあるのでしょうか。


「気圧の谷」も「トラフ」も同じ概念です。気象庁の定義は次の通りです。

気圧の谷: 高圧部と高圧部の間の気圧の低いところ。
トラフ: 気圧の谷。主に高層天気図において用いる。

出典:気象庁「気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi1.html

「気圧の谷」は主に地上天気図で使われることが多い用語ですが、高層天気図で用いられることもあります。

それに対して、「トラフ」は高層天気図のみで用いられ、地上天気図で使われることはありません。したがって「気圧の谷」はトラフを含む、より汎用性の高い言葉と考えられます。

気象庁が使う用語には時々不可思議なものがあります。例えば、低気圧は「進む」で高気圧は「移動する」というように、主語によって述語を使い分けることがあります。

ところでトラフ解析は500hPa面で行うことが多いですよね。これは500hPa面は対流圏の中間にあたり収束・発散が小さく、渦度が保存されるとみなせるため追跡がしやすいからです。

しかしトラフ自体は500hPa面以外でも、300hPa、700hPa、850hPaの各面でも観察することができます。したがって、どの等圧面でトラフを解析するのかを言及するのが好ましいのです。

第51回の実技試験でも「500hPa面のトラフ」という表現が用いられています。解答でも500hPa面であることが自明の場合を除いては、(字数の余裕がある場合は)「500hPa面のトラフ」と書きましょう。


(疑問)なぜトラフ解析をするの?

トラフって分からないことだらけです。参考書を見ても、納得のいくようなトラフの見つけ方って説明されていません。

そもそもなんのためにトラフを解析するのですか?

かなり直球の質問です。端的に答えると、トラフはこれから天候が悪化する前兆になるからです。トラフの移動を追いかけると、どこの天気が崩れるかを予想することができます。

トラフの前面は発散場


温帯低気圧がどのように発達するかを考えてみましょう。下層と上層の条件がうまく一致すると、低気圧は発達します。下層の条件としては暖かくて湿った大気(暖湿気)が流入していること、温度移流があることが挙げられます。また、上層の条件としては発散場があることです。発散場は空気の存在が疎になるので、そこを埋め合わせるように下層から空気が上昇します(図5)。

低気圧の発達.jpg

図5 温帯低気圧の発達


発散場はトラフ(低気圧性循環)とリッジ(高気圧性循環)の間にできるので、トラフが接近してくるとその前面が発散場となります。

下層で低気圧が発達する条件が揃っても、上層に発散場が存在しないと不明瞭なままに終わってしまいます。逆に上層にトラフがあっても、下層に低気圧の卵がなければトラフはそのまま通過してしまいます。したがって、500hPaの解析図を見て片っ端からトラフに印をつけていくという作業は無駄です(そのような人を見たことがあります)。

さらにトラフを追いかけることで気温の変化の予想をすることもできます。

トラフは寒気をともなう


上層を吹く偏西風は緯度に平行ではなく南北に蛇行しています。南に蛇行した部分(形状)をトラフと称しているので、基本的にトラフは北側の寒気を伴っています(図6)。

path4238 2.png

図6 偏西風の波動(イメージ)


これも事例を見てみましょう。

image4198 2.png

(2019.1.15 12UTC)
図7 温度移流をともなうトラフ


トラフ後面では等温線を横切るように北よりの風が吹いています。これが寒気移流です(図7青色線)。また、トラフ前面では南よりの風が等温線を横切る風(暖気移流)が吹いています(図7橙色線)。

このように、トラフを見つけたら温度移流があるかを確認してみましょう。例えば、冬季の気温を予想するには500hPaの温度場で寒気がどこまで南下するかを見ることが大事です。しかしトラフが通過して寒気移流がなくなれば、寒気のピークは底を打ったと判断することができます。降っていた雪も終息に向かいます。

気象庁は季節予報を発表していますが、1ヶ月予報では偏西風の蛇行の予測を利用しています。例えば、偏西風が南へ蛇行すると予想される場合は、気圧の谷が通過する(=高度が下がる)ので低温と予測します。


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天気図の解析練習②(実況図の読み方) [知識]

高層天気図の読み方の基本をまとめます。分量が多いので、実況図(解析図を含む)と予想図に分け、今回は実況図についてです。

試験では高層天気図の実況図が出題されることは多くないので、過去問ばかりに取り組んでいるとあまり目にすることはないでしょう。

実況図を解析することは天気図解析の基本ですので、ぜひ毎日見るように心がけたいものです。

AUPQ35, 78

図の構成


AUPQ35

AUPQ_35_3.jpg


1枚が2等分され、上半分に300hPa天気図、下半分に500hPa天気図が掲載されています。

図の下に天気図の名称(AUPQ35)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。

UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST


AUPQ78

AUPQ78_3.jpg


1枚が2等分され、上半分に700hPa天気図、下半分に850hPa天気図が掲載されています。

図の下に天気図の名称(AUPQ78)と観測日時が記されています。観測日時は「日、時刻(UTC)、月、年」の順です。「011200UTC JAN 2019」だと「1日、1200UTC、1月、2019年」となります。

UTC(協定世界時)に+9時間するとJST(日本標準時)になります。
例) 00UTC →0900JST、 12UTC→21JST


以下、個別の天気図について記します。

300hPa天気図


【主な用途】

300hPa強風軸を確認するのに用います。強風軸の位置が分かると、前線との対応関係を見たり、低気圧の閉塞時期を判断することができます(500hPaの実況図でも可能)。

強風軸解析はこちらをご覧ください。

【留意点】

試験での出題頻度は低いですが、気象解析では高層からスタートして徐々に下層まで見ていくのが定石です。日頃の練習では必ず300hPaからスタートしましょう。

強風軸の位置は季節によって異なります。真夏だと北海道よりも北に、真冬だと九州のあたりを吹いています。

【凡例】

300hPa天気図(解説入り).jpg


①等高度線 実線で120mごとに表示
②等風速線 破線で20ktごとに表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「300hPaの高度、温度、等風速」を記載


500hPa天気図


【主な用途と着目点】

①500hPa強風軸の解析
500hPa強風軸は、温帯低気圧の閉塞の具合(地上低気圧の中心が強風軸より北側にあれば閉塞)を見るのに使われます。

500hPa強風軸は300hPa強風軸の南側に位置するので、まず300hPa天気図で強風軸を見つけてから500hPa天気図を見るのが良いと思います。

それでも見つけにくい場合は、「500hPa高度・渦度解析図」(後述)や水蒸気画像も使うと見つけやすくなります。

②500hPaトラフ、リッジの解析
等高度線が等高度線の高い方に凸になっているところがトラフ、逆に等高度線の低い方に凸になっているところがリッジです。

トラフの探し方は私自身、まだ十分に習得できていませんが、天気図上で片っ端からトラフをマーキングしていくことも意味がないと思います。

実況解析の練習では、地上天気図で発達中の低気圧があれば、それに対応するトラフを500hPa天気図で探す(地上低気圧の西側にある)ことを繰り返していけば力がついてくると思います。

③寒気・暖気の流入
冬季であれば寒気がどこまで南下しているかを見ることで、大気の安定度などを判断できます。次の④とも重なりますが、冬季には5,400m線に注目します。これが南岸沿いまで南下していれば、強い寒気が入ることになります。

