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千島近海って? [知識]

実技試験では時折、地名や海域名を問われることがあります。気象庁のホームページに掲載されている地名と海域名は最低限、白地図で特定できるようにしておきたいものです。

全般気象情報などに用いるアジア・北西太平洋域の地名、海域名
全般気象情報などに用いる日本付近の地名、海域名

今回は、第48回試験(2019年度第1回)実技1で問われた「千島近海」を取り上げ、この海域名がどのような文脈で登場するのかを調べたいと思います。

千島近海を確認しよう

まず、千島近海の場所を確認しておきましょう。気象庁のホームページでは下図のように示されています。

千島近海.jpg

出典:気象庁(原本の破線表示を赤線で表示した)

気象庁「日本および日本の周辺を個別的に表す地名」には「北方四島は千島列島に含めない。」とあります。

しかし上図をみる限り、千島近海は北海道東部から北方四島も含めたカムチャッカ半島南端までの海域を指しているように見えます。

千島近海には、北太平洋やオホーツク海から千島列島に沿って南下し、日本の東まで達する寒流が流れています。これを一般的には「親潮」と言いますが、「千島海流」と呼ぶこともあります。親潮は魚類や海藻類を養う栄養分に富んでいます。

ちなみに、道東では夏の時期、太平洋高気圧からくる暖かく湿った空気が親潮に冷やされて、濃霧が発生します。このような霧を「移流霧」と言うのでしたね。

①台風の墓場として登場!

千島近海の海域名が登場する一つ目の事例は、「台風の墓場」です。台風の墓場とは私が勝手に名付けた名称ですが、台風が温帯低気圧に変わった後の向かう先の一つということです。

2016年の台風5号で見てみましょう。台風5号は8月4日に発生し、10日に温帯低気圧に変わりました。

台風5号の経路図を見ると、10日に千島近海を通過しているのが分かります。(経路の左に書いてある数字が通過日です。)

2016年台風5号.png
出典:気象庁

この台風について、次のように報道されています。

(2016年8月5日配信)
熱帯低気圧は小笠原の南海で台風5号に変わり、発達しながら北寄りに本州方向に接近している。気象庁は、来週以降、日本の東から千島近海に抜けるものとみて、今後の動向を注視している。(以下略)

(2016年8月10日配信)
台風5号は千島近海で温帯低気圧に変わりました。今日の日本付近は広い範囲で高気圧に覆われますが、湿った空気の影響を受ける所があるでしょう。(以下略)

台風は千島近海で温帯低気圧になったことが報じられています。温帯化時に984hPaだった低気圧は、その後988hpaに弱まった後、再度984hPaに発達しました。このように、台風は温帯低気圧に変わった後、発達することが多いので注意が必要です。

ではもう一つ、2017年の台風22号(10月)を見てみましょう。

(2017年10月30日配信)
台風22号は29日午前に九州・四国沖、午後から夜に東海・関東沖を東北東へ進み、30日午前0時に三陸沖で温帯低気圧に変わった。(中略)温帯低気圧は発達しながら北上し、30日朝に千島近海へ進む見込み。気象庁は引き続き暴風や高波、土砂災害に警戒するよう呼びかけた。(以下略)

これは10月29日22時32分発表の気象情報「平成29年 台風第22号に関する情報 第79号」に基づいた報道と思われます。

台風22号_79.png


9月、10月に発生する台風は太平洋高気圧の縁辺に沿って北東進するため、千島近海に至るものが多いのですね。

②冬の気圧配置にも登場!

二つ目の事例は、冬の気圧配置として有名な「西高東低型」の低気圧の居場所として登場してきます。

2016年3月1日の事例で見てみます。前日の午後から低気圧が急速に発達し、1日の北海道では暴風が吹き荒れ、最大瞬間風速は襟裳岬で41メートル、札幌は33.8メートルとなりました。

2016-03-01-1500.png

このように急速に発達する低気圧は、一般には爆弾低気圧と呼ばれます。これについて、1日の産経新聞は次のように伝えています。

発達した低気圧は1日午後、千島近海を東に進み、北海道付近は強い冬型の気圧配置が続いた。暴風雪の峠は越えたが、気象庁は引き続き2日昼前にかけて猛吹雪、吹きだまりや大雪による交通障害、高波、強風、雪崩に警戒を呼び掛けた。(以下略)

全国的にも北風が強く、北海道から本州の日本海側は所々で雪の降り方が強まり、青森県の酸ヶ湯では積雪が3メートルを超えました。

気象衛星画像を見ると、日本海側から太平洋にかけて筋状の雲が現れています。

衛星画像2016-03-301.png

大陸からの離岸距離はある程度空いているので、猛烈な冷え込みではなさそうです。

梅雨時期の西高東低型でも!?

季節はずれの西高東低型でも雪が降ることがあります。2016年6月2日の徳島新聞は次のように報じています。

(2016年6月2日配信)
低気圧が千島近海に停滞した影響で2日、北海道には北東から冷たい空気が流れ込み、山間部では6月にもかかわらず季節外れの雪が降った。
上川町の大雪山系黒岳(1984メートル)でロープウエーを運行する「りんゆう観光」によると、標高1300メートルの5合目では2日午前6時ごろ、約1センチの積雪が見られた。当時の気温は氷点下2度で、営業担当者は「ゴールデンウイーク以降に雪が降るのは珍しい」と驚いた様子だった。(以下略、一部修正)

気圧配置を見ると、北海道周辺では確かに季節外れの強い西高東低型になっています。

2016-06-02-0900.png

この低気圧は寒冷低気圧で、500hPa面で厳しい寒気が入っていました。

第48回試験の出題

最後に、過去の出題事例で「千島近海」をモノにしておきましょう。

前問で答えた⼆つの低気圧の動きと盛衰について述べた次の⽂章の空欄( ① )〜( ⑤ )に⼊る適切な語句を答えよ。なお,③は16 ⽅位,④は海域名で答えよ。

九州の南岸の低気圧および⽇本海の低気圧は,いずれも12 時間後から24 時間後にかけて中⼼の気圧が( ① )に( ② )する。九州の南岸にあった低気圧は24 時間後から36 時間後にかけて( ③ )に進み,( ④ )に達する。その移動の速さは24 時間後までと⽐較して( ⑤ )なっている。

地上気圧・降⽔量・⾵36 時間予想図を見ると、④の答えは「千島近海」となります。

図4.png


ちなみに、本番試験でビール隊長は「北海道の東海」と回答し、不正解でした。最初は「千島列島」と回答したのですが、見直しをしている時に「④は海域名で答えよ」に気づきました。海域名をたくさん覚えたつもりだったのですが、千島近海は知りませんでした。(^^;


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