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初冬の旭岳遭難を考える [箸休め]

事故の概要

2017年10月17日、北海道の大雪山系旭岳で登山中の男女4名が下山中に道に迷い、夜半になり携帯電話で警察に救助を要請しました。4名は高齢の夫婦と海外から訪れた男女2名で、登山中に知り合い一緒に行動していました。

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警察のヘリが救助に向かうも雲が多く難航し、初日の発見には至りませんでした。
夫婦は雨具は持っているが軽装とみられるとのことで、吹雪いている中で低体温症にならないか心配しました。

二日目の朝、朗報がもたらされました。警察の山岳救助隊8名が午前3時前から捜索を続けていたところ、午前7時40分頃、遭難者と電話がつながったのです。4名全員の無事が確認できたものの、1名は低体温症で動けない状態ということが判明しました。

現場周辺の天候が悪く捜索は難航し、機動隊が増員されたほか、東川町は自衛隊に救助を要請しました。

陸上自衛隊は50人態勢で午後4時過ぎから捜索に合流しました。

2報.png

二日目も時間切れになるかと思われた午後5時40分頃、捜索隊が4名を発見しました。

1名は身体が震えて低体温症とみられるほか、他の3名も体力の消耗が激しいためこの日は捜索隊とビバークし、三日目に救助ヘリで搬送されました。

3報alt.png

全員が無事救出されて本当に良かったです。捜索、救助にあたられた方々にも頭が下がります。

大雪山系

大雪山系は大雪山国立公園に属する山域で、北大雪、表大雪、東大雪、十勝連峰の4山域に分けられます。

旭岳.png

図に大雪山系の山を黄色でプロットしてあります。これを見て分かることは、日本海側から西よりの風が入ると湿った空気が山の斜面を上昇し、雲ができやすいということです。

同様に太平洋側から東よりの風が入っても風の影響を受けやすいことが分かります。これは大雪山系が南北に連なり、周囲に風を遮る山脈がないからです。

旭岳は表大雪を構成する代表的な山で、標高は2291メートルです。
ロープウェイの山頂駅(姿見駅)から旭岳までは標高差683メートル、無雪期のコースタイムは往復で3時間10分です。ハイキング気分で足を伸ばしたとしても不思議はありません。

気象条件を確認してみる

これから天気図を見ていきます。遭難当日の分を見る前に、旭岳で初冠雪を観測した9月30日の天気図を見てみます。

■9月30日(初冠雪日)

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北海道周辺では等圧線が立て込んでおり、アメダスによると地上では10〜15m/sのやや強い風が吹いたところもありました。

約1500メートルの上空を表す850hPaの高層天気図を見ると、西南西の風が吹いていたことが分かります。
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上空の気温は高めのため一時的な降雪だったのでしょう。


■10月17日(遭難発生日)

Oct17.png

遭難が発生した日は西高東低の冬型の気圧配置になっています。前日の16日には「雪に関する北海道地方気象情報」が発表されており、16日夜から18日にかけて地上でも日本海側を中心に雪が降ることが予報されていました。

850hPa気温・風の予想図を見てみましょう。17日の朝9時の予想です(16日の朝9時を初期時刻とした24時間予報)。
FXFE5782.png

850hPaの気温は0℃以下の予想となっています。姿見駅の標高は1608メートル、4名が道を見失った7合目は1930メートルですから、この地点で雪が降るのは確実です。

実は旭岳では初冠雪以降雪が降っていて、特にこの一週間ほどで積雪が増えたようです。
17日12時19分、姿見駅から旭岳方面を見た画像です。
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10名以上の人の姿が見えますが、この人たちはこの先にある展望台を巡る散策コース(一周1時間)を回るのだと思います。

15時19分には先が見えなくなっています。
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こうした悪天候下で、4名はロープウェイ姿見駅までの道を見失ったのでしょう。

最後に

今回は4名全員が無事帰還できて、山登りをする者の一人として本当にホッとしました。暖かい衣類や食料もなく、発見があと一日遅かったら悲劇に転じていた可能性があります。

十分な装備を持たないで入山した4名の遭難した日が、初雪と重なったのは偶然でしょうか。山の天気に詳しくなくても地上で雪が降る予報なら、山は降って当然だから冬山装備で出かけようという判断は難しくないはずです。

しかし、「せっかくここまで来たんだから、ちょっと先まで行ってみよう」という誘惑を振り切るのは難しいものです。

悪天候の翌日、山は綺麗な姿を取り戻して新たな観光客を手招きしています。
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(参考)報道記事の一部

北海道 旭岳で4人遭難 電話つながる 全員生存も1人“動けない“
ヘリ出動も難航 気温-7℃

10/18(水) 9:33配信 北海道ニュースUHB

 10月17日夜、北海道の大雪山系旭岳で登山中の男女4人から救助要請があり、警察の山岳救助隊が捜索を行っていましたが、18日朝、4人と電話がつながり、現在、警察のヘリが救助に向かっていますが、雲が多く難航しています。

 17日午後7時30分過ぎ、大雪山系旭岳で、登山で訪れていた70代の男性から「下山中にルートから外れた」と警察に救助要請がありました。

 警察によりますと、男性は携帯電話で60代の妻と、若い外国人の男女と一緒の計4人で、7合目付近の沢の近くにいるなどと話し、連絡がとれなくなっていました。

 警察の山岳救助隊8人が、18日午前2時50分ごろから旭岳に入り捜索を続けていたところ、午前7時40分ごろ、遭難者と電話がつながったということです。

 4人とも生存しているとのことですが、うち一人が低体温症で動けない状態だということです。

 警察のヘリが18日午前8時ごろ、札幌市の丘珠空港を離陸。情報をもとに、7~8合目付近を中心に救助に向かっていますが、雲が多く、難航しています。

 遭難した4人は、最初は1組ずつ別々に行動していましたが、途中に偶然出会い、一緒に行動しているということです。

 旭岳は雪が積もっていて、18日午前7時の気温が、姿見駅付近で、マイナス7℃と冷え込んでいます。


北海道 旭岳で遭難 観光客4人を救助
10月19日 7時02分 NHK

北海道の大雪山系旭岳で17日に雪の積もった山中で道に迷った観光客4人について、警察は19日朝、ヘリコプターで全員を救助しました。いずれも意識ははっきりしていますが、体力の消耗が激しいということで、病院で手当てを受けています。
北海道で最も高い標高2291メートルの大雪山系旭岳では、登山に訪れていた横浜市神奈川区の治療院経営、加藤昌彦さん(71)と妻の由美子さん(65)、それに登山中に知り合って一緒に行動していた20代の外国人の男女の合わせて4人が17日、道に迷って下山できなくなりました。

旭岳は先週から雪に覆われ、18日も時折、ふぶいていましたが、警察などが捜索した結果、4人はほぼ1日たった18日夕方、登山道から外れた沢の近くで見つかりました。

警察によりますと、4人は居場所を知らせるため、持っていたライトを空に向けて照らし続けていたということで、捜索中の警察官がその光に気付いて発見に結びつきました。

4人は救助隊が山中に張ったテントで一夜を明かしましたが、警察は19日朝、ヘリコプターで救助に向かい、午前7時前までに全員を引き上げました。

警察によりますと、外国人の2人はマレーシア人の27歳の男性とシンガポール人の28歳の女性と確認されたということです。4人はいずれも意識ははっきりしていますが、体力の消耗が激しいということで、旭川市内の病院で手当てを受けています。


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