夏季であれば太平洋高気圧の目安となる5,880m線に注目し、太平洋高気圧の勢力を見ることができます。

④特定高度線の確認
500hPa面では特定高度線と呼ばれる3本の等高線を追跡することができます。これにより偏西風の蛇行の程度や、冬の寒気や夏の暖気の状況を推測することができます。

5400m線(−30℃の等温線におおむね対応する)
冬の寒気のしきい値
5700m線(偏西風帯の中心に対応する)
大気の流れが蛇行しているか東西流か
5880m線(亜熱帯高気圧の外周に相当する)
太平洋高気圧の勢力


【凡例】

500hPa天気図(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で3℃ごと(5〜10月)、もしくは6℃ごと(11〜4月)に表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「500hPaの高度、温度」を記載


700hPa天気図


【主な用途と着目点】

①湿り域の確認
中層の湿り域(T-Td<3)を確認します。この湿り域はドットで表示されています。

確認できたらレーダーエコーや衛星画像の雲域や、地上天気図の前線との対応を見ます。このように、ある現象を複数の気象要素や天気図で何重にも確認をとる作業が大切です。

【留意点】

試験での出題頻度は低いですが、日頃の練習では700hPa天気図も見る癖をつけましょう。

【凡例】

700hPa(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で6℃ごとに表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す(図には記載なし)
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「700hPaの高度、温度、湿り域」を記載


850hPa天気図


【主な用途と着目点】

①湿り域の確認
下層の湿り域(T-Td<3)を確認します。確認できたら700hPaの湿り域、レーダーエコーや衛星画像の雲域、地上天気図の前線との対応を見ます。

700hPaで湿り域がなければ、それより下層で雲が発生していると判断できます。

②等温線の確認
等温線の形状を確認します。北側に盛り上がっている、等温線が集中しているなどは、顕著現象につながる可能性があります。他の気象要素や天気図との関連性を見ながら、さらに分析します。

③温度場の確認
850hPaで−6℃以下だと雪の目安だと言われますが、−9℃であれば確実に雪になります。

【留意点】

等温線の確認は「850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図」(AXFE578)の方が使いやすいです。

等温線が実線ではっきり書かれていること、低気圧の解析に必要な温度移流や鉛直流が記入されていること、また等温線の間隔が通年で3℃単位で記入されているためです。

【凡例】

850hPa(解説入り).jpg


①等高度線 実線で60mごとに表示
②等温線 破線で3℃ごと(4〜11月)、もしくは6℃ごと(12〜3月)に表示
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す(図には記載なし)
⑤Lマーク 低気圧の中心を示す
⑥Hマーク 高気圧の中心を示す
⑦記載の気象要素 「850hPaの高度、温度、湿り域」を記載


850hPa天気図の等温線は暖候期(4〜11月)は3℃単位、寒候期(12〜3月)は6℃単位で記入されます。間違えやすいので、等温線が何℃おきに引かれているのか、併記された温度表示で確認する習慣をつけると良いです。

AUPQ利用上の留意点


AUPQの実況図を見るときの共通の留意点について記しておきます。

1500m超、3000m超の領域表示

高標高地域.png


AUPQでは標高が1,500m以上のところを縦線(図では緑色)、3,000m以上のところを格子(図では茶色)で表示されています。

これが問題になるのはチベット高原です。チベット高原は平均高度が4千メートルを超します。当然、850hPaや700hPaの天気図では風は観測されません(地中になってしまう?)。

上図は700hPa天気図ですが、 3,000m超の領域(茶色)では風が観測値が記入されていないのが確認できます。

500hPa天気図では、この網かけ領域から出てきた風については、利用上の大きな問題はないそうです。

チベット付近の地形がどうなっているのか、Google Earthで一回確認しておくと関心が湧きます。Google Earthだと実際の標高がメートル表示されるので、Googleマップより良いと思います。


AXFE578

観測データをもとに渦度、鉛直p速度(上昇流・下降流)などを数値解析した天気図です。

学科の専門知識で数値予報の流れを学ばれたと思います。AXFE578は、

「観測データ収集 → 客観解析 → 初期値化 → 予想値」

という一連の流れの中で、「初期値化」により作成された天気図です。言い換えると、数値予報の計算をするために、観測データに基づいて作成された初期値であり、今の状態を表しています。

初期値なので「T=00」と記載されています。

図の構成


AXFE578

AXFE578_3.jpg


AXFE578は1枚が2等分され、上半分に500hPa高度・渦度解析図、下半分に850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図が掲載されています。

500hPa高度・渦度解析図


【主な用途と着目点】

①トラフの解析
トラフの前面は発散場になっているため、上昇流による雲が発生することがあります。これから日本に接近してくるトラフ、中でも今後深まりそうなトラフを監視します。

トラフを見つけるには正渦度極大値が目安になりますが、曲率の大きいところからは外れていることも多いです。また風速により正渦度が発生することもあるので、あくまでも目安です。

②正渦度域の確認
正渦度域の形状やどこに広がっているかに注目します。例えば梅雨の時期には、前線に沿って帯状の正渦度域がのびることがあります。

これがいつも役に立つわけではありませんが、このような目線で天気図を見ることが大切です(と教わりました)。

③渦度ゼロ線の確認
正渦度域と負渦度域の境界は「渦度ゼロ線」と言い、強風軸になっているものがあります。

渦度ゼロ線はたくさん解析されますが、数値解析による結果なので細かいものにはこだわらず、大きな目線で組織的である程度の規模があるものを見ます。

ジェット気流(偏西風)による強風軸は地衡風なので、概ね等高度線に沿ったものになります。


【凡例】

500hPa高度・渦度(解説入り).jpg



①等高度線 実線で60mごとに表示
太実線で5100m、5400m、 5700mを表示
②正渦度極大値 正渦度の極大値
③正渦度域 縦縞で表示
④Hマーク 高気圧の中心
⑤Lマーク 低気圧の中心
⑥渦度ゼロ線 正渦度域と負渦度域の境界を実線で表示
⑦等渦度線 破線で40X10^-6(1/s)ごとに表示


850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図


【図の概要】

850hPaの気温(等温線)と風(風向、風速)と、700hPaの鉛直流(上昇流、下降流)が1枚の図に重ねて書かれています。

この図は低気圧の発達を見るのに最も重要な図です。

【主な用途と着目点】

①等温線の形状の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で等温線が集中し、低気圧の前面で北に盛り上がっていることは低気圧が発達する条件のひとつです。この形状は温度移流によりもたらされている可能性があるので、次のステップ②に進みます。

なお、温度線が1本だけ北に盛り上がっていることもあります。すべてのケースでその原因を特定することは困難ですが、なぜそうなっているのか色々と推測してみることは良い練習になります。

②温度移流の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面で低気圧の前面に暖気移流、後面に寒気移流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。

強い風が集中している等温線と鋭い角度(90度近く)で交わっていれば、「強い暖気(寒気)移流がある」ことになります。

③鉛直流(上昇流)の確認
地上に低気圧が解析されているとき、850hPa面でその前面で上昇流があり後面で下降流があることは低気圧が発達する条件のひとつです。湿った空気が上昇を続ければ対流性雲を発生し、天気は崩れます。


【凡例】

850hPa気温と風・700hPa園直流(解説入り).jpg



①等温線 実線で3℃ごとに表示
②風向・風速 風速の単位は(m/s)
③Cマーク 寒気の中心を示す
④Wマーク 暖気の中心を示す
⑤上昇流域 上昇流域を縦線で表示
⑥鉛直p速度 鉛直p速度を数値表示
プラスは上昇流、マイナスは下降流


FXJP854

FXJP854は「850hPa風・相当温位の予想図」です。予想図なので、本来実況図の分類には入りません。

しかし、天気の悪化要因である暖湿気の流入を見るのに850hPa風・相当温位の天気図は欠かせません。そこで12時間前の「850hPa風・相当温位の12時間予想図(T=12)」を実況図に準じて取り扱います。

FXJP854準_3.jpg


【主な用途と着目点】

①相当温位線の集中帯
西日本の梅雨は、相当温位線の集中帯の南端に前線が表現されます。

②暖湿気の流入
高い相当温位線を横切って風が吹くと、暖湿気が流入します。暖湿気が何Kなのかは季節により変化します。夏季には345K、秋季は336Kが目安だと思います。

③低気圧性循環・高気圧性循環の確認
地上低気圧の上空で低気圧性循環(左回りの風)や高気圧の上空で高気圧性循環(右回りの風)があれば、それだけしっかりとした低気圧、高気圧であると言えます。


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天気図の解析練習①(準備編) [知識]

3回に分けて天気図の見方をまとめてみたいと思います。

1回目は天気図を解析する準備として、天気図の種類や入手法などについてです。

P9038160.jpg


私は山登りをするので、私が天気図を解析する理由は、これからの天気・天候の変化を見るためです。

山に行く直前だけ天気図を見るのではなく、解析を普段から継続することで作業に慣れるだけでなく様々な勘が養われます。

気象は連続して変化していくので、この先の予測資料だけを見るのではなく数日前からの変化を追跡することも大切だと思います。

例えば、一昨日はバイカル湖の南にあったトラフが沿海州に南東進するというプロセスを追跡することで、トラフの盛衰を見ることができます。これでトラフが深まるということが分かれば、低気圧の発達を判断する材料の一つになります。これは日々の天気図の変化を追うことで可能になります。

また、天気を予測することが最終目標だとしても、基本は実況解析(現在の天気を理解すること)です。

実況の解析には基本的な作業が含まれるし、そもそも実況は資料は種類も多いからです。

レーダーエコーや気象衛星画像を見ると、「天気はどうなる?」という問いに対する「答え」が分かります。実況解析で、なぜこの答えになったのかを考えることが、明日以降の予測をする実力を養ってくれます。


天気図の種類

掲載範囲や予測時間に応じて凡そ90種類の天気図があります。

天気図は大きく実況図(解析図を含む)と予測図に分類できます。850hPaより上空の天気図を高層天気図と呼ぶこともあります。

気象予報士の実技試験でよく出題される天気図は次の通りです。

実況図


ASAS(アジア太平洋域実況天気図)
実況の地上天気図です。テレビや新聞でおなじみのSPAS(速報天気図)は日本付近中心の天気図で、試験では出題されません。

AUPQ35(アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図)
・1枚に300hPa面と500hPa面の天気図が掲載されている実況図です。

AUPQ78(アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図)
・1枚に700hPa面と850hPa面の天気図が掲載されている実況図です。

AXFE578(極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図)
・1枚に500hPaの高度・渦度と、850hPaの温度・風と700hPaの上昇流が掲載されている解析図です。

予測図


FSAS24/48(アジア太平洋域予想天気図)
・地上天気図の予想図です。
・24時間先(FSAS24)と48時間先(FSAS48)があります。

FXFE502/504/507
・1枚に500hPa高度・渦度の予想図と、地上気圧・降水量・風の予想図が掲載されています。
・502には12時間と24時間の予想図、504には36時間と48時間の予想図、507には72時間予想が掲載されています。

FXFE5782/5784/577
・500hPa気温、700hPa湿数の予想図と、850hPa気温・風、700hPa鉛直流の予想図が掲載されています。
・5782には12時間と24時間の予想図、5784には36時間と48時間の予想図、577には72時間予想が掲載されています。

FXJP854
・850hPaの相当温位・風の予想図が掲載されています。
・1枚に12時間、24時間、36時間、48時間の予想図が掲載されています。


以上の天気図の名称を覚える必要はまったくありません。

どの気象要素を表現した天気図があるのかを頭に入れておくことが大切です。これは暗記するのではなく、日々の解析を繰り返すことで自然と身についていきます。


天気図の発表時刻

天気図は決まった時刻(観測時刻)のものが発表されますが、気象庁での解析時間を要するために実際に配信されるのはこれよりも数時間後になります。

ASAS
・観測時刻は3、9、15、21時の4回
・発表時刻は、観測時刻の約2時間半後

高層天気図
・観測時刻は9、21時の2回
・発表時刻は、観測時刻の約3時間半後

高層天気図は世界で同一時刻に観測されています。そのため、通常はUTCという協定世界時で表記され、00UTC(通称マルマルUTC)と12UTC(通称イチニーUTC)に観測することになっています。

UTCの時刻に+9すると日本の時刻になります。
例)UTC 1月9日00UTC →日本 1月9日9時


天気資料の入手方法

天気資料をダウンロードして入手するには、無料サイトと有料サイトがあります。

前項であげた天気図であれば、無料サイトから入手可能です。過去の天気図や、より専門的な予測資料の入手には有料サイトが便利です。

私が日常的に使っているサイトをあげておきます。

【北海道放送(HBC)】
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html
最新の天気資料が掲載されているので、日々の解析に利用しています。
過去資料も2週間分保存されています。普段の解析練習をするには、本サイトだけで十分です。

【Sunny Spot】
https://www.sunny-spot.net/chart/chart_archive.html?area=0
過去2年分の天気資料が掲載されているので、少し前の天気図を見たいときに利用しています。

【日本気象】
https://n-kishou.com/ee/exp/exp.html
気象予報士になってからは、解説資料(短期予報解説資料、週間予報解説資料)や週間天気図を見るのに利用しています。

【気象庁】
レーダーエコーと衛星画像をダウンロードするのに使っています。
いずれも直近の5日分が保存されています。5日を経過すると削除されてしまうので、高層天気図の発表時刻に合わせた9時、もしくは21時の画像を保存しています。

レーダーエコー
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/imgs/radar/000/ファイル名

赤外画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/ファイル名

可視画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/visible/1/ファイル名

水蒸気画像
http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/ファイル名

ファイル名は
「西暦」+「月」+「日」+「時刻(24時間)」+「-00.png」です。
例えば2019年1月9日9時ならば「201901090900-00.png」となります。

【ウェザーニュース Labs Channel】
http://labs.weathernews.jp/data.html
有料サイト(月額324円)です。2000年以降のあらゆる天気資料に加え、GSM、MSMのGPVも入手可能です。


天気図は印刷するべきか?

IMG_9053.jpg


天気図を見るたびに印刷していると、紙とトナーをどんどん消費していきます。エコの観点からも、印刷は必要最小限に抑制すべきです。

「必要最小限な天気図」とは、紙に出力しないと利用しづらいものです。私はAUPQ35(強風軸を色ぬりするため)ぐらいで良いと思いますが、AXFE578(500hPaトラフを記入)やFXJP(風の循環や暖湿気の流入を記入)があっても良いでしょう。

印刷しない天気図はモニターで閲覧します。印刷では読み取りにくい細かい表示も、拡大して見ることもすぐにできます。

スマホで学習されている方は、21.5インチ程度のモニターの購入をお勧めします。


最後に

天気図の解析を始める前に知っておくべきことをまとめました。

2回目は「天気図の読み方」、3回目は「天気図解析の実際」をまとめる予定です。

私自身まだ修行を始めて間もないので、誤りなどに気付かれた方はご指摘いただけると幸いです。


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強風軸解析を理解しよう [知識]

(2019.1.22 修正)
寒帯前線ジェットと亜熱帯ジェットの成因の説明を修正しました。
(2020.5.10 修正)
亜熱帯ジェット気流(Js:Subpolar Jet)をSubtropicalに修正しました。

受験勉強をしているとき、強風軸解析ってなんだかよく分かりませんでした。その最大の理由は、強風軸解析を何のために行うのかが分からなかったからです。

ジェット気流をイメージしてみよう

ジェット気流は偏西風の特に強い部分


日本の上空には偏西風が吹いています。偏西風自体はさまざまな風速の風の集合体ですが、その中でも風速の強い部分をジェット気流と呼んでいます。「偏西風の軸」と呼ばれることもあります。

ジェット気流は長さ数千km、幅が数百km、深さが数kmあり、チューブ形をしていると考えられます(図1)。


jet-image 2.png

(図1)ジェット気流のイメージ

出典:(参考1)

図において、チューブの内側に行くほど色が濃くなっていて、風速が強まっていることを表します。ジェット気流の中で、最も風速の強い部分を「ジェットコア」あるいは「ジェット軸」と呼んでいます。

※WMO(世界気象機関)によるジェット気流の定義は(参考2)の14頁に紹介されています。

2種類のジェット気流がある


ジェット気流は大気の循環により発生しますが(後述)、その成因によって寒帯前線ジェット気流(Jp:Polar Jet)と亜熱帯ジェット気流(Js:Subtropical Jet)の2つに分類されます。

冬の時期には寒帯前線ジェットが北系(Jpn)と南系(Jps)の2本に分かれ、全部で3本のジェット気流が解析されます。

ジェット気流にはJs(亜熱帯ジェット)とJp(寒帯前線ジェット)の2本があると覚えましょう。

ジェット気流はなぜできる?


寒帯前線ジェットと亜熱帯ジェットでは、その成因が異なります。

角運動量保存則でできる亜熱帯ジェット

赤道上空にある空気はハドレー循環により北方向へ向かい、緯度30度付近で下降します。中緯度帯では赤道よりも空気の回転半径が小さいため、空気が東へ動く速さが増します(角運動量保存則によります)。

※「回転半径が短くなるほど回転速度が速くなる」というのが角運動量保存則です。

傾圧大気でできる寒帯前線ジェット

北緯30〜50度では高緯度と低緯度で傾圧大気となっているため、温度風の関係で西風が吹きます。


強風帯と強風軸

ジェット気流とジェットコア、強風帯と強風軸、この似たような言葉の違いにモヤモヤしたことがある方も多いと思います。

ここでは私なりの解釈を披露してみたいと思います。

強風帯はジェット気流を等圧面で輪切りにしたもの


ジェットコアはジェット気流の中で風がもっとも強い領域のことでした。強風軸と強風帯についても、同じような関係があります。

強風帯の「帯」という字に注目してみます。「一帯」という言葉があるように、「帯」には「領域」「エリア」という意味があると連想されます。

しかし、ここでは「帯」を文字通り「おび」とすると、強風帯は風の強い領域が平面に広がっていると考えられます。

もう少し言うと、ジェット気流をある等圧面で水平に輪切りにすると、その断面が帯状に広がっています。これが強風帯です。アボガドやマンゴーを縦に割ったイメージでしょうか。

その平面の中でも強い風が吹いている部分を強風軸と呼んでいます。

図1に等圧面を2面、書き込んで見ました(図2)。

jet-image3.png
(図2)強風帯のイメージ


等圧面1による断面では、すべてのジェット気流がこの等圧面を横切っており、強風帯を検出することができます。

一方、等圧面2による断面ではジェット気流がそこまで垂れ下がっていないため、強風帯を検出できないことが分かります。

強風帯は下層に垂れている


ジェットコアは対流圏界面付近を吹いていますが、300hPaや500hPaの等圧面でも強風帯が解析されます。それは先に述べたように、ジェット気流がチューブのような形をしていて、下層まで垂れているからです。

等圧面は気圧の等しい面であり、高度(メートルで表した高度)はまちまちです。したがって、強風帯を等圧面で見ると、途中で途切れ途切れになっていることがあります。

これは強風帯が実際に破断しているのではなく、鉛直方向に蛇行しているために等圧面では表現されないことがあるのです。

jet&zensen1.png

図3 ジェット気流とジェットコア


図3は図2を少し書き換えたものです。緑色で表されたジェット気流が下層まで垂れ下がり、等圧面(例えば500hPa)を横切っているところを「強風軸解析」するわけです。


なぜ、強風軸に着目するのか?

天気図の特徴が把握できる


300hPaは地上のように気象要素の変化を即時的に反映しない代わりに、大きな傾向を示していると理解することができます。

例えば、ジェット気流を解析した結果、南西風が入っていることが分かれば、天気が荒れることが予想されます。

梅雨の時期には、亜熱帯ジェットの位置から梅雨の進み具合を知ることができます。梅雨の始まり(5月上旬)頃、亜熱帯ジェットはチベット高原の南側を吹いています。

これが梅雨後半(6月下旬)になると、チベット高原の北側を吹くようになります。この頃には高原が熱せられて、チベット高気圧が形成されるようになります。

このような大きな場の傾向を頭に入れておくと、下層の天気図の解析がやりやすくなります。

天気の予想に役立つ


ジェット解析をすることで、発達したじょう乱の今後の動きを予測することもできます。

例えば発達した温帯低気圧は鉛直方向に熱輸送がされて高い高度に達しているので、ジェット気流に流されていきます。

また、温帯低気圧に伴う前線は閉塞すると、低気圧の中心が強風軸の北側に移り、閉塞点が強風軸の真下に位置します。したがって、地上低気圧の中心と強風軸の相対的な位置関係を見ることにより、低気圧の発達状況を把握することができます。


強風軸解析の手法

強風軸解析のやり方は、用いる天気図に応じて異なります。ここでは300hPaと500hPaの解析図(AUPQ35)を用いた強風軸解析法を解説します。

北半球ではJs(亜熱帯ジェット)とJp(寒帯前線ジェット)の2本のジェット気流が解析されるのが基本です。ジェット気流を解析するときは「ジェットは2本ある」ことを念頭に行いましょう。

300hPaの強風軸解析


ジェット(ここでは「強風軸」と同義で使っています)が現れる高度はだいたい決まっています。必ずこうなるというものではありませんが、解析時の目安になります。

【300hPaのジェットの高度】
亜熱帯ジェット(Js)・・・・9,600m
寒帯前線ジェット(Jps)・・・9,360m
寒帯前線ジェット(Jpn)・・・9,000〜9,120m


ステップ1 季節に応じて、強風帯の風速を決める

季節に応じてジェットコアの現れる高度は変動します。これは大気の気温に応じて、層厚の関係で圏界面高度が上がったり、下がったりするからです。

冬季には圏界面高度が下がるので、300hPaでもかなりの強風が観測されます。一方、夏季は圏界面高度が上がるため、冬季ほどの強風は観測されません。

これを踏まえて、夏季と冬季では強風軸として検出する風速を変えます。

【強風帯の目安】
 夏季・・・60kt程度
 冬季・・・80〜100kt

この数字はあくまでも目安です。いずれの季節においても、強風帯があまりに広くなりすぎれば風速を20kt上げてみる、あるいは逆に狭すぎれば風速を20kt下げてみるという調整をします。


ステップ2 強風帯を検出し、色づけで強調する

ステップ1で決めた風速以上の領域を強風帯として、分かりやすくするために色鉛筆で塗りつぶします。ちなみに気象庁では、強風帯を紫色で塗っています。

天気解析では複数の天気図を見比べます。その際に大切なのは強風帯、湿潤域、降水域、正渦度移流域など、お互いに関連のある領域が重なっているかを比較することです。

特定の領域に色を塗っておくことで、後ほどの見比べ作業が格段にやりやすくなります。

ステップ3 強風軸を検出し、線で引く

最後に、ステップ2で塗った領域の中で風速の大きい部分を滑らかな線で結びます。


実例

ここでは2月の事例で考えてみます。冬季なので、80ktの等風速線を目安とします。

300hPaの実況図には、破線で等風速線が書かれています。風速80kt以上の領域を探して、紫色で塗ります。色で強調することで、全体の傾向を捉えやすくなります。

「80」とスタンプが押されている等風速線を一回なぞって、その枠内を塗るとやりやすくなります。

一方向からなぞっていくと自分の追っている破線を見失うことがあります。また、いろんな線やスタンプが重なっていると、途中で混乱してきます。

そんな時には、以下の手を試してみてください。

【等風速線の追っかけ方】
・一方向から追うのをあきらめて、反対側から追っかけてつないでみる
・周囲の風速を見て、塗る枠内には80kt以上の矢羽しかないことを確認する

等風速線は解析されたものなので、必ずしも滑らかな曲線にはなっていません。時には鋭角に折れ曲がることがあるのも頭に入れておきましょう。

できあがったものがこちらです。

2018-02-08-2.png

図4 300hPa強風帯と強風軸


500hPaの強風軸解析


500hPaの解析図には風速が矢羽で表示されているので、強いところをつないでいくことで強風軸を解析することができます。

ただし、300hPaのような等風速線は書かれていないので、500hPaでは強風帯を解析することはできません。

ステップ1 季節に応じて、強風帯の風速を決めます。

500hPaの強風軸は、300hPaよりも20ktほど弱くします。したがって、冬季の目安は60〜80ktです。

ステップ2 強風軸をつなぎます。

ステップ1の強風軸の風速を目安に、強い風が吹いているところをつなぎます。
東に行くほど高度線の間隔が狭まり地衡風が強まるので、これに並行に記入します。

2018-2-8-00UTC 2.png

図5 500hPa強風軸


参考: 夏季と冬季の強風帯の違い


夏季と冬季の強風帯の違いを実例で見てみます。

以下に示すのはAXJP140という高層天気図です。東経140度で大気の鉛直断面を取り、西方向から見ています。縦軸は気圧(高度)、横軸は緯度です。

断面図には等風速線(破線)、等温線(細実線)、等温位線(太実線)の3種類の線が引かれています。ここでは破線の等風速線に注目します。

まずは夏季(2017年8月)の断面図から見てみましょう。

2017-8 2.png


300hPaのところに赤線を引いてあります。300hPaの高度で検出できる最大風速は40kt(紫色で塗った領域)であることが分かります。

次に冬季(2017年2月)の鉛直断面図です。

2017-2 3.png


同じように、300hPaでは最大風速で140ktの風が検出できます。

このように、夏季は圏界面の高度が上がってしまうため、強風帯の条件を緩めないと検出できなくなります。

逆に、冬季は圏界面の高度が下がるので、強風帯の条件を厳しくしないとならないことがお分かりいただけると思います。


さいごに

強風軸の位置は季節に応じて変動します。

日頃から強風軸の解析を習慣にしておくと、強風軸の変動を肌で覚えることができるようになります。

パソコンの画面上で分かった気にせずに、紙にプリントアウトしてやってみましょう。週1回程度でも構わないので、継続することをお勧めします。


参考文献:
(参考1)「羽田空港 WEATHER TOPICS」(東京航空地方気象台)
(参考2)「気象衛星画像の解析と利用 --航空気象編--」(気象衛星センター)


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雪の防災事項 [知識]

冬季の気象情報には雪による災害に注意を促すものがあります。雪国の出身でないと分かりにくいものについてまとめてみました。

今回のポイント

・暴風雪やふぶきにより交通機関は大きな影響を受ける。
・着雪の重みで電線などが切断され停電が発生する。
・雪による農業施設の被害額は農作物の10倍に及ぶ。


雪の防災事項

雪による主な防災事項には以下のようなものがあります。

・大雪による交通障害
・積雪や路面凍結による交通障害
・吹きだまりによる交通障害
・降雪による視程障害
・電線や架線、樹木などへの着雪
・農作物や農業施設の管理

(注)なだれと落雪に関する防災事項は省略してあります(現在、情報収集中のため)。

種類として多いのが交通障害に関するものです。その要因としては「大雪」「積雪や路面凍結」「吹きだまり」です。

交通障害とは鉄道や飛行機にあっては運休や遅延、自動車にあっては発進不能や立ち往生の発生です。

列車運休.png

出典:HBC北海道放送

また、降雪やふぶきによる視程障害は自動車運転に支障を与えます。その他には、電線や架線、樹木などへの着雪、農作物や農業施設の被害があります。

東京出身の自分が分かりにくかったものをまとめてみました。


吹きだまりによる交通障害

吹きだまりとは、雪が風に吹かれて1か所にたまったところのことです。

自動車が吹きだまりに突っ込むと雪に乗り上げてしまい、動けなくなります。また、停車中の車両の周りに吹きだまりができると発進できなくなったり、排気管が吹きだまりにより塞がれ車内に排気ガスが流入する危険があリます。

車列の先頭の車が止まってしまうと後続車が軒並みストップしてしまい、被害が拡大します。

トラック立ち往生.png

深さ20センチの吹きだまりでも車は動けなくなると言います。近くに避難できる場所がないところで吹きだまりにはまってしまった場合は、排気ガスによる中毒防止のためにエンジンを切って車内で待ちます。

しかし、平成25年(2013年)3月、北海道で暴風雪の中、立ち往生した車の中で娘を抱きかかえたまま力尽きた父親のニュースがありました。

北海道湧別町.png

大雪注意報、暴風雪注意報の時はできるだけ自動車で外出しないこと、もし運転するなら防寒具、手袋、長靴、スコップを準備しておくことが大切です。


降雪やふぶきによる視程障害

暴風に加えて雪を伴うことによる視程障害などによる重大な災害のおそれがあるとき、暴風雪警報が発表されます。

雪が舞い上がると視程障害、いわゆるホワイトアウトが発生し、数メートル先も見えなくなります。このため自動車は立ち往生してしまいます。

ホワイトアウト.png

東日本高速道路(株)新潟支社管内の冬季の通行止めの50%以上が降雪による視程不良だと言います。

500台立ち往生.png

対策としては、道路防雪林や防雪柵、視線誘導施設の整備、視界情報の提供や交通規制などが行われます。


電線や架線、樹木などへの着雪

0℃前後の雪は着雪しやすく、電線にも着雪します。雪の重みで電線の切断、送電線のショート、送電鉄塔の倒壊が発生すると停電となります。

鉄塔倒壊.png

山奥で送電線が切断するとバックカントリーのスキーで入山して修理をするそうです。

ほくでん.png

出典:北海道電力

高速走行中の鉄道の車体に雪が付着すると、落下した着雪がバラスト(線路の砂利)を跳ね飛ばす危険性が高くなります。この予防として速度を落として運転するため、遅延が発生します。


農作物や農業施設の管理

農作物は茎が折れたり枯れたりして出荷できなくなるほか、畜産は換気不足が発生します。しかし、被害金額では農業施設の損害が大きいようです。

農業用施設とは農畜産物の生産、集荷、貯蔵などに使われる施設です。具体的にはハウス(ビニールハウス、パイプハウス)、育苗施設、牛舎、鶏舎、養殖施設などがあります。

積雪により施設倒壊が発生しますが、農道の除雪が進まないために全容把握と復旧には時間を要することがあります。また、生乳を集める集乳車が積雪のため回れず、廃棄を余儀なくされることもあります。

ハウスの倒壊.png

出典:京都新聞

統計によると農業施設の被害額は農作物の10倍ほどになります。対策としては冬期間に使用しない施設の撤去、補強、除雪作業に支障となる物を移動します。


参考文献:
吹雪時の視程障害度の評価に関する研究(寒地土木研究所)
http://www2.ceri.go.jp/jpn/pdf2/panf-200907-poorvisibility.pdf
北海道地方における暴風雪に対する取り組み(札幌管区気象台)
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/21/Appendix1.pdf
電線着雪災害の変遷とその研究史(北大低温科学研究所)
http://www.eng.hokudai.ac.jp/nds/311.pdf
吹雪はこんなに恐ろしい!もしもの時に身を守る方法(防災科学研究所)
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20131212.html
できていますか?暴風雪への備え(北海道総務部)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/ktk/bsb/snow_p.htm
平成28年から29年冬期の大雪等による被害状況(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/saigai/teion/20170111.html


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気象情報のことを知ろう [知識]

気象情報って地味な存在で、直接目にする機会は少ない気がします。テレビやラジオの天気予報の元になっていて、間接的には触れているのですが・・・。「気象庁では注意を呼びかけています」というアレです。

実技試験では「天気図を見て気象情報を作成しなさい」なんて問題は出されません。が、過去には気象情報が虫食いになっていて、穴埋めをする出題がありました。

気象情報にはパターンがあるので、典型例から気象現象とその災害や重要なキーフレーズを学びましょう。

気象情報には種類があるんです

気象情報は対象となる地域、対象となる現象によって分類されます。また、その目的によって発表されるタイミングが異なります。

以下でそれぞれを見ていきましょう。

分類①: 対象となる地域

気象情報は対象とするエリアに応じて、全国を対象とする「全般気象情報」(気象庁予報部)、地方予報区(全国に11)を対象とする「地方気象情報」(管区気象台や沖縄気象台など)、都道府県を対象とする「府県気象情報」(地方気象台)があります(()内は発表元です)。

「気象情報」という名称はつかないものの、「台風情報」「潮位情報」も気象情報のサイトで発表されています。また、「記録的短時間大雨情報」「竜巻注意情報」「土砂災害警戒情報」も気象情報の一つとされています。

さて、こちらは気象庁の組織図です。

気象庁の組織.png

予報部というのは本庁の内部部局です。
予報課.png
出典:人事院資料

管区気象台は地域を統括する地方支分部局として、広域的な地域を管轄しています。東京、札幌、仙台、大阪、福岡の5台ですが、沖縄気象台も管区気象台と同列に並んでいます。

地方気象台は50あります。なぜ47以上あるかというと、例えば北海道には6気象台があります。一方で、東北地方は6県あるのに5気象台しかないというように、1都道府県=1地方気象台となっていないからです。

分類②: 対象となる現象

気象情報が発表される現象には大雨、大雪、暴風、突風、暴風雪、高波、低気圧、雷、降ひょうなどがあり、多くはこれらの組み合わせで発表されます。また、記録的な大雨、発達する低気圧、日照不足と長雨、強い冬型の気圧配置、黄砂に関する気象情報や台風情報もあります。

2016年10月〜2017年9月の期間に発表された全般気象情報を分類してみました。

【2月〜5月に多かった気象情報】
雷と突風及び降ひょうに関する全般気象情報
暴風と高波及び雷に関する全般気象情報
暴風と高波及び大雨に関する全般気象情報
雷と突風に関する全般気象情報

【5月に多かった気象情報】
黄砂に関する全般気象情報

【10月〜5月に多かった気象情報】
大雨と雷及び突風に関する全般気象情報
記録的な大雨に関する全般気象情報
雷と突風及び降ひょうに関する全般気象情報

【11月〜2月に多かった気象情報】
大雪に関する全般気象情報
大雪と高波に関する全般気象情報
大雪と暴風雪及び高波に関する全般気象情報
大雪と暴風雪に関する全般気象情報
大雪に関する全般気象情報
強い冬型の気圧配置に関する全般気象情報
暴風雪と高波及び大雪に関する全般気象情報
暴風雪と高波に関する全般気象情報
発達する低気圧に関する全般気象情報

気象情報はどんな顔つきをしているの?

気象情報は情報名と番号、発表日時、発表元、見出し、本文で構成されています。

番号は「第◯号」という形で通常は通番がふられています。しかし気象庁予報部が発表する全般気象情報のみは、なぜか番号が飛び飛びで欠番があります。

見出しには気象現象の概要と注意すべき防災事項が簡略に2〜3文ほどで記載されます。これに続く本文はかなり長文のことがあるので、見出しだけで内容がすぐに分かるように書かれています。

本文はおおむね気象概況、防災事項、補足事項で構成されています。防災事項には予想される雨量や最大風速、波の高さが記載されることもあります。

関東甲信地方気象情報_2.png

どんな時に発表されるの?

気象情報が発表されるタイミングは目的に応じて決まっていて、次の4つです。

①警報や注意報に先立つ注意の喚起
現象が発生する24時間程度前に発表されるもので、顕著現象の発生に対する注意を呼びかけるものです。

②現象の経過、予想、防災上の留意点等の解説
警報や注意報がすでに発表されている時に追加で発表されるもので、現象の経過、予想、防災上の留意点等を解説するものです。これには「竜巻注意情報」「土砂災害警戒情報」も含まれることから分かるように、「警報」「注意報」「気象情報」は一体のものとして発表されています。

③記録的な短時間の大雨を観測したときの、より一層の警戒呼びかけ
数年に一度しか起こらないような記録的な短時間の大雨を観測したときに、より一層の警戒を呼びかけるものです。「記録的短時間大雨情報」がこれに該当します。

④社会的に影響の大きな天候についての解説など
社会的に影響の大きな天候について注意を呼びかけたり、解説したりするものです。長雨や少雨、低温などの気象情報が該当します。

気象情報を見たいと思った方は、今すぐこちらからどうぞ!
気象情報: http://www.jma.go.jp/jp/kishojoho/


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千島近海って? [知識]

実技試験では時折、地名や海域名を問われることがあります。気象庁のホームページに掲載されている地名と海域名は最低限、白地図で特定できるようにしておきたいものです。

全般気象情報などに用いるアジア・北西太平洋域の地名、海域名
全般気象情報などに用いる日本付近の地名、海域名

今回は、第48回試験(2019年度第1回)実技1で問われた「千島近海」を取り上げ、この海域名がどのような文脈で登場するのかを調べたいと思います。

千島近海を確認しよう

まず、千島近海の場所を確認しておきましょう。気象庁のホームページでは下図のように示されています。

千島近海.jpg

出典:気象庁(原本の破線表示を赤線で表示した)

気象庁「日本および日本の周辺を個別的に表す地名」には「北方四島は千島列島に含めない。」とあります。

しかし上図をみる限り、千島近海は北海道東部から北方四島も含めたカムチャッカ半島南端までの海域を指しているように見えます。

千島近海には、北太平洋やオホーツク海から千島列島に沿って南下し、日本の東まで達する寒流が流れています。これを一般的には「親潮」と言いますが、「千島海流」と呼ぶこともあります。親潮は魚類や海藻類を養う栄養分に富んでいます。

ちなみに、道東では夏の時期、太平洋高気圧からくる暖かく湿った空気が親潮に冷やされて、濃霧が発生します。このような霧を「移流霧」と言うのでしたね。

①台風の墓場として登場!

千島近海の海域名が登場する一つ目の事例は、「台風の墓場」です。台風の墓場とは私が勝手に名付けた名称ですが、台風が温帯低気圧に変わった後の向かう先の一つということです。

2016年の台風5号で見てみましょう。台風5号は8月4日に発生し、10日に温帯低気圧に変わりました。

台風5号の経路図を見ると、10日に千島近海を通過しているのが分かります。(経路の左に書いてある数字が通過日です。)

2016年台風5号.png
出典:気象庁

この台風について、次のように報道されています。

(2016年8月5日配信)
熱帯低気圧は小笠原の南海で台風5号に変わり、発達しながら北寄りに本州方向に接近している。気象庁は、来週以降、日本の東から千島近海に抜けるものとみて、今後の動向を注視している。(以下略)

(2016年8月10日配信)
台風5号は千島近海で温帯低気圧に変わりました。今日の日本付近は広い範囲で高気圧に覆われますが、湿った空気の影響を受ける所があるでしょう。(以下略)

台風は千島近海で温帯低気圧になったことが報じられています。温帯化時に984hPaだった低気圧は、その後988hpaに弱まった後、再度984hPaに発達しました。このように、台風は温帯低気圧に変わった後、発達することが多いので注意が必要です。

ではもう一つ、2017年の台風22号(10月)を見てみましょう。

(2017年10月30日配信)
台風22号は29日午前に九州・四国沖、午後から夜に東海・関東沖を東北東へ進み、30日午前0時に三陸沖で温帯低気圧に変わった。(中略)温帯低気圧は発達しながら北上し、30日朝に千島近海へ進む見込み。気象庁は引き続き暴風や高波、土砂災害に警戒するよう呼びかけた。(以下略)

これは10月29日22時32分発表の気象情報「平成29年 台風第22号に関する情報 第79号」に基づいた報道と思われます。

台風22号_79.png


9月、10月に発生する台風は太平洋高気圧の縁辺に沿って北東進するため、千島近海に至るものが多いのですね。

②冬の気圧配置にも登場!

二つ目の事例は、冬の気圧配置として有名な「西高東低型」の低気圧の居場所として登場してきます。

2016年3月1日の事例で見てみます。前日の午後から低気圧が急速に発達し、1日の北海道では暴風が吹き荒れ、最大瞬間風速は襟裳岬で41メートル、札幌は33.8メートルとなりました。

2016-03-01-1500.png

このように急速に発達する低気圧は、一般には爆弾低気圧と呼ばれます。これについて、1日の産経新聞は次のように伝えています。

発達した低気圧は1日午後、千島近海を東に進み、北海道付近は強い冬型の気圧配置が続いた。暴風雪の峠は越えたが、気象庁は引き続き2日昼前にかけて猛吹雪、吹きだまりや大雪による交通障害、高波、強風、雪崩に警戒を呼び掛けた。(以下略)

全国的にも北風が強く、北海道から本州の日本海側は所々で雪の降り方が強まり、青森県の酸ヶ湯では積雪が3メートルを超えました。

気象衛星画像を見ると、日本海側から太平洋にかけて筋状の雲が現れています。

衛星画像2016-03-301.png

大陸からの離岸距離はある程度空いているので、猛烈な冷え込みではなさそうです。

梅雨時期の西高東低型でも!?

季節はずれの西高東低型でも雪が降ることがあります。2016年6月2日の徳島新聞は次のように報じています。

(2016年6月2日配信)
低気圧が千島近海に停滞した影響で2日、北海道には北東から冷たい空気が流れ込み、山間部では6月にもかかわらず季節外れの雪が降った。
上川町の大雪山系黒岳(1984メートル)でロープウエーを運行する「りんゆう観光」によると、標高1300メートルの5合目では2日午前6時ごろ、約1センチの積雪が見られた。当時の気温は氷点下2度で、営業担当者は「ゴールデンウイーク以降に雪が降るのは珍しい」と驚いた様子だった。(以下略、一部修正)

気圧配置を見ると、北海道周辺では確かに季節外れの強い西高東低型になっています。

2016-06-02-0900.png

この低気圧は寒冷低気圧で、500hPa面で厳しい寒気が入っていました。

第48回試験の出題

最後に、過去の出題事例で「千島近海」をモノにしておきましょう。

前問で答えた⼆つの低気圧の動きと盛衰について述べた次の⽂章の空欄( ① )〜( ⑤ )に⼊る適切な語句を答えよ。なお,③は16 ⽅位,④は海域名で答えよ。

九州の南岸の低気圧および⽇本海の低気圧は,いずれも12 時間後から24 時間後にかけて中⼼の気圧が( ① )に( ② )する。九州の南岸にあった低気圧は24 時間後から36 時間後にかけて( ③ )に進み,( ④ )に達する。その移動の速さは24 時間後までと⽐較して( ⑤ )なっている。

地上気圧・降⽔量・⾵36 時間予想図を見ると、④の答えは「千島近海」となります。

図4.png


ちなみに、本番試験でビール隊長は「北海道の東海」と回答し、不正解でした。最初は「千島列島」と回答したのですが、見直しをしている時に「④は海域名で答えよ」に気づきました。海域名をたくさん覚えたつもりだったのですが、千島近海は知りませんでした。(^^;


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台風・低気圧の通過による風向の変化 [知識]

台風や低気圧が通過する際、観測点のどちら側(東側か西側か)を通過するかで時間にともなう風向きの変化が異なります。

試験で時々出題されるので暗記しても良いのですが、図解で簡単に理解することができます。この機会に理解しておきましょう。また、試験中に簡単に思い出す方法も教えちゃいます。

なお、以下では台風で説明をしますが、温帯低気圧でもまったく同じです。

風向の変化

台風の通過に応じて風向きがどう変化するかを、段階を追ってみてみます。台風は低気圧の一種なので、風は反時計回り(左回り)に吹き込みます。

観測点に①南から台風が近づき、②観測点を通過し、③北に遠ざかる、に分けて図解します。図の左半分は台風が観測点の東側を通過する場合、右半分は観測点の西側を通過する場合を示します。

台風R2 2.jpg

台風が観測点の東側を通過するケースで説明します。
台風は南から北に進む想定なので、図は下から上に進んでいくことに注意してください。

①台風が南から近づいてくる
観測点には北東の風が吹いています。
※風は吹いてくる方向で向きを表します。「北東の風」とは北東から吹いてくる風のことです。

②台風が観測点の真横を通過する
観測点には北の風が吹いています。

③台風が北に遠ざかっていく
観測点には北西の風が吹いています。

①〜③の順に風を並べると、吹いてくる風の向きは「北東→北→北西」というように、反時計回りに時系列変化することが分かります。

台風が観測点の西側を通過するケースも同様に考えれば、「南東→南→南西」というように、時計回りに変化することが分かります。

以上をまとめます。

台風が観測点の東側を通過する場合 →風向は反時計回りに変化する

台風が観測点の西側を通過する場合 →風向は時計回りに変化する


瞬時に思い出す方法

理屈は分かりました。でも、試験の時は気が動転して、「あれ、西側の時は時計回り?反時計回り?」と混乱してしまいます。

そこで絶対に間違いない覚え方を教えちゃいます。これで憶えれば、確実に思い出すことができます。

平泳ぎで手をかいている様子を思い浮かべてください。

LSスイム.gif


頭が台風で、手のかく向きが風向となります。

自分の進行方向
台風の進行方向です。
左手の動き
台風は東側を通過し、風向きは反時計回りに変化します。
右手の動き
台風は西側を通過し、風向きは時計回りに変化します。

(注意)
何に対して「東側」「西側」なのかを取り違えないようにしてください。
あくまでも「観測点」(右手、左手)に対しての位置関係です。

【おまけ】
とうもろこしが好きな方は、こちらで覚えていただいてもOK!

とうもろこしR1.gif


実例

2017年の台風18号は、図の青色の進路の通り、東京の西側を通りました。

台風18号進路.png

熊谷(埼玉県)のウィンドプロファイラ画像を見ると、確かに風向きの時系列変化は時計回りになっています。

WP熊谷.png

参考までに、2時のレーダーエコー図を載せておきます。

レーダーエコー.png

最後に

台風が東進する場合の風向変化が出題されたことがあります。

これも「平泳ぎ判定法」を使えば瞬殺です。

台風が観測点の北側を通過する場合 →風向は時計回りに変化する

台風が観測点の南側を通過する場合 →風向は反時計回りに変化する


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気象庁のホームページ [知識]

気象庁OBが講師を務める講習会で、

「気象庁のホームページには、すべて目を通してください」

と言われました。

しかし正直言って、気象庁ホームページ(以下、気象庁HP)は作りが悪いです。
どこに何が書いてあるのかさっぱり分かりません。

JMAトップページ.png

そこで今回は、気象庁HPの歩き方を紹介してみたいと思います。


トップページ

説明の都合上、トップページを①〜⑦までに分割します。
JMAトップページ 2.png

赤字の見出しは、私が頻繁に活用しているものです(参考までに)。

①グローバルナビゲーション

他のページにいても「ホーム」「防災情報」「各種データ・資料」「知識・解説」「気象庁について」「案内・申請」にすぐ飛べるよう、常時表示されています。

私は「防災情報」を見にいくことが一番多いです。

②メインコンテンツ1

「アクセスの多いコンテンツ」と言う分類で、それぞれのページに直接リンクが貼られています。

特定のページしか見ない人を意識しているのかもしれませんが、そのような人はブラウザにブックマークすれば事足ります。

並びが直観的ではないので、私はまったく使っていません。

③メインコンテンツ2

ここは各情報ページへのリンク集となっています。
直接のリンクが貼られているのではなく、結構深い階層を降りていって希望のページにたどり着きます。

ここから辿るのだったら、グローバルナビゲーションから辿っても同じなように思います。

④メインコンテンツ3

「注目のトピック」と言う分類です。

気象庁のイチ押しコンテンツということなのでしょう。
コンテンツが随時見直しされるのかは、もう少し継続して追っかけて見ないと分かりません。

⑤新着情報

文字通り新しい情報へのリンクが掲載されます。

気象動向や気象庁の新しい取り組みがここで発表されるので、随時確認しておきたいです。

⑥サイドエリア1

「重要な情報」と言う分類で、最近の災害を中心にリンクが貼られています。

しかし内容には「?」の部分があります。

本稿作成時点(2017.9.14)で「平成29年7月九州北部豪雨の関連情報」「平成28年台風第10号等による大雨の関連情報」という項目があります。

その先にあるのは、次のようなリンク集です。

重要な情報.png

これをクリックすると、今日(9月14日)現在の情報に飛んでしまいます。
(高解像度ナウキャストの例)

高解像度ナウキャスト.png

あれれ?平成29年7月九州北部豪雨の情報がまとめてあると思ったのに・・・。

⑦サイドエリア2

気象庁に関する情報へのリンクです。

①のグローバルナビゲーションにある「気象庁について」と同じです。

それでは続けて、私がよく使っているページを見てみたいと思います。

(つづく)

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キーワード [知識]

実技の演習書をひも解くと、解説にこんなことが書いてあります。

「設問で問われていることをキーワードとして、正しい日本語で答えること」

「文章題が要求しているキーワードを特定する」
「問われていることに最も適していると思うキーワードを自分の知識の箱から引き出し、
 簡潔な文章でコンパクトに論じ立てていく」

しかし、そもそもどんな表現がキーワードなのでしょうか。
キーワードをコンパクトにまとめてくれた資料にお目にかかったことがありません。

ということで、キーワードをまとめてみることにしました。

(前提)
・過去問題などを解く過程で、自分がキーワードだと思ったものをまとめてあります。
・リストは発展途上であり、全てを網羅したものではありません。
 またグルーピングも自分独自のものです。
・設問に応じた固有のキーワードもあると思われますが、リストには掲載していません。
 例えば「西からの風が・・・」のようなものです。

では、いきます。

【波】
高波→波浪警報、波浪注意報(×高波警報、高波注意報)
離岸流、向岸流
しけ、大しけ、猛烈なしけ
波高→吹走距離、吹続時間、風速(2乗に比例)
風向、波向
高潮→吸い上げ効果、吹き寄せ効果
天文潮位(満潮・干潮)、潮位偏差、実測潮位

【冬の日本海】
気団変質
海岸線からの距離
帯状対流雲、筋状の雲、積雲

【台風】
乾燥した寒気の流入→温低化(温帯低気圧化)
水蒸気の凝結による潜熱、断熱昇温
前線に伴う降雨+台風本体の降雨→梅雨期に見られる
(明瞭な)台風の眼、対称性
転向、吹き返しの風
湧昇(下層の冷水が湧き上がる)

【渦度の場】
正・負の渦度域、正・負の渦度移流域、正・負の渦度極大域

【温帯低気圧 発達条件】
等温線の北への盛り上がり
気圧の谷が上方に向かって西に傾く
前面に暖気移流、後面に寒気移流
低気圧が正渦度移流域にある(上昇流が発生する)

【地上天気図】
気圧傾度力
気圧の尾根、気圧の谷
温度の尾根、温度の谷
総観規模

【風】
渦収束、収束、シアライン

【気象現象・災害】
解析雨量、降水短時間予報
土壌雨量指数(5kmメッシュ)、流域雨量指数
竜巻注意情報、竜巻発生確度ナウキャスト確度2
積乱雲→落雷、降雹、短時間強雨、突風(竜巻含む)

【霜・凍結・低温】
下層の強い寒気、晴天、風が弱い、放射冷却、地上気温が0℃前後に下がる

【積乱雲の発生】
条件付不安定、対流不安定層、地形性上昇、暖湿な空気が下層で収束

【降雨】
雲頂高度が低い雲で強い雨→地形性降水(風向を明示)

【梅雨前線】
水蒸気傾度、メソ低気圧(背が低く水平スケールが小さい)
線状降水帯、バックビルディング現象

【雪】
0℃層、0℃層より下層の湿度、着雪


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